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天は星に願いを込める~麗しの第二王子殿下は天才近衛魔術師を溺愛中~  作者: 宮前 雫
第二章 婚約者編

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132.合同訓練



ステラが頷いたのを見て、部隊長は続けた。


「平時の主な任務は君が経験したような国内での襲撃に対する対応や、警備部隊では担いきれない危険が予想される人物や場所の警護だ。


そして王国騎士団との合同訓練もある。

それ以外の時間で君にも参加してもらっているような訓練を行っている。

これからは君にも騎士団との合同訓練やその他の任務に参加してもらい、私がいないときは指揮をとってもらうことになる。」

「はい、部隊長。」


ステラはその言葉に息を飲みそうになってぐっと堪えて返事をする。

自分に人の指揮などできるのだろうかと不安になってきたが、感情を押し殺した。


「…不安だろうが、国王陛下は君ならできると判断されてこの職に任じられた。

自信と誇りを持って職務にあたってくれ。」


ステラの不安を見抜かれて驚いてついに表情に出てしまう。

でも、部隊長の鋭い視線が和らいだ優しい表情を見てステラも微笑んで敬礼する。


「お気遣いいただき、ありがとうございます。

戦闘部隊の一員として、命を懸けて王国をお守りさせていただきます。」

「よろしく頼む。」


部隊長が席を立ち、ステラに握手を求めたのでステラも応じた。


その手の分厚い剣だこからその実力が魔法だけではないことを悟り、ステラも副部隊長の地位に恥じぬよう鍛え直そうと誓った。



「今日は時間があるかな?」

「日が暮れるまでに戻れば大丈夫です。」

「では、早速だが王国騎士団との合同訓練をしているから行こうか。」

「お願いします、部隊長。」


ステラは緊張しながらも、騎士達と一緒に訓練できる喜びが勝って笑顔で返事をした。





◇◇◇





この日の合同訓練は王国騎士団の訓練場で行われていた。


王国魔術師団の訓練場は第一訓練場以外はフェンスと結界で覆われていてどこも同じような見た目だが、王国騎士団の訓練場は騎馬訓練用の馬場から弓矢の射場、森のような訓練場から王国魔術師団のようにフェンスと結界で囲われた訓練場と、様々な施設があって驚いた。


