3章ー11 「英雄の真偽」
「あ、ちなみに〜 七十年前、戦争を終わらせたのは、オヤジだよ〜☆」
「…………、ふえ?!」
衝撃の事実に、思わずとんでもない声を漏らしてしまう。慌てて口を閉ざす。
まず前提として、この国のターニングポイントであろう、七十年前の『本土決戦』。それを終戦へと導いたのが一人の『英雄』である。
だが、その『英雄』が何者で、どのようにして終戦させたのか、詳しくは、公にされていなかった。世間に知らされたのは、「『大和』という名を持つ者が敵軍と話し合い、調停を行った」ということのみ。
普通、ただの話し合いだけで戦争が終結するはずないのに、そのあまりに断片的な情報と、現実によって、世間は、大和家を奇跡だの神の使いだのと、崇拝すると同時に、恐れた。そうしていつしか『天空の要塞』などと呼ばれるようになった。
とにかく、その『英雄』が目の前にいるのだ。驚かないものはいないだろう。
(……いや待て、おかしい。)
衝撃で表情を崩していた葉牡丹が、正気に戻り、不可解な点に気付く。
(もしこの男の話が事実なら、この老人は一体いくつなんだ?)
もし七十年前のこの老人が『英雄』で、外国人と交渉が出来たというのなら、相当知力が高く外国語も話せたに違いない。だがこの時代でそんな日本人は、外交官か、軍の語学専門家か、名門大学の卒業生くらいしかいなかっただろう。
よって当時、最低でも二十は過ぎていたことから、単純計算で求めると、目の前にいるこの老人は、九十歳以上は確実にあるということになる。
しかし、とてもそこまで年老いているようには見えない。白髪混じりの赤髪は禿げていないし、杖はついているものの自立も歩行もできている。病気を患っておらず、健康そうだ。
見たところ、最大でも、六十歳ほどのはずだ。
よって━━
「━━さっきの話、嘘だな。」
「……へえ〜、どうしてそう思うの?☆」
葉牡丹が探るような口調で問うと、男がさらに疑問で返した。
「ただの勘だ。」
あながち嘘ではない。あれだけ思考していても、結局は推察でしかないのだから。
「そっか〜、勘か〜!、葉牡丹チャンはホント頭イイね〜☆」
片栗は笑顔を崩さない。そのため、なにを考えているのか微塵も分からない。
(この男、本当に掴みどころがない。……厄介だ。)
心の中で舌打ちをする。
「……でも、残念でした〜☆オヤジが、いわゆる『英雄』なのはホント!」
「……は?」
意味が分からないとでも言いたげな顔する。自分の推察は間違っていたのだろうか。
「オヤジ、マジで頭イイんだよ〜☆ 独学で外国語習得しちゃったし、終戦会議だってね〜、……」
片栗が、まるで自分がしたことかのように誇らしげに語り出す。だがそこで言葉が途切れる。
「黙れ、片栗!……喋りすぎだ。」
「お〜っと、スイヤセン。黙ります☆」
秋桜の怒号に、片栗が降参のポーズをとる。嘘くさい反省の言葉を吐きながら。
「……話が脱線して、すまなかったな。本題に戻るが、貴様らは何をしにこんな場所に来た?」
秋桜は誠意のこもった謝罪をする。この老人は、かなり話が通じて、常識がある。余計なことを聞いたり、嘘をついたり、『下手なこと』をしなければ、攻撃してくることはなさそうだ。
(……こいつが本当に『英雄』なのか、気になるところだが、今、それを追求するのは得策じゃなさそうだ。)
そう、『下手なこと』をしなければ、無事でいられるだろう。だがもし『下手なこと』をしてしまったら、何をされるか分からない。
「……僕達は、この国から子供達を助けるためにここに来た。━━」
正直に、しかし相手を刺激しないよう、慎重に語り出す。
[ あとがき ]
しばらく休載します。




