おかえりなさい。
帰って来た。あの地獄の様な魔の会議室からやっと解放され、もうとりあえず帰りたくて執務室に入るなり移動魔法で帰って来てしまった。会議は朝から夕まで続きその間頭を使いっぱなしで精神的疲労が激しい・・・。
ただいま、とドアを開けると賑やかな声がする。
「おかえりなさい!良かった、帰れたんですね⁉︎」
慌てて玄関に出迎えに来たカリンを見て全身の力が抜ける、ああこの笑顔が見れてよかった・・・そう思うと同時にカリンを抱き締めた。
「ただいま。今日はもう疲れて限界だから帰って来たけど呼び出されるかもしれない。もう、聞いてくれる?あり得ない話しだよあんな事僕一人で出来るわけ無いじゃん考えたらわかるだろうに大臣は無茶苦茶言うし、オブリーさんは持ち場と仕事がハッキリしてるから助けにならないし・・・」
「あああの、ルディ?とりあえず落ち着いて。今、フェンリルさんご一家がいらしてるの。」
へ、フェンリルさん?そこへ咳払いをしながらフェンリルが登場してきた。
「あらぁ、いきなり一人になるのは心配だから押しかけて来ましたけどお邪魔でしたね。」
「わーっ⁉︎な、なんで家族揃ってウチにいるんですか///」
さっきの愚痴を聞かれたらしいので恥ずかしくなる。
「あのね、私がご招待したの。まさか今日帰れるとは思わなかったし、留守中のお礼も兼ねて晩御飯を一緒に食べようと思って。」
「いやいや、邪魔したなルディ。ほらチビどもこのお家はもう安全だから帰るぞ。」
ニヤッと笑いながらフェンリルの夫、グレイが出てきて子ども達に声をかけると続々と小さな頭が覗き始める。
「安全?じゃあ悪い泥棒とかこないの⁉︎」
「もう大丈夫よ、このお家の御主人様が帰って来たからね。」
「あーっ、ルディさんだ!おかえりなさーい。」
「ルディさん、お土産ありがとう。」
「ありがとう。」
三姉弟がそれぞれ口にしながらルディに飛びついて来た、それを母に諭され父親に次々とつまみ上げられる。
「お疲れ様ですね、長旅の後にいきなり難しいお仕事で。それからお土産カリンから受け取りました、お気遣いありがとうございます。さ、皆帰るわよ。」
「え、いやまだゆっくりしてって下さいよ。」
「今日はお疲れでしょう?またルディ様のお留守には覗きに来ますから、ゆっくり休んでお仕事頑張って下さいまし。」
そう言い残しフェンリル一家は帰って行った。
「・・・僕、恥ずかしいとこ見られた?」
「多分・・・」
またしても疲れが襲って来た。そんなルディにまあまあ気になさらずにと、声をかけ荷物を受け取りカリンが居間に手を引き連れて行く。ソファに座らせ、先程までいた客人の茶器を片付けてルディにいつもの特製ハーブティーを入れる。
「はあ、久しぶりだなこれ飲んだの。やっぱりうちの味が落ち着くよ。」
「ふふ、なら嬉しいですけど随分とお疲れの様ですね。いまお湯の準備してきますから湯浴みして今日は早く寝ましょう。」
「ありがとう。あー、ホンット疲れた。これから先が思いやられるよ。」
湯浴みを済ませて軽めの夕食を取りながらルディは、会議で聞かされた即位にまつわる魔法師の役割や手順を掻い摘んで話す。
「え?えーっと王様の魔法を解除して別の魔法をかけながら殿下にも同じことを同時に?へ、アレクサンデル殿下にも⁉︎で、その前にそれぞれハーヴェイ様の了承を取り付けなきゃいけなくて、その間の会場の結界やら魔法の飾り付けとかも維持しなくちゃいけない・・・それ、一人でなさるんですか⁈」
「わからないんだ、ここ最近では三代揃っての儀式の例がなくてね。だけど本来は次期国王付きの魔法師が先導してやるしきたりということだけは理解して帰ってきた。」
「ややこしいで話ですね。それにしても、王族の方ってそれぞれ結界が施されているのですか?」
「ああ、そうなんだよ。国王御一家にはね、一人一人に専属魔法師が何名か付いてて護りの結界がそれぞれの方に施されているんだ。で、結界って簡単にいうけどその位に応じた様式があって陛下の結界は一番複雑で強固だね。アルベリヒ殿下の結界は僕の養父さんが張ってあるのを引き継いだんだよ。僕とオブリーさんが殿下付きになる迄は養父さんと養母さんがまぁ暫定殿下付きみたいな感じだったらしいんだけど。」
「それでお養母さんは離宮によくいらしてたんですね。」
「うん。なんでも殿下が将来は僕を専属にするから魔力が安定するまで待つって言ってたらしいけど、それじゃ警護面で周りが落ち着かないからあと何名か離宮に魔法省から詰めてたらしいよ。それにしても、僕も勉強不足だったけれどもう少し魔法師の人員を増やしてもらわないとこの先の結界維持が大変だよ。」
「・・・本当に忙しくなりそうね。」
「うん、だから今日はさっさと帰ってきた。下手するとまた何も言わずに長い事会えなくなるのは嫌だから。まさかフェンリルさん達がいるとは、計算外だったな。」
癖っ毛を掻きながら俯き呟く。
「私もまさか今日帰って来てくれるなんて想定外だったわ、今朝早くセシリアが鍵を返しに来てくれて急に思い立ったのごめんなさい。」
「いや、いいさ。君が独りじゃなくて安心した。これからも、僕の留守中にはセシリアに泊りに来させてもいいんじゃないかなぁ。早いよね、もう7歳だろう?」
「はい、春から学校に上がっています。」
「あ、あ〜そうか!早いなぁ、君とウルリヒいた時なんて昨日の様に思うけど人の成長で見ると時が過ぎるのは早いもんだね。」
「ふふふ、ルディなんだかおじさんっぽい。」
「え、嫌だなぁそんなこと言う?」
「うん、言う言っちゃう。でも、私もね今朝セシーを見て同じこと考えちゃった。」
なんだよそれ、とルディが笑いながらカリンの頭を撫でまわす。
「ね、ルディ。」
絡みついてきたカリンを抱き寄せ続きを待つ。
「明日も帰って来れればいいのにね。」
「努力します。」
夜も更けてきて寝室に入る。目を閉じてカリンはもう一度願った、この愛しい人が早く忙しい日々から解放されます様にと。




