神の審判 2
やがて、主要人物がそれぞれの席に着き神官と巫女の祈りが捧げられる中カリンが巫女の先導により天窓から光が降り注がれる中央席の側に立つ。静かな声で祈りが捧げられる中、カリンはふと宙を見上げると胸の前で手を組みルディが今まで聴いた中で一番厳かで綺麗な声でハヴェルンの言葉ではない言葉で歌を紡ぎ始めた。
”偉大なる 万物の長 その姿を 私は見たい あなたの 微笑みで 私たちは 癒される
今日の この良き日に あなたに 祝福を願う 我らの この国に 新しい王が 降り立つ
どうか 彼を祝福し 真の王にと 認めたまえ
あなたの 祝福を 国中が待っている
どうぞ この地上に舞い降りて 彼に祝福を
皆があなたを待っている
皆があなたを待っている
私たちはあなたのために 祈りを捧げよう”
歌い終わるとカリンは静かに頭を垂れた。
神殿の祭事の間に集まった者たちも、息をするのも忘れたかの様に静まり返っている。
「なかなかに良い歌声であった。久しいなアレクシア・カーテローゼ。」
会場の全員が片時も目を離さずカリンを見つめていた、にも関わらず主神ハーヴェイは神官の予想通り少年の姿で、まるで最初からそこにいたかの様に現れた。
カリンが頭を上げて微笑む。
「お久しぶりでございます、ハーヴェイ様。アルベリヒ王太子殿下、またハヴェルン王国の為に本日はお越しいただきありがとうございます。」
「うむ、少し見ない間に人間とはこうも成長するのかと改めて思わされる。腹の子に障ってはいかん、お前は椅子に座っていろ。後は神官どもが儀式を執り行う。さて、では始めようか。」
カリンの妊娠に関しての発言の際、場内がざわめいたがすぐに静かになり更に儀式の執り行いを命ぜられた神官たちが慌てて前に出る。
「ふーん、アルベリヒも三人の子の父親か。あの時の娘のお陰だな、今日もいるのだろう?」
ファンテーヌが立ち上がり礼をする。
「お久しぶりでございます、ハーヴェイ様。その節は祝福下さりありがとうございました、お陰様でアルベリヒ殿下の妻となり三人の子どもにも恵まれ幸せに暮らしております。」
紺碧の瞳がファンテーヌに向けられると、その傍らにいた小さな王子アレクサンデルが妹王女シャーロットの手を引き覚束ない足取りでハーヴェイの元へと近づいて来てハーヴェイを見上げる。
「お兄ちゃま、かみさまなの?」
舌っ足らずな口調でシャーロットが無邪気に問う。ハーヴェイは、その質問に自ら屈み目線を二人に合わせて答える。
「ああ、私は神と呼ばれる者だ。名は何と言う?」
「アレクサンデル・フィリックスです、ハーヴェイ様。」
アレクサンデルはやや緊張して答えたが妹は無邪気に、
「シャーロット!」
と、名乗った。
「そうか、良い名だな。あと一人は?男か女どちらだ?」
「男の子です、名前はカール・ヨハン。まだ赤ちゃんです。」
「そうか、まだ歩けんのだな。さあおいで、よく顔を見せてご覧?二人とも両親の良いところをそれぞれ受け継いでいるな。うん、これなら未来の国王に相応しいだろう。神官長、アレクサンデルを王太子に認めるぞ。さて、次はお前達の父君の判断だ。どうだ?アレクサンデル、お前の父は立派か?」
「はい!いつも国民のためを第一に考えろと言われてます、お父様は・・・僕は、お父様は次の王様になれると思います!」
「ははっ、そうか。シャーロット、お前はどうだ?父が好きか?」
「ん〜///あのね?大好き、いつも遊んでくれたりご本を読んでくれるの。お父ちゃま王様になれる?」
「さあて、どうかな?お前達が生まれる前には散々私の大事なカーテローゼに迷惑をかけたからなぁ。」
「「カリンにっっ⁉︎」」
「そっかー、だからお父様はハヴェルンで一番怖いのはカリンだって言うのか。」
「カリンちゃん、お父ちゃま許してあげて?」
シャーロットがカリンの膝に手を伸ばし懇願する。小さいとはいえ王族に対し座ったままでは失礼だろうと立ち上がりかけるとハーヴェイがそれを制す。
「座ったままでいいカリン。率直に聞こう、お前から見てアルベリヒはどうだ?」
「え、ええぇ⁉︎私の意見ですか!え、えーとですね。確かにご婚礼前には色々とありましたが、段々と王太子としてのお立場をわきまえた行動をなさってましたが何よりこの方は国民を大切に思っておられますし、民からも敬愛されています。それからご家族をとても愛していらっしゃいます、殿下の為人はハーヴェイ様もご存知かと思います。そうでなければ祝福の花嫁を授けなかったことでしょう。」
「ふっ、はは!相変わらずサッパリと言うな。そうだ、この男が次期王に相応しくなければファンテーヌはくれてやらなかった。お前の言う通りだ、さあ神官達これで次期国王も決まったぞ。後は任せた、私はもう少しこの場で見学していこう。さ、おいで二人とも。」
そう言ってハーヴェイは二人の子どもを呼び寄せると両手で二人をそれぞれ抱え上げた。
「カリン、お前も来い。仕事は終わりだろう?ルディの魔法とやらの見物をしよう。」
ふわりと大地と草原の薫りのする主神は楽しげに控えの椅子に向かい歩いて行く、カリンは慌ててその後を追いかけた。




