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第4話 午後実習① 初回迷宮入場

 第4話 午後実習 初回迷宮入場 ①


 新人講義を終えた僕たちは、昼休憩をはさみ、貸し出された新人防具に着替えて、探索者ギルドの裏手――いや、正確には建物の中央にある中庭へ案内された。


 ギルドを上空から見ると『ロ』の字の形をしていて、その中央にある中庭は外界から完全に遮断された閉ざされた空間だ。


 そして――その一角に、それはあった。


 ――ダンジョンゲート。


 宙にぽっかり浮かぶ黒い渦。まるで空間そのものが裂け、向こう側が別世界へとつながっているかのような異様な存在感。風はないのに、ゲートの周囲だけ空気がざわりと揺れている。


 小恋路が僕の手をそっと握った。指先の震えが伝わってきて、僕も自然と握り返す。


 小恋路は僕を見上げ、かすかに唇を噛んで言った。


「正直に言うとね……怖いよ。でも、翔太が隣にいるなら、大丈夫って思える」


 中庭の空気はひんやりと冷たく、肌にまとわりつく。小恋路の肩が小さく上下しているのが見える。


「大丈夫。手、離さないから。震えててもいいよ。俺もブルブル震えてるし」


 僕の言葉に、小恋路は小さく頷いた。その仕草が胸の奥にじんわり響く。


「手……あったかいね。ちょっとだけ、怖さが薄れた気がする」


 怖いはずなのに、不思議と心が落ち着く。小恋路のせいなのか、この状況のせいなのか――自分でもよく分からない。


 小恋路の防具姿は、どこから見ても新人だと一目でわかる。赤で統一された胸当てやパッドが、小柄な体をしっかり守っている。僕ら男性陣は青で統一されていて、色分けは指導員への配慮だろう。


「怖くても、ちゃんと前に進めるんじゃないかな。デコボココンビの僕たち二人一緒なら。ま、何かあったら、僕は小恋路の後ろに隠れるけどね」


「そこは、わたしを守るために、敵に玉砕覚悟の特攻を掛けるところじゃないの? そうじゃないと、わたし生き残れないじゃない」


「え、最後まで一緒っていうのかと思ったら、さすがは小恋路さん。その結構な打算家ぶりには、まじで見惚れちゃいますよ。悪い意味で」


「うん、もうどうしようもない時には、必殺の翔太ミサイルを発射するから、ちゃんと、その心構えだけはしといてね」


「うれしいなー。うれし涙で視界が曇ったから、一度、家に帰りたいんだけど」


「だーめ。もう逃がさないから」


 そんな感じでお互いに軽口を叩きあいながらも、内心はざわついていた。


(思ってたより、ずっと怖いや)


 VRWWORPGゲームじゃ味わえない感覚なのは間違いない。

 まさにこれが本物の探索者の世界、それをいま僕は感じている。

 他のみんなの様子が気になったので、背後に振り返り仲間を見渡してみた。


 マリアは扇子を胸元に当て、震える声で呟く。


「黒い渦が……呼んでいるようでありんす。でも同時に、拒んでいるようにも見えるでありんす……」


 舞台演劇の主人公になったようなセリフ回しに、舞台に情熱を注ぐマリアの本気を垣間見た気がする。


 ただ、今日は新人研修だということをマリアはわかっているのか、はなはだ疑問が浮かぶけど、そこは敢えてスルーした方が良さそうだ。


 続いて、武田の方に目を向ければ、興奮気味に叫ぶ様子を目にする。


「うおおお! 憲政、あれ見ろよ! 本当に宙に浮いてるじゃん! 早く始まんねえかな。俺、一番乗り目指してもいいか!」


 上杉が冷静に突っ込む。


「お前、この中で一番ガキみたいに騒いでる自覚しろ。まず周りを見て落ち着け、脳筋」


「分かってるけど構わねえ! 俺はテンション上げてくタイプなんだよ!」


 胸を張るが、声は裏返っている。


「威勢だけは一人前だな。中身が伴えばいいんだが」


「なんだとー!? やるか?」


「近づくな。両手をワチャワチャさせるな。暑苦しい」


「いいじゃねえか、俺達友達だろ。旅は道連れってやつだ!」


 いつもの二人だ。緊張しているはずなのに、こういうときでも変わらない。


 と、そこに――


「静かにしろ」


 鬼塚の一喝が中庭の空気を一瞬で引き締めた。


 鬼塚が前に立ち、新人たちを見渡す。視線は鋭く、いつも以上に威圧感がある。武田と上杉も、さすがに黙った。


「全員、注目。これより初心者ダンジョンへの初入場を行う。まず最初に言っておく。ここから先は遊びじゃないぞ。食うか食われるかの弱肉強食の世界だ。足を踏み入れた以上、その自覚を持て。気を抜くな。集中しろ」


