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ふたりで紡ぐ物語  作者: にしのかなで
第二章
33/55

魔法の理

ハヴェルンが存在する世界での魔法とは、何もない無の状態から何かを生み出すことは出来ない。例えば、エリカ・ペイン事件でオブリーが作り出した小鳥はあらかじめ存在するモノに魔法をかけ姿を変えたものであり生命を与えたわけではない。パンを作り出すなら小麦と水などそれなりの材料がいる。水が欲しいならば樹木や草花から蓄えてある水分を拝借するといった様なことになる。


そして、禁止されている誓いがある。

生命を作り出さない、死者を蘇らせない(死にゆく定めのモノを助けない)、金を作り出してはいけない、が主な禁忌の誓いだ。勿論これらは禁断の術を使えば成せない事はない。古から何度も偉大な魔法師であるはずの者らがそれらを可能にする術を編み出してきた、しかし特にこの生命を左右する事に至っては人間ごときが行なうべきものではない神の領域である。この世界はまず神があってその下に神の恩恵を受けたとされる一握りの魔法師らが存在し、そして普通の人々が存在している。


魔法大国であり大陸の頂点に立つこの国の国王はそれに相応しいかどうか、神に采配を委ねる。そこでその資質を認められて初めて王たる地位に就けるのだ、その直系の後継者もまた然り。つまり、いくら第二王子派閥がオーランドを持ち上げようとも、生後すぐに王太子に相応しいかどうかを見定められているアルベリヒの方がどうやっても覆しようのない事実であり、王太子がその立場に胡座をかいた愚者でありまた、その他の後継者候補が余程の功績をなさぬ限り現在の後継者問題には影響がなかった。アルベリヒは昼行灯の様に世間から長い間見られていたが、れっきとした神に認められた次期王位継承者なのだ。


さて、国王交代劇に案ずることは殆ど無かった。その次代の後継者であるアレクサンデル王子にもしも仮に「否」が出たとしても、現在あと一人王子が誕生している。あとは、継承順位順に神に尋ねればよい。皆が問題視しているのはこの儀式よりもそれに伴う結界の張替えの儀式だった。現国王と次期国王の交代だけならば魔法師が二人いれば問題ない、いや今回の場合も魔法師が三人いれば何ら問題はないのであろうが父王の引退はまだ先だと考えていたアルベリヒは自分に次ぐ継承者たるアレクサンデル王子に専属魔法師を付けていなかった。王太子一家の結界は全てルディに任されていたのだ。王太子妃の胎内にいた時からカリンの「幸い」という祝福に守られ、生後ルディによる結界に保護されてきたアレクサンデルはあまりにもニーム・ロドリゲス・ガウス形式の魔法の影響が濃く、急ごしらえの専属魔法師の結界は受け付けない可能性が高い。ならばここは一旦ルディの魔法を受けた後、然るべき人物を選定して専属魔法師にした方が良い。


そこでルディが二人同時に結界を解いたり張り直したりとしなければいけなくなった。現国王には専属魔法師がおり、彼等が王の結界を解き新たに退位後の結界を張るのと同時にルディは新たな王になるアルベリヒのそれまでの王太子としての結界を解き王の結界を張りながら、アレクサンデル王子の結界も解き新しく王太子の結界を張るという非常に繊細な神経を使う魔法を一人で二人に同時に行わなければならない。


魔力が底無しのルディだから可能ではあるが精神的負担が大きく、ただでさえ近年やっと安定してきた魔力が少しのズレや心のブレで暴走するやも知れず国家の首脳陣はそこを一番心配してきたが、首脳陣の一言によりその場にカリンが居ることになり彼らの不安はほぽなくなった。誰がみてもルディの手綱はカリンにあり反対もまた然りであった。


カリンは今王宮内の神官部にいた。


「あの、でもそんな大切な儀式に何の身分も作法も知らない私なんかがいて、いいんでしょうか?」


「いや、なに貴女ならばハーヴェイ様もお気になさりませんでしょう。取り急ぎ儀式に神官・巫女でないものが参列し取り仕切るかもしれないということで貴女の名前はあちらに伝えてあります。未だ何も不服の返答がないのは了解を得たということですよ。」


痩せ型の年老いているが背筋はピンと伸びている神官がカリンに優しげに微笑みながら説明する。


「あの、あちらって?」


「ああ、失われた神殿です。古に主神らと共に地上から姿を消してはいますが、現在でも我々は交信しておりますし、選ばれし者はあちらの神殿に務めております。あなたのご両親のように。」


「両親をご存知なのですか⁉︎」


「はい、詳しくは話せませんがお二人とも立派にお務めされております。あちらのことはあまり話せないのです、申し訳ない。」


「あの、質問ばかりですみません。こちらの方々はハーヴェイ様とお話をされたりするのですか?」


「ははっ、彼の方は本当に人間がお好きな様で、特に子どもの様に無垢な魂のある者達の前には時々地上に人の姿を成して現れていらっしゃいますよ。その時々で御姿は変わられますがね。」


やっぱり・・・以前から気になっていたハーヴェイ神の俗世慣れがこれで納得がいった。


「私は何をすれば良いのでしょうか?」


「主神に対しこの交代が是か否か問うて下さい、それだけで結構です。後は当日あちらから指示が出ます故。」


「はぁ・・・え⁉︎てことはつまり儀式まで私がすることはないのですか?ならばなぜ今から呼び出しが・・・」


「はい、儀式の前日にはあらためてお話しをするやもしれませんがこちらは儀式までは結構です。あなたが呼び出されたのはご主人の関係でしょう。この後オブリー伯の元へお連れする様言付かっております。トトワ、ガウス夫人をオブリー伯の元へご案内して差し上げて。」


「かしこまりました。夫人、どうぞこちらに。」


トトワと呼ばれた少年によってカリンはオブリーの執務室へと向かった。

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