最大の弱みで強み
ルディこと、ニーム・ロドリゲス・ガウス。ハヴェルンが誇る大陸一の魔力持ちである彼の最大の弱点は、強力すぎるが故に安定性にかけやすい魔法とその力を安定に導く妻アレクシア・カーテローゼ・ハプトマン・ガウス夫人の二つであるが最大の弱点は最大の強みでもある。
ハヴェルン首脳陣はその最大の強みとしてカリンに招集をかけた。かけられた本人の役割は即位の儀の前に行われる神の審判に参列し、この国王交代劇が真に正しいかどうかを神に問うのみでありそれまでの三ヶ月の間は夫である魔法師ルディの集中力・精神力がブレない様サポートするのが実際の主な仕事であった。既にルディは魔法省の研究室に籠り、結界を作動させる魔具を作り始めていてカリンが招集されることは聞いてはいるものの本人がもう王宮に呼び出されていることは知らない。
「と、いうわけで向こう三ヶ月寝食忘れてしまうであろうルディ様のお世話をお願いしたくお呼びたてしました。迷惑な話しというのは重々承知ですがね、彼を正気に戻せるのは君しかいないんですまないが頼めるかな?」
そう話すのは執務室に通されたかつての彼等の育ての親代りと言っても過言ではないオブリー伯だ。
「ええと、あの人籠ってから何日になるのですか?」
「今日で二日だよ。だけど研究室に入る前に君が呼び出されるのを聞いてかなり立腹していたし、早く終わらそうと集中力も凄いんじゃないかな。そこへ寝食忘れてバッタリ倒れられたり、正気を失くしてあらぬ方へ行ってしまっては大変だからね。」
「でも、私は魔法省に簡単に入れませんよね?どうすればいいですか?」
「その点は大丈夫。陛下から君は魔法省に出入り自由な身分証を頂いてるから、はいこれがそう。いつも身につけていて。」
そう言って銀の鎖に銀のプレートが付いたネックレスを渡される。
「魔法省はいろんな魔法が複雑に行き交っている。いつも私が送り届けられたらいいけれど、なにせこちらも慌ただしくてね。君には必要ないかと思ったけれど魔法省への通行証は魔除けの銀を使うのが通常なんだ。最初は私が送り届けるから。」
「で、でもあの!昔一度入った時には複雑で彼の研究室までどう行ったか覚えてませんし、今回もやはり見えない方々がいるのでしょう?一人で行くことになったら行き着けるかどうか不安です。」
「あ〜、彼等ね。随分君には興味を持っているけれど、多分ルディ様が間違いなく辿り着ける魔法と彼等の姿・声を遮断するモノを渡してくれるよ。」
な、なんて能天気な・・・いやしかし伯爵も自分の仕事で手一杯なのだろう。
「じゃあ、急だけど早速移動していいかな?私の仕事も差し迫っているので、すまないんだが。」
「あ、はい。」
二人は魔法省に移動し中に入る手続きをとる。
「さて、と。今や人妻となった君を抱き上げて移動するわけにはいかないなぁ・・・。」
「わ、私歩きます!歩けますよっ。」
「はは、そうかい?ちょっと遠いんだけどじゃあ前回と同じく防音魔法をかけるから、あと目は絶対あけないこと。一応これ付けてもらえば安心かな。」
そういって彼はアイマスクを取り出した。カリンも素直にそれを付ける。
「あぁ、こんな事したら怒られそうなんだけど後で君から僕の潔白をちゃんと説明してくれるかな?」
特殊なアイマスクで真っ暗な中、伸ばされた手がカリンの掌を握る。
「大丈夫ですよ、私ちゃんと説明しますしそれに怒る、かなぁ?」
「君ね、まだ自覚ないの?彼は君に関してかなり繊細なんだよ、しかも今は集中していて普段の温厚な彼とはちょっと違うかもしれないから本当に頼むよ⁉︎」
半ば泣きつく様に言われてカリンが笑う。
「あはは、わかりました。ちゃんと伝えます。」
そう答えた後オブリーの合図で足が進む。一度しか来たことがない場所だが相変わらずわけがわからない。まっすぐ歩いているのかクネクネ曲がっているのか、時には床すらない様な感触もある。なんだか言葉を発するのも禁じられている様でカリンは黙ってついて行くしかなかった。