 新人たちが息を呑む。


「これから向かうのは、ギルドが“新人用”に管理している安全なダンジョンだ。中堅探索者からすれば、欠伸が出るレベルだぞ」


 鬼塚は指を折りながら続ける。


「毒矢も呪いも出ねぇ。罠もねぇ。宝箱もねぇ。遭難もあり得ねぇ。状態異常もまず起きねぇ。出てくる魔物も雑魚ばかりだ。最奥のボスが復活すれば、すぐに討伐している」


 新人たちの表情が少し緩む。


「だから極度の緊張は体力の無駄だ。まずは心を落ち着かせろ。それができたら、冷静さを保て」


 そう言いながら、鬼塚はゲート前で準備運動を始めた。背伸び、屈伸、肩回し――動きに無駄がなく、まるで儀式のようだ。


「身体が強張ってると、いざというときに足を引っ張る。後で後悔しても遅い。しっかり身体をほぐしておけ」


 新人たちは一斉に身体を動かし始める。腕を回し、足を伸ばし、深呼吸をする。


 武田は胸をなでおろしながら呟いた。


「な、なんだ……意外と普通なんだな……もっと軍隊みたいに怒鳴られるかと思ったぜ……」


 上杉が冷静に返す。


「お望みなら、俺が指導員に頼んできてやるぞ。“武田新之助を軍隊式で鍛えてください”ってな」


「待て待て待て! 落ち着けって!」


 上杉が本気で歩き出そうとしたので、武田は慌てて羽交い締めにした。


「おい、こら、やめろって! それより見ろよ、あそこ。あの連中、俺らよりちょい上くらいの探索者に見えるんだけど……まさか一緒に入るのか?」


 耳元で大声を出され、上杉は顔をしかめる。


「息が近い。離れろ。あれは新人実習クエストを受けた探索者パーティだ。クエストボードに貼ってあっただろ」


 確かに、五人一組のパーティが四つほど、少し離れた場所で待機している。談笑している様子からは、緊張感はほとんど感じられない。


「ああ、あれか……報酬一万のやつな。まあ、こういうのも経験なんだろうな」


 そこへ、小恋路が会話に加わる。


「こういうコツコツしたクエスト受けると、受付嬢からの印象が良くなるんだって。それに、探索者ランクを上げるには、ギルド指定のクエスト達成数が必要なんだよ。って兄さんが言ってた」


 その言葉に、僕はふと気になって口を挟む。


「そういや最近、優斗兄さん、うちに来なくなったな」


 朝倉家と八神家はお隣同士で、家族ぐるみの付き合いが深い。小恋路とは幼馴染で、二歳年上の優斗兄さんは昔から何かと口を挟んでくる。僕の一つ下の妹――美穂は優斗に好意を持っているし、僕と優斗兄さんは仲が良いのか悪いのか分からない微妙な関係だ。


 小恋路が続ける。


「探索者養成学校の二年生に進級してから兄さん、最近は毎日パーティ仲間とダンジョンに潜ってるよ。帰ってくるの、だいたい深夜だし……ていうか、あれ? あそこで手振ってるの、うちの兄さん……だよね……はあ、そうきたか……」


 よく見れば、銀髪に染めた優斗兄さんがこちらに向かって爽やかに手を振っていた。流石はシスコン。どこにでも現れる。


 マリアは扇子で口元を隠しながら言う。


「……あれが小恋路ちゃんのお兄さんでありんすか。なかなかの美形さんでありんすねえ。機会がありんしたら、ぜひ紹介してほしいでありんす」


 小恋路は照れくさそうに笑い、頷いた。マリアの頬がほんのり赤い。


(またかよ。この天然ジゴロ兄貴め)


