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第10話「我ラ裏生徒会ナリ 其之壱 護国神像・大和」 Aパート②

 日常(がっこう)が非日常(ルミナキャスト)以上の非日常と化すこの状況。

ヨシノとしても次の行動が定まらない。ルミナタキオンとして戦えばいいのか、

説得すればいいのか。少なくとも、それは彼らと同質の超能力者が戦えばいいのであって、

魔法素粒子界の調和を守る戦士の責務ではないことだけは理解している。


「これ、視聴者はどう処理するの……!?」

「僕も見たくない……」


 ゲッシーだけは自慢のタブレットでその反応を覗けるはずだが、

震える手つき、あるいは前脚。恐らく、今回ばかりは何を言われるか、

ゲッシー自身も想像したくはないのだろう。想像に難くないが故に。

そんな困惑に追い打ちをかけるように、校内放送が流れる。


「我々裏生徒会は、力を以てこの学校を支配する。

 力とは、武力、知力、魅力──それを限定しない」


 陶酔とも自負ともつかない言葉。この、冗談のような宣言でヨシノは確信する。

本当にクラスメイトが傷付くかもしれないと。ならば、次の瞬間にやることは一つ。

言葉よりも先に放たれるは覚悟。構えるルミナスコープこそが、それを物語る。


「誰かを守るのに、場違いか否かなんて関係ない!」


 至るはルミナタキオン。ゲッシーに微笑みかけ、そのまま駆け抜けていく。

無論、裏生徒会が何者かであるかなど、知る由もない。誰がどんな力を使うのか、

どんな性格なのか。顔見知りはいるのか、全くの赤の他人なのか。

ヨシノが憧れたヒロインは、どんな戦場であっても逃げ出さないであろうことを考えたら、

それも些細な事ではあるが。


「その力…"エクステンド"の使い手みてえだな」


 走りゆく中、引き留めるように放たれた、どこか軽薄な声。

廊下の奥から顔を出すのは、首筋から覗かせるタトゥーに着崩れた白い制服。

疑う余地もない。裏生徒会である。嘲笑するかのように緩んだ口元で、

手招きをしてそのまま引き返すも、あんな放送を聞かされた直後なのだ。


「待ちなさい!」


 曲がり角まで一直線。タキオンの名に違わず。

その脚力で走り抜け、追跡を試みる。その距離数km。

未だ、曲がり角まで到達しない。


「これ……何かの能力だ!!」


 気付いたと思えばもう遅い。そのまま床はひび割れ、

崩れ落ちる。タキオンがいる一階廊下の更に下。

奈落の底の無限の穴が、深い闇へと突き落と相当の手招きをする。

そうはさせない!そんな叫ぶような足取りとともに。

タイル片を足場にし、次から次へと踏み抜き、飛び越えながら、

タキオンは地上へと突き進む。それだけではまだ足りない。


「なら、飛んでやる!!」


 ルミナタキオンは圧倒的な脚力を以て、

宙を切り裂き、空を飛ぶかのようにその体で高く跳ねることはあったが、

一度たりとも空中浮遊、飛行の類の力など使ったことはない。

だからこそである。虚空からルミナステッキを展開し、

思い切り心を込める。目、耳、鼻、肌、舌、頭。

感じ取る総てがステッキに流れ込み、そのまま質量がゼロになる。


「飛んだ……」


 布団に倒れ込む。感覚としては、そんな日常動作と一緒である。

それを、上へ上へとかける方向を変えるだけ。

名付けて空中浮遊・ルミナフロート。

普段の生活には活かせそうにもない、

この奇妙な体重移動を以て、空を歩く。


「こんなタイミングで新技を覚えるのも癪だけど…それどころじゃないよね」


 大事な学校を壊す悪い生徒は、ワルター以上に見逃せない。

そんなタキオンの覚悟を激励するような窓越しの日差し。

一階まで戻り、最初に見た景色は青空でも、

遠すぎる曲がり角でもない。向こう側から見える、

なんの変哲のない距離感の廊下。


「この能力……実は微妙な距離しか操作できない!?」


 換気をするかのように開けた窓から飛び出し、

そのまま屋外へとタキオンは走る。やはり、その通り。

融通の効く力であれば、閉じ込めることも、

学校全体を出鱈目な空間にすることも出来たはず。

見掛け倒しと言うにはあまりに不気味な質感ではあったが、

廊下を出るだけで突破可能な力。


「クソッ!なんだアイツ……逃げやがっウゲッ」


 焦りからか、窓を開けるのは能力の主。

もっとも、タキオンにとってはそれもモグラ叩きのようなもの。

飛び出した顔面を、そのままドロップキックで踏みつける。

手加減はしておいたよ、少しダウンしてもらうけど。

少し意地の悪い笑顔を投げかけ、タキオンはそのまま走る。


「何だその格好は。アイドルのつもりか?」


 駆け抜けるタキオンと並走するは、

白い学生服とペンライトのコントラスト。複数人の男たちが、

統制のとれたフォームで追跡を行う。ワルターならまだしも、

人間がルミナタキオンとして自分と互角の速度を保ち、

あまつさえ服装に悪態までつくとなれば、にわかに恐怖を禁じ得ない。


「追手!?させるか、タキオンシフト!!」


 思い切り体を捻り、そのまま肉体を質量なき光へと変換し、

一気に駆け抜けた先。確かに教室へ逃げ込んだと思ったところ、

先程入ったはずの体育館以上に広大な敷地が拡がる。

巨大なモニターに、左右に陣取るスピーカー。

この空間はまさしく、ライブ会場。


「対バン希望!?悪いけど、スーパーヒロインはあたしなんだから!!」

「へえ!?」


 乱入してきたタキオンに啖呵を切る少女が纏うは、

裏生徒会に共通する純白の制服の女子仕様。

マイク片手にステージに立つその姿は、まさにアイドルそのもの。

相槌にすらなり得ない、情けないタキオンの声を遮るのは、

スピーカーから流れる背景音楽。そのまま蕩けるような発声に乗せて、

動き出すのはペンライトを持った兵士たち。


「みんな!その不届きものを殺っちゃって!!」

「歌で生徒を操ってるの!?」


 飛びかかる男子生徒の大群。彼らの四肢が鞭のようにしなり、

鋭い当て身をタキオンに浴びせようと蛇のように牙を剥く。

この速度感。間違いなく通常の人間の出せる敏捷性ではない。

裏生徒会特有の超能力が、極限まで身体能力を高めたのだろう。

身の危険すら覚えるほどの勢いではあるものの、

操られているのかもしれない以上、

妄りに生徒を傷つけるわけにはいかない。ここで放つは、タキオン…


「リジェクト!!」


 タキオンフィールドの制御で見出した新技。

単刀直入に言えば、簡易タキオンフィールドである。

破壊力の替わりに、燃費を向上させた純粋な盾。

拒絶の文字の通り、タキオンは相手の攻撃を拒絶する。


「攻撃しないかわりに、絶対に攻撃させない!それがタキオンリジェクト!」

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