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天は星に願いを込める~麗しの第二王子殿下は天才近衛魔術師を溺愛中~  作者: 宮前 雫
第一章 王立魔法学院編

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31.模擬魔法戦



広い訓練場の端と端に向き合って立つ。

ディーンの魔力は訓練場の半分を埋め尽くすような強さで燃えるように熱く質量が高い。

ステラも魔力を制限している場合じゃないと解放する。

ステラの魔力が訓練場を埋め尽くす。


ディーンがぐっと親指を立てるのが見えてステラは微笑んだ。

ここではありのままの自分でいていいのだ。


「それでは、始め。」

「《守れ》」


別の王国魔術師の声が響くと同時に上空に魔力を感じたステラは咄嗟に防御をする。

先ほど見た雷の魔法だろう。

質量の高い魔力が激しく防御魔法にぶつかり、杖越しに衝撃を感じる。


雷の魔法は一発で半径三メートル程度を粉々にする。

ただし、事前に位置を決める必要があるので動き回る敵には不向きだ。


ステラはひたすら走り、立ち止まらないようにする。

合間に無詠唱で発動できる簡単な攻撃魔法をいくつか飛ばす。

相手に攻撃が届き、防御魔術を唱えるのを確認してステラは立ち止まって詠唱した。


「《敵を包囲せよ》」


結界魔術で相手の魔力を結界の中に封じ込める。

ステラの魔術を察知してディーンも動くと思ったので、訓練場の三分の一を囲う大きな結界を作る。

これで範囲外に遠隔で魔術を起動することはできなくなる。雷が降ってくることはない。


ただし、弱点もある。


「《守れ》」


飛んできた無数の攻撃を防御する。

結界内から放たれた攻撃は通過してしまうのだ。

ディーンは結界に囲まれても落ち着いていて、さすが王国魔術師だと思った。

結界を解かれる前に倒さないと、ステラが燃えかすになってしまいそうだ。


「《囲め》」


ステラはディーンの動きを見定めて、結界の内側にもう一つ結界を作る。

これは魔力を込めて作るただの透明な箱で物質を遮断するだけだ。


「《水よ、大地を潤せ》」


狭い方の結界に向けて魔力を思いっきり込めて詠唱すると、ディーンの足元から大量の水が湧き上がってくる。


領地の畑に水をやるときに使っていた魔法だが、広い畑分の魔力を狭い結界に込めたのでディーンは瞬く間に顎まで水に浸かる。


その杖が手から離れたのを見て、ステラは全ての魔法を解除した。



「ステラ、さすがだよ。君には才能がある。」

「とんでも…ないです…。王国魔術師って…すごい…ですね。」


びしょ濡れのディーンと握手をする。

ステラは走り回ったせいで息が切れている。


「負けてるけどな。次は勝つからな。」

「はい…っ、またお願いします!」


こんなに遠慮なく魔法を楽しめたのは生まれて初めてで、ステラは高揚していた。


そのあとも三人と戦い、なんとか勝利したが、五人目で体力の限界が来たステラは杖を離して降参した。


「ま、負け…ました…っ」

「十分すごいよ。僕なら二人で限界だけど君は五人と戦った。」

「いえ…次は…五人倒し…ます…。」

「さすが師団長のご令嬢。」


五人目に戦ったエメリックが笑って言う。

ステラはこんなに動き回ったのが久々だったので息切れがすごい。


「第二王子殿下のご寵愛を受けてるっていうから、どんなお姫様かと思ったけど話しやすくてよかったよ。」


最初に戦ったディーンも話しかけてくれる。


「わ、私は…ご、ご寵…愛なんてそんな…」

「この調子なら皆ともすぐに馴染める。明日からもよろしくな。」

「あり、がとうございます…!」


着替えに行くという戦闘部隊の魔術師達と分かれ、ステラが寮に向かおうとすると、使用人が駆け寄ってきた。


「ステラ・アルカニス様。

第二王子殿下の侍女が来ています。

本部にお越しください。」

「はい、わかりました。」


何だろうと思いながら、本部に向かう。

一刻も早くシャワーを浴びたいけど、急ぎの用事かもしれない。


本部に入ると、夜会でドレスを着るときに手伝ってもらった、侍女に扮した元王国魔術師の女性が立っていた。

今日も侍女の格好をしている。


「ステラ様、お待ちしておりました。」

「あっ、あのときはありがとうございました。」

「とんでもございません。勝手に魔法を使ってしまってごめんなさいね。」

「いえ、私が悪いのでいいんです!」


謝られて慌てて否定する。

この魔術師は、ステラの魔道具の指輪を解析してヴァレン殿下に伝えたらしい。

でも元はと言えばステラがヴァレン殿下に隠し事をしたのが悪い。


「今日は正真正銘、侍女として参りました。あなたをお連れするように、第二王子殿下から申しつかっております。」

「そうですか…。あの、先にシャワーを浴びてもいいですか?訓練で汚れていて。」

「そのために私が参りました。」

「は、はい…?」

「第二王子殿下にお仕えする侍女一同、この日を心待ちしておりましたの。

今日こそピッカピカに磨いて差し上げますわ。」

「ひ、ひぃっ…」


何故今日磨かれる必要があるのかさっぱりわからない。

ステラはそのまま王城内に連行された。



「こちらが湯殿でございます。」

「ゆ、湯殿…」


シャワーを浴びたかっただけなのだが、何だかすごく大層な部屋に連れてこられた。


「では、失礼いたしますわ。」


その言葉を聞いて退出してくれるのかと思ったら、侍女がズラリと入室してきてステラは身ぐるみを剥がされた。

既にボロボロだったステラには抵抗する気力など残っていなかった。


「お足元にお気をつけくださいませ。」


侍女の先導で入ると、五人は入れるのではないかという大きなバスタブに並々と湯が貯められていた。

疲れ切ったステラには輝いて見えた。


(たまにはピカピカに磨かれるのもいいかもしれないわ…。)


ステラは侍女のされるがままに身を任せ、ピカピカにされていった。



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