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ふたりで紡ぐ物語  作者: にしのかなで
第三章
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ただいま。

即位の儀も無事に終わり、研究室に籠りっきりの日々から解消されているふたりは一日も早くオルボアに帰りたかった。しかし帰ってもルディの忙しさは当面変わらない、ならば早くお手伝いさんを見つけなければいけないがそれを探す暇もない。ということで結局ふたりはフェンリルを頼ろうと使い魔を送った、その間に離れの荷物を片付け世話になったエリンに礼を言い王宮へと向かうが即位したての新国王夫妻は想像通り忙しく代理としてオブリーに離れとエリンの世話になった礼を言伝する。


「今日帰るんですか?」


「はい、とりあえずカリンを一旦家に帰さないと。やはり自宅が一番落ち着くと思いますから。」


「手伝いは誰か見つかりましたか?」


「いえ、悩んだんですがこれもとりあえずフェンリルさんに頼もうと思っています。ダメならダメで誰か探しますよ。」


「そうですか、では気をつけてお帰りください。ああ、アナスタシアが邪魔をするかもしれません。昨日聞いた吉報を喜んでいましたから。」


「ありがとうございます。」


それからその足で魔法省に向かう。


「何か用事?仕事のこと?」


帰る間際に魔法省に寄ると言うので不思議に思いカリンが尋ねる。


「いや、君へのプレゼントがあってね。」


受付で何か書き込んだ後、くるりと振り返ったルディが「気に入るといいけど」と、言いながらカリンの手を取り外に出る。そこには今まで使っていたものよりも遥かに立派な二頭立ての馬車があった。


「御者までは流石に雇えないんだけどね、どう?気に入ったかな。」


「こ、これウチの馬車になるの⁉︎」


「うん、君が帰るのに魔法は身体に障るといけないから使えないだろう?いつもの馬車に魔法を使っても良かったんだけど子どもが生まれてからもやっぱり安定感のある馬車がいいだろうと思ってさ。」


「すごい・・・嬉しいけど、高かったんでしょう?大丈夫なのこんな、高価そうな馬車なんか買って。」


「あのね、僕わりとお給料もいいし休みと同じ位消化できなくて貯まっているの君も知ってるよね。ほら、乗って乗って。」


ルディの支えで馬車に乗り込みながら「それはそうだけど、値段を知るのが怖いわ。」と、呟いた。馬車の中は先日借りた魔法省の貸出用馬車と遜色なく、ゆったりした空間に安定感のある座席だった。今日も御者台には誰もいなかったが馬車はゆるゆると走り始め、安定したスピードで走り続ける。車窓からの眺めを楽しみながら


「すごい!こんな馬車を持てるなんて、安定感があるからお腹にも優しいし、最高!ありがとう、私とても幸せ者よ。」


と、微笑むカリンが眩しくてルディは目を細めた。日に日に少しずつ膨らんでいくお腹に愛おしそうに触れながら子守歌を口遊むカリンを見て、何が何でもこの愛おしい妻と小さくて大切な命を守らなければと新たに胸にそっと誓った。


「あ!オルボアの町が見えてきたわ。」


窓の外に懐かしい風景を見つけカリンが歓声を上げる、出かけた時は夏の終わりだったが今では景色もすっかり冬へ向けて様変わりしはじめていた。


馬車は門を潜り抜け玄関前に着いた。カリンを降ろすと魔法で小さくした荷物を取り出してから、馬車を裏口へと回す。


鍵を開けて中に入る、休みの間と同じくフェンリルが手を入れてくれていたので綺麗に掃除されていた。


「疲れただろう?僕は馬の世話をしてくるから、君は一足先に寛いでいて。」


ありがとうと言い、居間の窓を開ける。少し冷えた空気が入り込んできた。そこへ、フェンリル親子がやって来るのが見えて手を振り挨拶をすると小さな姉妹が手を振り駆けて来るので親子を玄関で迎える。