 そんなこんなで、僕らはなかなか真剣モードに入りきれない。違う角度からの“シスコン監視員”が増えたことに、思わず溜息が漏れる。


 気を取り直して準備運動を再開すると、周囲の空気も少し緩んで、ざわざわとした話し声が耳に届く。


 その空気を察したのか、準備運動を終えた鬼塚が再び声を張り上げた。


「よーし、注目!」


 一瞬で場が静まる。


「そろそろ身体も温まってきただろ。少しだけ、午前中の講習のおさらいをするぞ」


 鬼塚はゲートを指差した。


「これから向かう初心者ダンジョンは、“歩く・戦う・帰る”を覚える場所だ。死ぬような仕掛けはねぇ。だが――」


 新人たちが息を呑む。


「新人が初回入場した瞬間、大量の魔素を浴びた結果として発現したジョブ・スキル・魔法が“仮確定”する。脳内にステータス音声が聞こえたら、それがサインだ。ここまでは慌てる必要はない」


(音声……本当に聞こえるのかな……)


 鬼塚は続ける。


「だがこの先、勝者と敗者を分ける厳しい現実が待つ。勝者はダンジョンに受け入れられ、探索者の道が開ける。敗者はダンジョンから弾かれ、探索者の道が絶たれる。敗者になると、魔素アレルギー反応が出る。短時間で鼻血、充血、冷汗、震え、酔い、症状は様々だ」


 小恋路が僕の手をぎゅっと握り直す。


「翔太は大丈夫だよ。ここぞという時、運がいいから」


「うん、うん。そうだといいんだけど。ただ、今日の運勢、大凶だったからなあ」


 励ましの言葉をくれた小恋路に、僕は満面の笑みを向ける。偶然とはいえ「運」と「うん」を掛けた親父ギャグが炸裂して、彼女はクスッと笑った。ありがと。面白くないのに笑ってくれて。


 鬼塚は続ける。


「拒否反応が出た新人は退出させる。だが、そこで癇癪を起こす奴もいる。そういう輩は、向こうにいる探索者パーティに拘束してもらう。講習の妨害は許さん」


 場が再び引き締まる。


 その後、数人の新人が質問し、鬼塚が淡々と答えていく。


 まとめると――


 ・名前を呼ばれた新人は、探索者パーティに囲まれて入場

 ・入場後、ゲート近くで体調チェック(約5分)

 ・問題なければ広場へ移動し待機

 ・全員揃ったら“石碑”へ移動し説明

 ・その後はダンジョン安全地帯で自由訓練

 ・夕方四時からジョブ・スキルの実践

 ・六時で講習終了


 こうして、僕らの初ダンジョン入場は、いよいよ目前に迫っていた。


 ◆◇◆◇◆◇


 鬼塚の説明が終わると、新人たちは名前を呼ばれる順に探索者パーティに囲まれてゲートへ向かっていった。受講者三十人のうち、すでに十二人がゲートをくぐった。そして――四人が脱落した。


 彼ら彼女らは全員、魔素アレルギーを発症して戻ってきた。鼻血を垂らしながら肩に担がれて戻る者、顔面蒼白で吐き気を堪える者、震えが止まらず膝から崩れ落ちる者、口から泡を吹いて失神している者。探索者パーティが担架に脱落者を乗せて運び出し、医療班へ引き渡していく。


 中庭の空気がひやりと冷たく沈んだ。


 鬼塚がその空気を察し、待機している新人たちに向けて声を張った。


「症状が出た新人は全員、速やかに救急搬送されてギルド指定病院に向かう。まだ報告がないから、ステータスウインドウを開いた奴は一人もいないはずだ」


 鬼塚は腕を組み、淡々と続ける。


「気の毒だが、これも運命だ。だが安心しろ。魔素吸引カプセルに一週間入れば、元通りに日常生活を送れる。悲観する必要はねぇ」


(午前中に“ダンジョンに弾かれる奴もいる”って聞いたけど、本当に目の前で起きるんだ……)


 友人の心配で下を向いていた数人が、鬼塚の言葉に顔を上げ、静かに頷いた。


「彼等彼女等の親友や友達がいるなら、後でちゃんと見舞いに行ってフォローしてやれ」


 その言葉に胸が少し締め付けられる。


(もう四人か。こんなに出るものなの……?)


