君がそばにある様に 2
静まり返ったオーランドの執務室に、彼の魂の叫び声とも言える告白がヨハンナ・ベルの心に響いた。次から次へと溢れてくる涙をハンカチで拭いオーランドを見つめると彼の瞳も涙で潤んでいた、ヨハンナはハンカチをテーブルに置き膝の上の彼の手を両手で握り返す。
「私は罪人の娘です、それに変わりはありません。それでも・・・それでも神が私を許し、殿下が私を想って下さるのならば、私は・・・私は殿下のお気持ちを有難くお受けし、今後身に降りかかるであろうことの恐怖にも耐えられます。勇気を持って言います・・・私も初めてお会いしたあの日から、殿下のことをお慕い申しておりました。こんな私でよろしければ、どうか人生のお供をさせてくださいませ。」
ヨハンナの告白を信じられない表情で聞いていたオーランドは、やはり両手でか細い彼女の手を握り返し問うた。
「本当に?本当だな、ヨハンナ・ベル!ああ、信じられない望んでいたことが現実になったというのに嘘みたいだ!ヨハンナ、ありがとう幸せになろう。」
新しく出来たカップルは互いに涙を零しながらそのまましばらく抱き合った。時計はバルコニーでの挨拶を終える時間を告げていた・・・。そのすぐ後、アルベリヒはオブリーを従えオーランドの執務室に急いでいた。
「彼奴はなんだかんだで甘ったれの次男坊だからな、しっかりヨハンナを繋ぎとめられたか一刻も早く確認せねば。」
「恐れながら陛下、オーランド殿下も立派な一人前の男性ですよ。あまりですぎた真似は・・・」
「なんかその呼び方しっくりこないな、なぁ本当に俺が国王で良かったのか⁉︎オーランドの方がこう、絵になると思わんか?」
「いや、主神に認められてますから。これからは自由気ままにいきませんよ、それが嫌なんじゃないですか?」
「な、何を言うお前!今日でなかったら不敬罪にするところだぞ。お、ベイカー!ご苦労だったな。」
オーランドの執務室扉の前で待っていたベイカー魔法師にアルベリヒが、労いの声をかける。
「お疲れ様です、陛下。ウェスティン侯爵令嬢は先程オーランド殿下にお届け致しました、現在はお二人とも落ち着かれて侍女も中に入っております。オルボアから王宮に辿り着くまでの間、最初の刺客の他にも賊に襲われまして結界に集中していたため連絡が出来ていません。オブリー伯もいらしたことですし、魔法省の方へ向かっても宜しいでしょうか?交代の魔法師はすぐに寄越します。」
「そんなに賊がいたのか・・・一人で行かせて悪かったな。あとは魔法省の方で報告を頼む、ご苦労だった・・・あ〜・・・で、ついでに中の様子はわかるか?」
「馬車で危険を共にしたから欲目かもしれませんし、私の様な者から言うのは憚れますが・・・王弟殿下は非常に良い伴侶を得られたと、私は思います。では、失礼致します。」
ニコリと人の良さそうな微笑みを残し風使いの魔法師ジャン・クロード・ベイカーは颯爽と去って行った。
「はぁぁ、良かった。俺はヨハンナがベイカーに転んだらどうしようかと人選を誤ったかどうか、そればかり考えていた。そうか、想いは実ったか・・・。」
「ベイカーは妻子持ちですよ陛下、さぁ王弟殿下の元に参りましょう。」
オブリーに促され執務室に入るとヨハンナ・ベルがアルベリヒに対し最高礼を取り、オーランドも国王への礼を取る。昨日までほぼ対等な関係だったのに一夜明けただけでこんなにも弟を遠くに感じる様になった事をアルベリヒは暫し感慨深く感じ入ってしまった。
「二人とも顔をあげて楽にせよ、この場は非公式だ座って寛いでくれ。」
「ありがとうございます、ではお言葉に甘えまして・・・」
二人が下座のソファに座った、オブリーは扉の内側入ってすぐの所に控えアルベリヒは上座に座る。
「で、話はついたか?」
「はい、陛下。この度主神ハーヴェイ様のお許しをいただき、ウェスティン侯爵令嬢ヨハンナ・ベルに求婚し彼女からそれを受け入れる返事を頂きました。」
固かったアルベリヒの表情が柔らかくなる。
「そうかぁ〜、了解を貰えたんだな。良かったなぁオーランド、俺はこの事だけは何もしてやれんからずっと気にしていたんだ。ありがとうヨハンナ嬢、弟をよろしく頼むな。」
「私には勿体無いお言葉でございます。この度はハーヴェイ様の采配により、このように身に余る光栄なお話を頂き王家の皆様に受け入れられたこと有難く感謝しております。これからは王弟殿下のお導きの元、ハヴェルン王家と国民のために尽くしてまいりたいと思います。」
「うむ、良い心がけだ。主神はそなたの日頃の所業を見てオーランドの相手に選ばれた、そのお心に反することなくこれからも信仰と民を思う行動を期待する。オーランド、次の挨拶にはお前も顔を出さねばならんヨハンナ嬢の身の安否が気になるだろうが正式な発表も急がせるし魔法省から腕利きを揃え婚礼の儀まで万全を尽くそう。だから、今日はすまんが俺の式典に付き合ってくれ。」
「勿論です。魔法省の腕利きならば任せておいて安心でしょう、ご配慮ありがとうございます。」
「よし、では俺は先に行く後で会おう。」