「ただいま!」


「お帰りなさいカリン。話は使い魔の手紙で読んだわ、おめでとう。」


「ありがとうございます、留守中もお世話になりました。」


「いいのよ、それよりほらあなたは座って。台所借りるけどいいかしら?お茶でも飲んで話しましょう。」


小さな姉妹に手を引かれ居間に連れて行かれる。


「はい、クッション。」


「はい、ひざ掛け。」


ひょいひょいと姉妹が手順よくカリンが寛げる様準備する。


「え、あ、ありがとう。」


「あのね、お母さんがカリンちゃんを春まで大事に扱わなきゃいけないって言ってたの。」


「だから、お母さんが用事している時はあたし達がお世話をするからね。」


にっこりと笑うセシリアとミレーヌの姉妹にカリンは深々とお辞儀をして見せた。そこへ馬車の世話が終わったルディが入ってくる。


「お帰りなさい、ルディ様。今、お茶を入れますね。」


「ただいま戻りましたフェンリルさん、留守中ありがとうございました。手紙は届きましたか?」


「ええ、私なら一も二もなく赤ちゃんが産まれるまでの間こちらでお世話しますよ。」


「すみません、助かります。なにせ、うちの養母は家事が苦手だし新しい人を雇うにも人選が難しいし、やっぱり知っている人が一番かなって。」


「そうですねぇ、今から新しく雇ったら一から教えなきゃいけないしそれだとカリンも落ち着かないし、やっぱり私が適任でしょう。あ、お湯が湧いたわルディ様も居間で休んでて下さいな。」


少しして居間は甘い香りに包まれた。


「あのねっ、お母さんがカリンちゃん達疲れているだろうからってクッキー焼いてきたの。私とミレーヌも手伝ったんだよ、フェルナンは味見だけどね。」


「はいはい、静かにしてちょうだい。あんまりうるさいとお腹の赤ちゃんがびっくりしちゃうわ。で、ルディ様のお仕事は明日から?」


「はい、急ですけど頼めますか?」


「ええ、それは大丈夫なんですけど・・・しばらくはこのおチビちゃんたちがついて来るかも。あの、ヨハンナ・ベル先生になにかありました?昨日急にご実家の馬車が迎えに来られたそうで、学校の方もしばらく休みになると聞いてるんですが。」


ルディとカリンは顔を見合わせた。そうだ、彼女はこの町で重要な役目をしていた果たして学校と施設はどうなるのだろう。


「あの、ヨハンナ様は昨日ハーヴェイ様からお許しを頂きオーランド殿下の婚約者になられました。」


「「「えええぇっっっ⁈」」」


母娘が驚きの声を上げる。昨日はイェンナとルリ、そしてフェンリルの三人で施設の子ども達の面倒を見ていたらしい。食事は賄い婦を雇っているので当分食料のある間は問題ないらしいが・・・。


「本当なら今日もそちらに行くはずだったのですが、今朝手紙を頂いたのでお断りしたんです。まぁ、あの方がそんな事になっているなんて。」


「あとの二人もそれぞれのご主人から話を聞いていると思いますよ。それにしても、確かに学校と施設の件は早急になんとかしないといけませんね。僕、明日一番に聞いてみます。」


「お願いしますね。あらカリン、あなた具合悪いんじゃない?顔色が悪いわ、ちょっと見せてね。」


そう言うとフェンリルはカリンの下瞼を覗いた。


「やっぱりあなた貧血だわこれは、ちょっと横になりましょうか。ん〜、でも寝室は二階なのよね。これからお腹が大きくなると階段の昇り降りが辛いわねぇ・・・」


「貧血って、どうなるんですか?」


ルディの問いかけに答える。


「目が回ったり、酷いと起き上がれない位だるくなったりとか?妊娠中はどうしてもお腹の赤ちゃんに栄養がいってしまってなりやすいんですって、私も妊娠中なったんですけどウチは平屋だから階段の心配がいらなくて良かったんですけど。」


それを聞いてルディがガタンと立ち上がった。


「ちょっと待ってくださいね、使ってない部屋が一階にありますからすぐ使えるよう準備します!」


そう言って彼は居間の隣をガタガタとしばらく音を立てながら愛妻のために新しい寝室を準備した。

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