↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
5/63

第1話「ええ!?私がヒロインに!?」 Bパート①

「それだよ、ヨシノ!」

「それだよ?」


 突然のオーディエンス。

意味も分からず振り返った先にいたのはゲッシー。

ようやく見つけたハムスター。ヨシノが助けを乞おうとしたその瞬間、

おもちゃのステッキが激しい光に包まれる。


「いいかい、ヨシノ。これがルミナスコープだよ」


 ゲッシーが嬉しそうに語るものの、その眩い光に、ヨシノの思考は追いつかない。

光が消えたその先。瞑った目を開いた、ヨシノの眼前の左手首。

先程まで握っていたステッキの替わりに、腕時計のようなアクセサリーがそこにはあった。

時針も分針も数字もなし。透明のガラスとジュエルの装飾。


「え、何この時計」

「ルミナスコープは時計じゃない。顕微鏡だよ」


 唐突に現れた「ルミナスコープ」に、疑問だらけのヨシノ。

それに応えるように、ゲッシーの解説が始まる。

レンズを弾くように上げて、その手を顔に近づけ、覗き込む。

この一連の所作を行うことで、変身を可能にするのだと言う。


「変身?」

「もちろん、ルミナキャストにだよ」


 このやり取りの間にも、黒い影の巨人は近づく。

ワルターを倒せるのはルミナキャスト。ゲッシーの言葉で、

影の巨人の名前はやはり「ワルター」であること。魔法素粒子界は、

ワルターに何らかの被害を受けたこと。自分なら戦えること。

ヨシノはそれを確認する。


「さあ行こう、ルミナタキオン!」


 ゲッシーの掛け声と共に、ヨシノはレンズを覗き込む。

次の瞬間、ヨシノはレンズに吸い込まれる。ルミナスコープの中。無数の光の奔流。

光の道に沿い、ヨシノはスコープの中の空を舞う。

先程まで着ていた制服が、「光」そのものに変換される。

そこから更に、光は実体のあるフリルのドレスに。

そして、ドレスに合わせた新たなデザインのステッキを携え、

そのままヨシノは観光案内所の地に立つ。


「変身しちゃった…」

「その初々しい対応、いい画だよタキオン」


 煌びやかな自分の姿。ゲッシーのカメラマンのような反応。

ヨシノの思考は未だ追いついていない。ルミナタキオン?

