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ふたりで紡ぐ物語  作者: にしのかなで
第三章
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君が側にある様に

新しい歴史が始まった。新国王が神に認められ無事に戴冠式も終え、現在は特別に国民に解放された敷地に向けたバルコニーから即位の挨拶をし家族揃って歓声に応え手を振る。一見和やかに見えるその様子だが、笑顔を浮かべたアルベリヒは後ろに控えるオブリーに現在のウェスティン侯爵令嬢の安否を尋ねている。


「それで、その賊を雇ったのはどこの家かわかったのか?」


「いえ、まだです。なかなか口を割らない様で多分魔法で喋らない様にされているのでしょう、憲兵が無理に割らせようとすれば自害もありえますので捕らえて魔法省にて尋問にかけます。」


「それではいかん、時間がかかるではないか。なんとかならんのか?」


「申し訳ございません。お言葉ながら今回の雇い主を割り出した所で次の刺客にも備えねばなりません。要注意人物はガウス魔法師が目星をつけてはいますが、このまま侯爵令嬢が王室に入られるとしてそれまでの間、イタチごっこが続くばかりです。私どもも最善を尽くしますがその間どうなさいますか、侯爵令嬢のお立場を。」


「どうもこうもオーランドが話をつけて相手の了承を得られれば即、王弟婚約者という重要な立場を与えよう。彼奴が失敗すればヨハンナ・ベル嬢は今後も王弟妃の座を狙う輩から危険分子としてしばらく付け狙われるだろう。それよりも、二人とも素直になってさっさと纏まってくれればいいが。で、オーランドはどうしている?」


「殿下の執務室にて侯爵令嬢をお待ちになられています。」


「そうか、後に覗きに行く。それまで二人ともそこを出ぬ様言い付けてくれ。」


今頃イライラしながら待っているんだろうなと、兄アルベリヒは思った。

その頃、やっとウェスティン侯爵家の馬車が王宮の裏門を潜り抜けていた。目立たぬ様、城の裏口からベイカーが先導して中に入る。そこには侍女が二人待機しておりヨハンナ・ベルの後ろを固める。彼女は王宮近くになってもまだ狙われていた。馬車に結界を施したため害はなかったが、命を狙われるという事態にかなり混乱をしている。何度も涙ぐむのをベイカー魔法師に激励されながらここまで来たのだ、その事を事前に考慮しベイカーは戦闘能力のある侍女を二人待機してもらっていた。若い女性が警護に加われば少しは気持ち的に落ち着くのではないかという彼なりの配慮だった。流石に慶事の中、王宮内で手を出すのは得策でないと考えたのか不審な気配はまだ無いが念の為、彼等は要注意人物を避けるためルディの用意した地図を使い難なくオーランドの執務室に辿り着いた。


「お待たせいたしました王弟殿下、ヨハンナ・ベル・フォン・ウェスティン侯爵令嬢をオルボアよりお連れいたしました。」


「ご苦労だった、ベイカー。疲れているだろう別室を用意してある少し休んでくれ。あとはしばらく、二人きりにさせてもらえないか。」


「かしこまりました。侍女と共に別室に控えております、近衛兵が扉の前にいますが何かありましたらお呼びください。失礼いたします。」


そこでヨハンナがオーランドに礼を取り声を上げた。


「失礼ながら王弟殿下にお願いがあります。ベイカー魔法師にお礼を言わせてくださいませんか。」


「わかった、どうぞ。」


「ベイカー魔法師殿、今日は危ないところを何度も助けていただきありがとうございました。くじけそうになりながらも勇気を持ってこの部屋に入ることが出来ました、身を呈して守っていただき本当に感謝しています。」


「いえ、突然の話で戸惑われたでしょうが侯爵令嬢が気丈に耐えて下さったのでこうして無事に辿り着けたのです。お疲れになったでしょう、しばらくはこちらのお部屋で王弟殿下とごゆっくりお過ごしください。」


共に来た侍女が二人分のお茶を用意し、三人は外に出る。パタン、と扉が閉じて部屋の中にはオーランドとヨハンナが二人きりになった。


「疲れたでしょう、どうぞ掛けて下さい。お茶を飲んで一息つきましょう。」


「はい、ありがとうございます。」


「「・・・・・」」


気まずい沈黙が流れる。オーランドは事の仔細を話しヨハンナに求婚をしなければいけない。まさか神からの許しがもらえるとは思ってもみなかった、初めて出会ったヨハンナの誕生祝いの宴で彼女と踊り話したあの日からずっと密かに想っていた。ヨハンナは母親の罪を背負い侯爵家を出てオルボアの教会で孤児の世話の傍ら教師として充実した日々を送っているのも知っていた、それでも会えなくても認められない想いでも少しでも彼女を援助したいという思いから彼女の教会にも匿名で資金援助もしてきた。ヨハンナも自分の想いには気づいているはずだ、一生陰ながらの支えで終わると思っていた彼女を手に入れられるかもしれない・・・しかし、なまじ間に「神」が入ってしまったことにより自分の求婚を「神」の言葉だからと気持ちが入っていないと思われたらどうしよう、それよりも彼女が信仰心のあまり「神」のお言葉ならとそういう風に受け入れられたらそれも困る。オーランドは悩んでいた、彼は彼自身が望むからこそ自分の妻になって欲しいのだ。


「「あの!」」


同時に出た声に顔を見合わせ思わず二人とも笑う。ああ、あの時の笑顔だとオーランドの肩の力が抜けた。あんなに会いたく、愛しく想い続けたヨハンナがいま目の前にいる。


「どうぞ、貴女から話して下さい。」


まずは彼女の話を聞こう、詳細はベイカーが話してあるはずだ。


「では、質問をさせてくださいませ。馬車の道中、ベイカー魔法師から説明は受けました。ハーヴェイ様が私を名指しで王弟殿下の妃にとお話があったとか、それは本当ですか?」


「本当だ。」


「・・・ですが、私は侯爵家を出て市井に身を置き子ども達の世話をするただの女でございます。折角ハーヴェイ様の許しを得たとはいえ、殿下にはやはり他にもっと相応しい方がいらっしゃるのではないでしょうか?」


「ご存知だろうが、今日国王になった私の兄には現時点で三人の子どもがいてうち二人は王子だ。それをいいことに私は自分は無理に子を成す必要がないと思ってきた、それと同時に妻にするなら兄や父同様に本当に愛する人を娶りたいと願ってきた。しかし、私の願いは数年前に潰えたきりだ。貴女は母親の罪を自分も背負い、侯爵家を出て町の教師になった。私も貴女の母親の罪があり表立って想いを告げることができなかった、しかし今日でそれもお終いだ。主神自らが貴女の行いを認めてくださり私に貴女への思いを告げる機会を下さった。ウェスティン侯爵令嬢、」


「だめ、言わないで・・・」


「だめだ、ヨハンナ・ベル。勇気を出して私の話を聞いて欲しい。」


俯き涙を落とすヨハンナに近付き彼女の肩に手を置き片手で膝の上の手を握る。


「ヨハンナ、君がどうしても僕を受け入れられないのなら諦めて僕も一生独りで通す。だけどこれだけは聞いて、初めて会ったあの日から君を想わない日はないんだ。毎日毎日、君を想っている。僕には君が必要なんだ、神が君を指名したからじゃない、神は僕らの気持ちを知っていて今日僕らに許しをくれたんだよ。お願いだ、愛している、王弟の座など捨ててもいい君と生きて行きたいんだ。」

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