第3話「聞かせてください!心の音色・ルミナテレパス」 Bパート③
「ゲッシー!ワルターの作り方どうにかできないの!?」
「ちゃ…ちゃんと致命的な事故などに繋がらないセーフティは敷いてるから」
ワルターを撃破した早々、ゲッシーは詰められる。
仮にも素材は街の人。無関係の市民を巻き込んでいる。
命を取るとかそう言う問題じゃないの。そうヨシノは怒り続けるものの、
ゲッシーとしても、突然設定を変えるわけにもいかないと、
弱々しくも引き下がる気配はない。なら、近い将来にでも、
ワルターに代わる新しい敵を用意しなさいと、ヨシノは更に詰め寄る。
「善処するよ…」
ゲッシーが辛うじて絞り出した一言。本当だろうかと訝しむも、
刃を向けるようなその剣幕を、ひとまず鞘に収めるヨシノ。
今までの様子を見る限り、ゲッシーの権限も限定的なもの。
いわば中間管理職のようなものかもしれないと、
怯える小動物そのものの、彼の辛そうな表情を見て考える。
「あれ、俺何してたんだっけ」
道端に倒れていた、スーツの男が立ち上がる。
タキオンがそれとなくワルターを誘導したこともあり、
戦いが繰り広げられていた傍らではあるが、特段、負傷などはしていない。
そんな世界観を知る由もなく、男は自分の状況に困惑。
路上で倒れるのは流石にまずいだろう。過労を疑うが、
むしろその体は活力に満ちている。
「理由から目を背けない、か…」
彼は所謂、就職浪人。切羽詰まった状況に絶望していたが、
誰かに励まされた夢を見たことを思い出す。書類選考はともかく、
面接での自信のなさが敗因であると、自身を振り返る。
もう少し資格を取るか。強みがあった方が、自信になるから。
そんな事を考えながら、勢いよく立ち上がり、この場を去る。
その歩く足取りは瑞々しい。
「凄かったわね、ルミナタキオン」
「フフフ…何だお前、素直に人を褒めるような事があるんだな」
ペルソナクスの根城たる、何処かの劇場。
エゴシックの素直な賞賛を聞き、思わず嘲笑うムジカントム。
そう言うと思った、と言わんばかりに彼を見つめるエゴシック。
私にだって人を褒める事はあるの。彼女は笑いながら訂正する。
「いずれにせよ…ルミナタキオンを先に始末するのは俺だ」
「好きにしなさい、出来るものなら」
出来るさ、お前には先を越させない。仮面の表情は変わらずとも、
確かにそう訴えかける。「世界よ、我が書割たれ」がモットー。
自分だけが本物の役者でいい。そんな存在意義を自らに刻んだムジカントム。
この仮面の男にとって、眼前の女が何に心を動かされ、
何を否定するのかはまだ未知数。いつもの笑い声を、
その仮面から変わらず漏らしつつも、ひとまず話題を切り上げる。
「就職活動かあ…私はまず高校受験だけど」
ゲッシーの帰還にワルターとの戦い。予想外の紆余曲折を経て、
抜け出した学校になんとか戻りつつ。
その日の授業を終えて、今日も図書室で本を手に取るヨシノ。
自分の部屋だと物が多くて気が散ると言う理由から、
図書室で済ませて、あまり借りない主義である彼女。
「ルミナタキオンが内申点になるわけでもないしね…」
対策は早い方がいいのは確かだが、気が早くもある。
しかし、就職活動で悩んでいたであろうお兄さんを思い出し、
将来について少し考える。そんな彼女が手に取っているのは、
漢字検定の参考書。たまには借りて、家で勉強してもいいのかもしれない。
そう思いつつも、結局その日はノートに写して勉強する程度。
「ただいまー」
「おおヨシノ、おかえり」
本を借りずに帰宅したヨシノ。
珍しく、自分よりも早く帰宅した父親が居間に座っている。
パパ早いね!と驚くヨシノ。娘と同様、父もまた嬉しそうだ。
元気そうな父との話の流れで、自然と定時退社の理由の話題になったが、
なんでも、社内システム担当がボトルネックになっていた箇所を発見。
そのまま修正したところ、システムの処理速度が一気に向上。
今まで要所要所で時間を割いていた部分がスムーズに進み、
作業効率が一気に向上したらしい。
「よく分からないけど…よかったね」
ヨシノの知らぬ分野。あまりにも不器用な回答だが、
満足そうな表情が込められた感情を代弁している。
また、不思議なことに「誰が見つけたのか分からない」のだと言う。
件の社員も該当箇所と工程が示されたメモ書きが付箋として貼られており、
そこから導き出したと言うのだが、複数人ほど部署に担当者がいる中で、
誰もそのメモを書き示した者が名乗り出ない。
「ハムスターのシルエットのメモって言ってったけなあ」
父がふと零した内容。メモ用紙のデザインなど、
本来、ヨシノにとっては極めてどうでもいい情報。
しかし、それを聞いてヨシノは確信する。
ゲッシーである。
「帰ったよ、ゲッシー」
草之根家にバレないよう、要所要所でぬいぐるみに擬態しているゲッシー。
今もヨシノの部屋に飾られたぬいぐるみに紛れて、
物言わぬ人形であるかのように、不動でほほ笑む。
横目で激しく視線を向けながら。
それでも、ヨシノは何も言わない。
「(私を騙して働かせたんだもの)」
ルミナキャストに無理やり巻き込んだ仕返し。
感謝の言葉を今か今かと待ちわびるゲッシーには目も向けず。
しかし、確かにヨシノの口元は微笑んでいる。
私、草之根ヨシノ!
寝ても起きても、ゲッシーに振り回される日々。
久しぶりに凪と遊ぶことになったけど、そんな日でも
ルミナキャストとして頑張んなきゃいけないみたい。
レンタルショップの中古コーナーに眠る、
新たなアイテムを探しに行くよ!
次回、「ヨシノの休日!ストレージに眠る叡智」
届ける想いは光を超える!




