ハニートラップ3
王太子妃、愛称ティーヌ妃殿下はやはり今回の夫である王太子の計画に不安を感じていた。しかし、鴉からの情報だけではエリカを確保するわけにいかず仕方なく、オーランドも危険を承知の上でこの陽動作戦に同意しているらしい。一応、弟の身の危険の心配とエリカの注意をそらす為にもアルベリヒは今晩は盛んに若い魔法師らの間を回って会話をしている。
「でも無責任だと思わない?カリンの警護は全くないのよ⁉︎」
掌に扇を打ち付けて夫の非道を責める。
「そりゃね、確かに貴女は民間人よでもただの民間人じゃ無いでしょ⁉︎今迄ハヴェルンの為に尽力をつくしてくれたし、大陸一の魔法師の妻なのよ?なのに何度進言してもカリンに警護はいらんあの夫婦なら放っておいても大丈夫だって言うのよ。それなら今日起こりうる予測される内容をあなた達に話すべきだわ!」
ーうわ〜、ここでも怒らせちゃいけない人を怒らせてるよ殿下・・・。ー
ルディはすっかり殺気が取れてしまっていた、確かにティーヌ妃の言うことはもっともだ。しかし、もし事前に知らされていれば自分達はどうなっていたんだろうと冷静に考えさせられた。カリンは何年も使っていない小刀などを忍ばせ完璧な装備で来ただろうし、自分においては平静を装えたか自信が無いその点で王太子の判断はある意味正しかったのだろう。飄々としてはた迷惑なところはあるがやはり世間に見せる姿と長年離宮から弟王子を使い国政に影ながら影響していた人物である、鴉という特殊部隊を組織し今日はその大部分が密かに紛れ込まされていると言うことは、それだけ大ががりな捕物になる内容をあのエリカが握っているのだろう。しかしそれ程の警備を敷くその内容はなんなのだろう?確かにそこがわからないと、いざという時の対応のしようが困る。わかっているならば今のうちに教えて欲しいのは本心だ。
「大丈夫ですよ、妃殿下。私にはルディ様がついていますから、幸いオーランド殿下から先程少しお話しを聞いた様ですしその時の空気の凍り様といったらもう、氷点下ですよ。私はなにが起きてもルディ様が居れば大丈夫なんです。」
ーえ…ちょっ、そんなこと臆面もなく言われるとなんだか恥ずかしいからやめてカリン・・・///ほらもうっ!妃殿下までなんだか顔が赤くなってるじゃないかー
「それに私、あの方には何があろうとも絶対に負けません。私に対する嫌がらせだけならともかく、自分の私利私欲のためにオーランド殿下に何かしようと企むなんて絶っ対に許されることではありません!!」
拳を握り締めエリカへの対抗する決意を語る妻をルディはどう扱えばいいのだろう・・・・・・。
「と、言うわけで大筋はアルべリヒ殿下からお聞きしていますがもう少し詳しく教えていただけるとありがたいのですけど・・・」
「ごめんなさい。それが国家機密レベルだとか言って、私も詳しく教えてもらえてないのよ。あの兄弟は全貌を知っているから、そちらに尋ねた方がいいわ。ね、カリン?あなたの活躍は私も昔から伝え聞いて勇気のある女性だということは知っているわ。でもね?勇気と無謀は違うのよ、一人で頑張りすぎないでね約束よ。」
ファンテーヌはカリンの両手を自分の掌で包み込み言い聞かせた。確かに結婚以来こんなことは初めてだがそれ以前の彼女を知っていれば心配にもなるのだろう、カリンもそこを理解して約束をした。
「はい、必ず一人で先走ったりしません。何かあればルディ様を頼ります。」
ホッと息をついてファンテーヌは手を離した。ふたりはその場を辞し、とりあえずダンスをするという事で抜け出ているので輪に加わった。そしてふとカリンが思い出した事をルディに伝える。
「ルディ、えっとあの私がグラスを割ってしまったときに女の子がいたでしょう?」
「ああ、うんいたね。迷子だろう?」
「それが変なんです、手を引かれて行った先にお兄さんらしき子供がいて、その子から銀の短刀を受け取りました。ええっと、確か今日必要だからと言われてそれからオーランド殿下を助けてあげて欲しい、禁術を使うはずだから・・・」
「え?なにそれ、またハーヴェイ様じゃないの?」
カリンは頭を振った。
「違うんです。姿は何となく似ていたけれど・・・目の色が違ったしハーヴェイ様ならわかります。ただ女の子の方が途中「今は誰でもないけどいつか誰かになるかもしれない。」って自分のことを言っていました。何なんでしょう、短刀は今も隠し持っていますけど。」
「うわ~、もう僕の知らないところで物騒なモノを身に着けてるなぁ・・・。」
「だ、だから!話したくても話せなかったんですっっ」
「はは、わかってるよ。でもさっきの妃殿下との約束を忘れないでよ?あ、王太子殿下みっけた!近づいてみよう。」
一曲をちょうど踊り終える頃に目当ての王太子殿下を見つけたふたりはそのまま輪を抜け彼に近づいて行った。