訓練場で見かける王国騎士の姿は、どの騎士も領地の騎士では歯が立たなそうなほど屈強で技術が高かった。

この中の精鋭が近衛騎士なのだと思うと、メーデンとアーノルドを本気で見直した。




今日の合同訓練が行われているのは、森のように木々で覆われている訓練場だ。

中から剣がぶつかる音が聞こえ、魔力を感じた。


「もしかしたら流れ矢や逸れた魔法が飛んでくるかもしれないから気をつけて。」

「お気遣いありがとうございます、部隊長。」


言った側から矢が飛んできて頭を引っ込める。


ステラは領地の野蛮な騎士達と鍛練していたので、狙いが研ぎ澄まされた矢を受け止めるよりもむしろ流れ矢をかわす方が得意だった。



「君は剣術もできると聞いたが、矢にも動じないとは驚いた。」

「田舎の領地で幼い頃から騎士達と鍛練していたんです。ただ、王国騎士とは比べ物になりません。」

「君は王国魔術師だから王国騎士と肩を並べる必要はない。……それにしても頼りになるな。」

「恐れ入ります、部隊長。」


部隊長が話しているときに矢が飛んできたので脇に差していた剣で弾くと、部隊長が目を丸くしてステラを見た。



森が少し開けたところで、騎士達が馬に乗りながら手合わせをしていて、戦闘部隊の魔術師が離れた木の影から騎士に魔法を撃ち込んだり、魔法から守ったりしていた。


「止め!部隊長と副部隊長に敬礼!」


戦闘部隊の魔術師のディーンの声がして騎士が馬から降り、魔術師が木の影から出てきて整列する。

騎士も魔術師も十人ずついた。


「楽にせよ。紹介する。

本日付で戦闘部隊の副部隊長に昇格した、ステラ・アルカニスだ。

お立場は気にするなと師団長から厳命されている。

騎士団の者もこの者の立場は気にせず副部隊長として接するように。」

「「はっ。」」


騎士達が洗練された動きで敬礼する。


「では早速だが、二手に分かれて剣術による騎馬戦を行おう。

私と副部隊長で指揮をとるから戦ってくれ。」


ステラはその言葉に内心動揺するが、副部隊長としてそんな姿を見せるわけにはいかないので無表情のまま頷いた。



騎士と魔術師が五人ずつにそれぞれ分かれて、ステラと部隊長の元に駆け寄ってくる。


戦闘部隊の魔術師は皆ステラのことをよく知っているが、騎士達は初めてなのでこんな小娘の指揮に従うのは癪かもしれないと心配していたが杞憂だった。


「副部隊長の武勲は聞き及んでおります。

本日はよろしくお願いいたします。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。」


騎士達に頭を下げられたので安心して微笑む。



ステラは先ほどの訓練を見て疑問に思ったので魔術師達に聞いてみる。


「魔術師は馬には乗らないのですか?」

「乗ってはいけないということはありませんが、命中率が下がるので基本的には地上から支援しています。」


戦闘部隊の魔術師のエメリックが答えてくれる。


「では私が馬に乗って騎士達に混ざって攻撃しますので、皆さんは騎士の防御に専念してもらえますか。

私自身の防御は自分で行いますので大丈夫です。


騎士の皆さんは私に攻撃が来ぬよう、騎士の対応をお願いできますか。

魔法に関しては魔術師が対応しますので気にされなくて結構です。


私がまずは魔法で騎士を倒しますので、その後、部隊長以外の魔術師を狙ってもらいたいです。」


ステラの提案に皆が驚いた顔をする。


「私を信じてください。よろしくお願いします。」

「承知しました、副部隊長。」


エメリックが敬礼すると、他の者もさっと敬礼した。



離れたところに繋がれていた馬を一頭借りて、ステラも跨がる。

王国騎士団の馬は一度乗ったことがあるが、よく訓練されていたので魔法戦にも動じなそうだ。


ステラが一人でひょいと馬に乗った姿を見て、部隊長も含めて相手側の魔術師と騎士達が皆目を丸くしていた。



ステラは馬に纏わせるように防御魔術を施すと、手綱を持つ左手に杖を持ち、右手に剣を持つ。

相手の騎士達も馬に跨がって向かい合った。



「それでは、始め。」


部隊長の声がして、ステラに攻撃魔法が飛んでくるが無詠唱の防御魔術が攻撃を防ぐ。

ステラにとって警戒すべきは部隊長だ。


左手の杖で部隊長に集中的に攻撃を浴びせて、木を薙ぎ倒していき、強力な攻撃魔法を詠唱する隙を与えないようにする。

無詠唱で飛んでくる部隊長の攻撃魔法は魔法剣でいなしていく。



その合間を縫って、相手の騎士達に攻撃を飛ばす。


馬で駆けながら、騎士の利き手を狙って小さな雷を落としていく。

騎士の動きを読んで遠隔魔法を瞬時に落としているので、魔術師の防御が間に合わずその手に当たり、剣が手から離れる。

丸一日は痺れが残るかもしれないが、屈強な騎士なので怪我はしないだろう。



一人、また一人と騎士達が剣を手放していき、五人の利き手に命中したところでステラ側の騎士が馬を魔術師の方向に向かわせて剣を振り下ろしていく。


騎士達に攻撃魔法が飛んでくるが、ステラ側の魔術師達が防いでいるのでその手に迷いはなかった。


騎士達の魔法剣は防御魔術を切り裂くことができる。

部隊長以外の魔術師が身の危険を感じて杖をすぐに手離したのを見て、部隊長も苦笑いを浮かべながら杖を手離した。



ステラ側で戦ってくれた騎士と魔術師達が駆け寄ってくる。


「皆さん、私を信じていただきありがとうございました。」


ステラの言葉に皆が微笑んで敬礼してくれたのでステラも嬉しくなって微笑んだ。



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