先程ゲッシーが述べたフレーズを不思議がるヨシノに、

君が変身する戦士の名前であると、ゲッシーは言う。


「ルミナキャストのルミナタキオン…私が戦わなきゃダメなんだね」


 その矢先にワルターが、ヨシノ…もとい、ルミナタキオンに荒々しく飛び掛かる。

猛獣のような俊敏さ。タキオンは目を丸くするも、

その軌道を目で追えている事に気付く。


「ウソっ!速すぎない!?」


 そう叫ぶのも、動きを捉えられているから。その突進を、タキオンは軽々とジャンプで躱す。

ヨシノは、運動が特別得意なわけではない。喧嘩が出来るわけでもない。

そんな自分が、2階建ての観光案内所よりも高い位置まで跳んでいること。

そして、すぐさま次の行動を思考できること。

そんな自分に、ヨシノは驚愕する。


「私、本当に魔法少女になっちゃったんだ…」


 そのまま、魔法とはかけ離れた暴力的な鋭い急降下でワルターを踏みつける。

脳天に激しい一撃を叩き込まれ、大きく体勢を崩し、悶えるワルター。

ヨシノは、ルミナタキオンとして、破格の力を得たことを自覚する。

感慨とも混乱ともつかない心持ちのまま、ワルターを踏み台にして、

新体操を始めたかのように宙に返りながら着地。そのまま、

流れるようにファイティングポーズを取り、タキオンはワルターと相対する。

それに割り込むのは、男の声。タキオンの背中は何度か聞いた薄ら笑いを耳にする。


「フフフ…遂にルミナキャストが現れたか」


名前はルミナタキオンだな。そう確認しつつ感嘆する、先程のモニターの仮面の男。

飛び上がり、走り、タキオンの足元に飛び込むゲッシー。

その後ろで、仮面の男を覗き込むように顔を出す。


「破滅劇団ペルソナクス!あいつらがワルターを使って魔法素粒子界を襲ったんだ」


 声を震わせ説明するゲッシー。あの仮面の男はワルターを使役する、

幹部に相当する存在であると言う。ゲッシーが口を閉じたタイミング。

仮面の男は説明ご苦労と言いたげに、肩で笑いつつも、指先から毒々しい色味の光を発する。

光線が向かう先は、タキオンではなく、うずくまるワルターの元。


「ワルターに発破をかけた。先程までの無様な姿と思うなよ?」


 その言葉に違わず。

暴力的な速度と勢いは「荒々しい」を通り越し、猛獣そのもの。

対応できないタキオンに飛びかかるワルター。猫がネズミを襲うように、

そのままタキオンの体を切り裂く。


「ッ!!」


 ハサミで指をうっかり切ったような、そんな痛み。

それを指から胸部全体に移し替え、広がったもの。

目に見える裂傷こそないが、タキオンが感じる痛みに嘘偽りはない。

歯だけでは受け止められない。目と顔を食いしばり、

歪ませながら、背中で体を包むように姿勢を倒す。


「大丈夫、血は出ないから!」

「違う、痛いんだよ…」


 ゲッシーの何処かズレたフォロー。

全くそれどころではないと、痛みを堪えつつも物申す余裕。

タキオンにはまだ、立ち上がるだけの力が確かにある。

何も、ルミナキャストの力が優れているからではない。

ゲッシーは不安そうにタキオンの顔を覗き込むも、予想外にタキオンは微笑んでいる。

バカみたいかもしれないけど、と言うのは、彼女が述べた前置きだ。


「今、すごくワクワクしてるんだ」


 昨日、ゲッシーに遭った日の夜。

ヨシノがステッキを振り回しながら考えていたのは、かつてのヒロインのこと。

自分がそうなったら?自分が誰かを守る立場になっていたら?

少なくとも、大好きだったヒロインのように戦いたい。

理由は単純、そうじゃないと格好が付かない。誰も守れないから。


「フフフ…なかなか優秀な奴をルミナキャストに選んだようだな」


 仮面の男がその戦いっぷりに感心する。ヨシノが内心で回顧しつつも、

タキオンとワルターの攻撃の応酬は続く。ステッキを盾がわりにして、

不定形の拳を受け止める。そのまま懐に潜り込み、地面に背をつけワルターを蹴り上げる。

柔道で言う巴投げ。タキオンは道路にワルターを思い切り投げ込んだ。


「逃がさないよ!ワルター!!」


 大きくなったらヒーローになりたい。ヒロインになりたい。

小学校に通う前にほのかに抱く、そんな将来の夢。

今のヨシノはその頃の気持ちに回帰し、それを叶えている。

その勢いのまま、タキオンは一飛びで放り投げたワルターのもとへ。

そして、その付近にはゆっくりと歩くお婆さん。

状況を飲み込めていないのか、特に意に介さず。

それに気付かない仮面の男ではない。


「ワルター…ここはひとつ、その年寄りを攻撃しな」

「ウソだろ!?やめろ!」


 タキオンよりも先に、声を荒らげるゲッシー。

独りで戦うなら余計なことは考えなくてもいい。しかし、人質がいたら?

庇護すべき対象がいたら?傷つけないフォローが必要となる。

即ち、戦況は先程までと比較しても一気に不利になる。これが仮面の男の戦略だ。


「ダメだ!まだタキオンは戦いを始めたばかりなんだぞ!絶対にそのお婆さんが傷つく!」

「フフフ…お前はわざわざ敵が強くなるのを待つのか?」


 更に焦るゲッシーと、それを嘲笑う仮面の男。

確かに、私はまだ今日初めて変身したし、今が限界じゃないのかも。

タキオンも一瞬、そのように仮面の男に対して同意しかけるが、今は老婆の命の危機。

そして、意にも介さず攻撃を仕掛けようとするワルター。

距離があり、間に合わないかもしれない。そんな中、

タキオンが駆けると同時に、ゲッシーが叫ぶ。


「カット!」


「コンプラ的にまずいって!」

「え?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。