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ふたりで紡ぐ物語  作者: にしのかなで
第二章
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新体制

アルベリヒ即位後の新体制が決まった。国の主だった首脳陣に変わりはないが、アルベリヒ付き魔法魔術師がこれまでルディとオブリーだけという手薄から複数名の補充があった。更に、その家族にも専属魔法魔術師がそれぞれ定められ中でも一番の出世と言われたのは魔法省事務局勤務であったアニエス・クラーク、彼は次期王太子アレクサンデルの主官魔法魔術師を務める。一介の地味な事務職からの異例の出世に水面下では驚きや妬みの声があったが、エリカ・ペイン事件を知る者は納得していた。アルベリヒ率いる「鴉」の一人である彼の採用は当然なのだがそれはごく一部の者しか知らない。


一介の事務職員からの大出世といえば、世間が囁くのはアルベリヒ付き秘書官ハースである。彼の実家は農家、それも大地主などではなく細々と父亡き後母が一人で二人の子どもを育て上げ妹は先に嫁いでいるがその嫁ぎ先もなんら宮勤めには関係がない。全く伝もコネもない中、ただ実直に仕事をこなすその働きぶりが認められ、アルベリヒの元秘書官であり現王太子妃ファンテーヌが彼を後任の秘書官にと推薦した。真面目を絵に描いたような男であるが、家族思いで人当たりもよく休日には街の市場に母を手伝い店番をしたりしているため庶民からの人気もある彼には急に縁談が増えたらしい。そして縁談といえばアルベリヒの末の双子の妹姫ヒルデガルドとヘルツィーナも年頃になりあちらこちらから縁談の話が舞い込んで来ていてハヴェルンはまさに慶事が続きそうな勢いであり、国中がお祝いムードに溢れていた。


「う・・・お腹すいた。」


慶事といえばカリンの懐妊だが落ち着く迄そっとしておいて欲しいといった夫妻の要望で、王家と神官部そして二人がありがたく申し出を受け滞在している離れの使用人しかまだ知らされていなかった。


「えっ‼︎また⁉︎」


「また、です。エリンさーん、お腹空きました〜。」


パタパタと食堂に向かい歩いていく妻を半ば呆れて見送った。カリンは悪阻が酷かった割に短い期間で済み心底よかったと、ルディが胸を撫で下ろしていたがすぐに食べ悪阻が襲いかかってきた。一日三食きっちり食べてその合間にちびちびとお腹を空かせては使用人のエリンの所に足を運ぶ。三人の子どもを育て上げたエリン曰く「まぁ、人それぞれですからね。こういう事もありますよ。」だそうだが、今迄は食べてもその分動いていたカリンなのでつい心配してしまう。しかし食べ悪阻になってからは体調が良いらしく無理のない範囲で散歩をしたりと身体は動かしているらしい。食堂でエリンの作った野菜のクッキーを食べてきたと言って、カリンが満面の笑みで帰ってくる。


「えっとね、何か一つのものだけに拘る人もいるみたいだけれど私はなんでも食べるからなんだか気が楽だってエリンさんが言ってたよ。」


「あ、そ、そう・・・で、身体の方はどうなの?」


「うん、吐いてた時より気分いいし動いても大丈夫みたい。あ、でも無理はしないから。大切な儀式が近いのに出れなくなったら大変だもの。あと、お医者さんもね順調だって。」


「ふー、君見てるとハラハラさせられるよ。」


「ごめんなさい。」


しおらしく謝ってきたカリンの側に座り直し、少し膨らみ始めたお腹に触れる。


「お腹の中には外の世界の声が聞こえているらしいよ。」


「ほんと?やだなぁ、毎日お腹すいたばっかり言ってるのを聞かれてるの?」


くすくすとルディが笑う。食いしんぼうが出てくるかもね、と。それに対しむくれるカリンはお腹に向かい「意地悪なお父さんですね〜」と、話しかける。そこへエリンがやって来た。


「そろそろお式の衣装を仮縫いしませんとね。」


殿下が付けてくれたこの有能な使用人は裁縫までこなすらしい。カリンのサイズを測り、少しゆったり目にお腹が目立たないようドレープをたっぷり取った真っ白の上質な生地で作られた祭事用の衣装は一週間以内に出来上がった。


「できるのかなぁ、私。今までハーヴェイ様との接触は全部あちらの方からいらしてたもの。私の呼びかけで答えて頂けるのか心配だわ。」


「えらく弱気だね?」


「だって!大事なお式に水を差したりするような事にならないか心配にならない?」


「大丈夫だよ、君が指名されてあちらの神殿から了承も得ている。心配せずにいつも通り自然体でいるのがいいよ。」


「うん・・・そっか、そうね。それでルディのお仕事の方は順調?」


「なんとかね。護りの魔具は仕上がっているし、本番当日に術を発動して結界を張ればいい。会場の準備も飾り付けから警護までオブリーさんと魔法省の協力があるから僕は不穏な動きがないか見張っていればいいだけだし。」


「それが一番集中力使うでしょう?」


「あー、うん。まぁそうだね、でも今回一番の集中力は結界の作業だよ。これがあるから会場の見張り役も大分楽させて貰える様になってる。」


「そう、ならいいけど。私は今回側にはいられないから・・・。」


そう言いながら自らのお腹を摩る。


「この式典が終わったらオルボアに帰りたいな。」


「それはいいけど、僕は仕事でしばらくはまだ忙しいよ?帰れない日もあるかもしれない。だから、心配だなぁ・・・誰か雇おうか?」


「うーん、誰がいるかなぁ。私のためにフェンリルさんは申し訳ないし、かと言って同年代もなんだかねぇ。いまお世話になってるエリンさんみたいな人だと経験もあるしお母さんみたいに頼れるけどなぁ。」


「うわっ、それ養母さんが聞いたらショック受けるよ?まぁ、あの人家事は苦手だから今回は向いてないけど。」


「ふふっ。でしょ?本当は頼るのが一番なんだけどね〜、でもお義母さんも殿下の癒術師だから何かと忙しいでしょう?」


二人でしばらく唸った結果、結局一旦オルボアに帰り、お手伝いさんを探すことにしようと決着がついた。

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