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ふたりで紡ぐ物語  作者: にしのかなで
第二章
32/55

神の承諾

魔法大国ハヴェルンは、主神ハーヴェイが最初に造った国であるとされているためその国の主が代わる時には神殿にて主神の是非を問うしきたりになっている。神官長・巫女長によりその問いに応えを頂き主神より認められて初めて即位の儀に移れる。しかし、この際稀に否定される場合もある。その時は王位継承権を持つ者を順位順に問うていくことになるが、納得しない王太子と対立し戦争になる場合もあった。幸い現王家デア家が統治し始めてからは一度もその様なことはない、しかし今回の交代劇ですんなり行くかどうか首脳陣には一抹の不安があった。


「オーランド殿下は王太子殿下と国民の人気を二分している上に、これまでの働きぶりからも十分国王の素質がある。」


「しかし、オーランド殿下は未だお一人だしアルベリヒ殿下においては神の祝福を受けた妃殿下がおられる。やはり、主神は王太子殿下を承認なさるだろう。」


「何事もなければいいが・・・なにせアルベリヒ殿下は独身の頃から自由気ままに過ごされ、あのハプトマン神の愛し子を何度危険に晒したか・・・心配なのはその点じゃ。」


エンケル将軍の発言を聞き、会議室に溜息が漏れる。確かに、主神ハーヴェイにとってその点をどう評価するかだ。


「審判の際、ガウス夫人を同席させてはいかがか?」


え⁈


「カリンをまた駆り出すのですか?」


「左様、彼女からハーヴェイ神に殿下が相応しいかどうか問うてもらう役目をしてもらえたら。」


「でもっ、神官長や巫女長のお立場は⁉︎」


「それならば我々は主神を降臨して頂く儀式に集中いたしましょう。」


神官長の言葉に脱力する。


「ガウス魔法師殿、またも奥方に招集をおかけする事になることで奥方の負担などご心配もあられることは重々承知の上お願いいたしますが、今回彼女以上に適任はおりません。なにせ、神の祝福を受け生を持った人の子は他にはおりませんのでどうかご理解頂きたい。」


「神官長がそうおっしゃるのならば、儀式もスムーズにいくかもしれませんね。今回ガウス魔法師の負担はかなり大きい、その魔力の側に奥方を置かれることで安定感が増すでしょう。」


ーは?ちょ、オブリーさんまでなに言い出すの⁉︎ー


「そうだな、今回はかなり集中してやらねばいかん。確かにカリンに側に居てもらった方が助かるな、うん。」


「ちょ、養父・・・技師長まで!」


うんうんと会議室内は満場一致で神の審判の場にアレクシア・カーテローゼ・ハプトマン・ガウス夫人の神官長・巫女長代理、及びその後の儀式の際も神の代理人として神官長らと共に同席することを認めた。


解散の際、オブリー伯がルディの肩を叩き、


「まあまあ、言いたいことはあるでしょうが、まずこれで儀式の成功は間違いなしですよ。」


と、言い去って行った。


「いや、間違いないかもしれないけど問題ありでしょう・・・?」


その日のうちに魔法省と神殿から連名でカリン宛に即位に関する儀式終了までの招集令状がヴィグリー少尉によって届けられた。


「はぁ、なんか嫌な予感はしてたんですけど・・・でもなんで少尉がこれを届けに?」


「エンケルのおっさんからルディと伯爵はもう準備に入ってるんで、俺が迎えに行くのが一番だって。あ、何も用意せずに身一つで来ていいらしいよ。とにかく早く来て欲しいって、ルディが怒りで我を忘れる前に。」


「うーん、本当に私でいいんですかね?一般人ですよ、国民が・・・あ、ごめんなさい。疑問と文句は登城してから然るべき方々に言いますね。」


「ん。そうしてくれる?俺はただの護衛兼お使いだからさ、あと留守中の事は合鍵預かってフェンリルに頼んどこうか?」


カリンはため息を一つついて少尉を見上げた。


「それって、そんなに長く留守にするって事ですか?」


「ん〜、一応そうして欲しいってルディが。」


居間に行き合鍵を取って来て渡す。


「あの、私まだお土産を配り終えてないんです。分けて名前を書いて置いてますのでその配達を頼めますか?」


「おう、お安い御用だ。じゃ、もう行ける?」


「はい。」


二人を乗せた馬車が走り出す。


「それで、即位の儀式はいつ行われるか決まりましたか?」


「三ヶ月後だよ。今朝やっと決まって城内は準備に向けて、てんてこ舞いさ。俺もしばらく帰れない日が続くかな。」


少尉もため息交じりに話す。


「ルーシーに会えないのは辛いですね。」


「だろ⁉︎この可愛い盛りを見逃すなんてさ、まあ俺はそこまで長く拘束されないだろうけど伯爵はもっと辛いだろうなぁ。」


「帰ったら忘れられてたりして。」


「ははっ、ありえる。あいつら毎日覚えることが沢山あって、いらない情報は頭から抜けてるかもしれないな。」


「ふふ、オブリーさん泣きますよきっと。ある意味私を側に置けるルディの方がまだましかも。」


「お、名前から敬称が消えたな。」


「///えっと、いつまでも主従関係みたいだから改めようって旅の間に・・・///」


赤い顔をしてカリンが言うと意外にもからかわず真面目に返答が来た。


「だよな、俺も最初うっかり癖で将軍て何度か呼んで怒られたからわかるよ。いい傾向じゃない?カリンの顔色も旅に出る前より良くなってる、ウルリヒで会った頃のカリンみたいだ。いい気分転換になったようだな、良かったよ久しぶりに会ったけどホッとした。」


「そんなに違いますか?」


「うん、なんかさ吹っ切れた感じがする。カリンはさ、やっぱり元気で殿下も平気で叱りつけるくらいじゃないと。」


「それよくないでしょう〜、私普通なら不敬罪で何度も捕まってますよ。」


「だから選ばれたんだよ。殿下の良い所も悪い所も知ってるカリンだから、神官長達の代理人になれるんだ。」


「そう言われるとなんか納得します。」


「だろ?」


その後車中で今後の予定などの説明を受け、城に着く頃にはすっかりこの話しを引き受ける覚悟がついていた。


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