第7話「直接対決!ヨシノVSムジカントム」 Aパート①
いつものガルニエの暗いステージの上。
スポットライトに当たりつつ、ムジカントムは華麗に舞う。
自らの得物であるナイフを巧みに操り、
サンドバッグ替わりのマネキン人形を、爽快なまでに真っ二つに。
「見事ね。褒めてあげるわ」
「見映えだけの男ではないようだな」
エゴシックとハラガヘッタも彼の演武に感心する。
そんな両者を嘲笑うか、或いは自身の姿に酔いしれたか。
白い仮面の隙間から、相も変わらずフフフと笑うムジカントム。
間髪入れず、お前達は円卓の騎士を知っているか?
と、その仮面の奥から二人に問う。ムジカントム曰く。
イギリスの有名な騎士に倣った「十二の剣技」を見出したと言う。
文学青年気取りか?と嗤うハラガヘッタに、
その技にも何かしらの名前があるの?と尋ねるエゴシック。
ムジカントムはナイフの柄を回しながら、その名を示す。
「フフフ…トリスタンクラッシュだ」
単語の組み合わせが些か噛み合っていない気もするが、
この荒々しい威力を見る限りでは、「壊す」技…
すなわちクラッシュとした方が相応しいのかもしれない。
エゴシックはそう納得し、ハラガヘッタもマネキンの切断面を見て、
その雑に紙を引き裂いたかのような、強烈な膂力に対して不敵に笑う。
「これくらいで感心してもらっては困るなあ…坊や」
ただ一言、ハラガヘッタを戒めると共に背を向けて、闇に溶けていった。
こんな人形は試し斬りの材料にすぎない。ムジカントムの狙いはただ一つ、
ルミナタキオンの必殺バリア・タキオンフィールドだ。
「ゲッシー。よくやっているようだな」
「ありがとうございます、師匠!」
いつぞやの犬の顔の老紳士。ゲッシーの師匠たる、
魔法素粒子界の錬金術師。度々引き合いに出す人物とは、
どうやら彼のようだったらしい。今は大事な話だと、
ヨシノを他所に、タブレット越しに師匠との通話を行うゲッシー。
名演技ですわ。若干の皮肉を込めつつ。電子書籍の漫画を読みつつ。
ヨシノは蚊帳の外のようで、最重要事項を聞き逃がさない。
「ルミナストーンを総て嵌め込むことで、ルミナボックスは真の力を得る」
先日、ルミナストーンの力を借りて放った、色彩に満ちたタキオンフィールド。
ルミナボックスに当て嵌めるパーツが如く。必要な石を全て揃えることで、
あの力を常時開放できるようになるらしい。例えるならば、
今のルミナボックスは接触不良。好きにオンオフできない、ということになる。
確かに、奇跡の力ではあるのか…。尺という身も蓋も無い理由を以て、
戦いを切り上げられたヨシノとしても、いつになく好奇心が刺激される。
「私も、集めるの頑張ってみようかな」
しゃくしゃくもまた動けるようになるかもしれないしね。
共に駆け回ったハムスターのぬいぐるみに語りかけながら、
ヨシノは目下の目標たるルミナストーン集めに向かって、奮起する。
そんな中、通話を終えたゲッシーに対して、唐突な話題転換。
「ゲッシー。タキオンフィールドを強くしたいんだけど」
えっ、と驚くゲッシー。こんな提案に至るほどに、
自分の相棒にやる気があるのは嬉しいところだが、
何をどう強くすればいいかというのが、
ゲッシーとしてもイマイチ分からない。
「タキオンフィールドを鍛える特訓をしたいんだよ」
分からないなら教えてあげる。更にヨシノは持ち掛ける。
自身の偽者、イーヴィルタキオンが放った、ネガ・タキオンフィールド。
それと相対し、未熟さと無力さを肌で感じた。だから、
今のままじゃいけない。タキオンとして高みを目指したい理由を、
賢界の用意したイレギュラーを引き合いにプレゼンする。
「鍛えるって言っても、何をするのさ」
「そうだね…もっと自由に出せるようにしたい」
チュウカソバンと戦った少し前、同級生と一緒に、
ボウリングで遊んだことを引き合いに出すヨシノ。
ゲッシーも、ボウリングか~と納得したように頷く。
いやそれは知ってるのか。宇宙に漂う地球の文化の偏りに困惑しつつも、
説明を省けたことの方に喜ぶことにしつつ。
ボウリングにおいて、真正面からピンを倒す以外にも、
跳ねるピンの反射で連鎖して倒す方法もあることを見出した。
それ故にヨシノは、タキオンフィールドでも似たような事が出来ないか。
そう考えたのである。
「タキオンフィールドをもっと小さくしたい」
具体的には?と聞くゲッシーに対しての、その回答。
小さくなるんじゃ弱くなるだろ、と当然のように反論するものの、
ヨシノはそうではない、と言う。例えば、大きくも小さくも出来るのなら?
ゲッシーはイマイチ、ピンと来ていないようだが、
相対する彼女の表情は自信に満ちたもの。
言われるがまま。ゲッシーはタキオンフィールドの出力調整について、
どのような修行をすればいいか考える。
「ゲッシーも知らないか…」
思いつかず。元々、ゲッシーが行うサポートとは、
「こんな技が実はあるよ」といったアドバイスの類ではない。
新しいアイテムを持ち出したり、古文書を翻訳するといった、
戦闘にあまり関連しない事項が多数である。
高速移動を成せるゲッシードリフトも、役割が似たタキオンシフトがある以上、
ヨシノが積極的に覚える必然性はあまり無い。
どうしようかなあ…。眉をひそめながら、ヨシノにとって見覚えのないカードを、
クッションを枕にしたゲッシーは取り出し、天井に掲げる。
「そのカード何?」
「ああ、これか…日本語で書いてあるからヨシノも読めるんじゃない?」
杜陵の地
レンタルショップの
カードコーナーのストレージで
レアカードが眠るであろう
温泉施設でルミナストーンを回収する際に、
隠し持っていたカードパックから出てきたレアカード。
ゲッシーはそれをヨシノに渡しつつ、
ヨシノの方は知らない単語に対して、
スマートフォンで撮影、検索しつつ。
「杜陵ってこれ…盛岡じゃん!」
事態は急変。岩手県盛岡市。
この地こそ、草之根ヨシノの囲碁部仲間の同級生が、
家庭の事情、父親の人事異動で転校した先の土地なのである。
向かう理由があるなら今すぐ出向きたいところではあるが、
今はタキオンフィールドの強化が先決。ヨシノは盛岡へ行く秘策を画策しつつも、
鍛え方の宛の無さに頭を悩ませる。が、それも束の間。
ゲッシーが自前のタブレットの画面をヨシノに見せて、
一つの提案を行う。
「タキオンフィールド、ずっと出そう!」
「…ずっと?」