 さっきまでうつむいていた何人かは顔を上げたが、大半の新人は表情が強張ったままだ。


 小恋路が僕の手を握り直す。思い返すと、今日はずっと手を繋いでいる気がするが、それだけ心細いということなのだろう。


「翔太……わたし、どうにかなっちゃいそう、ホントに凄く怖い……」


(励ます言葉が出てこない……頭が真っ白だ……)


 何か気の利いた一言が浮かべばいいのに、心臓は早鐘を打ち、喉も乾いている。


 だからこそ、こんな時こそ空元気でも前に出るしかない。誰かの心を少しでも軽くするために――なにより、小恋路を笑わせたい一心で。


「僕も正直いうと死ぬほど怖いんだよね……だからさ、本気のしりとり、しよっか」


 僕は深呼吸して声を張った。


「えっ、なにそれ!? どういうこと?」


 小恋路は不思議そうな目で僕を見た。僕は仲間を呼ぶ。


「おーい、新之助、憲政、マリア! こっち来て! しりとりゲームしようよ!」


 三人は渋い顔をしながらも集まってきた。

 僕は霧の中で胸を張り、バカ騒ぎして緊張を解くために考えてた、しりとりゲームのルール説明をし始めると、


 武田からは「おい翔太……こんな時に何言ってんだよ……」と突っ込みがまず入り、上杉は冷めた顔で「くだらない」と一言返したが、続けて「……だが、少しは気分が紛れるかもしれない」と付け加えた。


 マリアは頬を赤らめて俯きながら、「あ、あたしは……恥ずかしいでありんす……」と小さく漏らす。


 それでも僕は「こんなことできるのは、若い時だけだから」と押し通し、笑いをこらえつつ、『中二病必殺技しりとりゲーム』のルールを噛み砕いて説明した。


 要点はこうだ――


 中二病ぽい必殺技を叫ぶ、しりとりゲーム。

 空想の必殺技を叫ぶ前か後に空想の武器を構えたポーズを決めること。

 語尾が「ン」で終わる技は失敗扱いで、他者からの反撃演技を受けて倒れること。

 対戦相手に対して同じ必殺技は使えない(気づかれなければセーフ)。

 倒れたら演技で30秒気絶して、その間は復帰できない。

 最後まで残った者が勝者。

 一番勝ち越した勝者には、あとで缶ジュースか、コンビニレジ前商品を奢ること。


 というシンプルなサバイバルルールだと説明すると、


 武田が思わず「なんだその地獄みたいなルール!?」と声を上げ、

 上杉は苦笑混じりに「くだらなさの極みだな」と評した。

 マリアは意地を見せるように「でも、やるからには負けたくないでありんす……!」と小さく宣言し、小恋路も「翔太、ちゃんとフォローしてよね……!」と期待を寄せる。


 説明が終わると、最初は渋っていた三人も、周りの暗い空気に飲まれたままでいるのは何か違う、そう感じたのか、それとも、こんなときこそ元気に振舞うべきと僕の考えに共感してくれたのか、本人たちの本心まではわからないけど、次第に表情を緩め、なんだかんだ言いながらも乗り気になっていった。


 霧の中で僕らは互いに目を合わせ、ぎこちない笑いを交わしながら、いつの間にか本気で遊ぶ準備が整ってきた。


(よし、みんな乗ってきた。これなら怖さも少しは紛れるはずだ)


 霧が薄く揺れる中庭の中央で、僕は空気ダガーを構えた。


「じゃあ、最初は僕からいくよ! 新之助くらえ!! “百式炎舞ッ!!”」


 ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ――


 周囲の新人たちが「あれみろよ……なんか変なこと始めてるぞ」とざわめくが、今の僕たちには関係ない。恐怖に打ち勝つため、困難に立ち向かうために、心に夢を描く。これも青春の一ページだ。


 武田の目がギラッと光る。


「なら俺は――“武神シールドォォォ!!”」


 上杉が静かに前へ出る。


「“ドミネイト・サンクション”」


(……“ン”!!)


 僕は即座に指をさした。


「上杉、アウトー!」


 武田は空気ハンマーを振り下ろし、上杉は大げさに倒れて血を吐く演技まで披露する。周囲から笑い声が上がる。


 その様子を見ていた新人たちが次々と集まってくる。


「なにあれ……」「演技するしりとりだってさ」「斬新ね」「緊張をほぐす準備体操みたい」「面白そう」「俺、試しに混ざってくるわ」「私もいく!」


 空気が少しずつ穏やかになり、ギルドの中庭に笑いの芽が息吹き、やがて輪になって広がっていく。


 しりとりは加速し、広場のあちこちで本気のチャンバラ世界が繰り広げられた。空気剣、空気槍、空気魔法が飛び交い、みんな本気で叫び、本気で倒れ、本気で笑っている。


 そこへ、なぜか優斗兄さんが勢いよく前に出る。


「これで終わりだ!! シューティング・レイザー!!」


(“ザ”!? 強い……!)


 別の新人が続く。


「やられるかよ。お前こそ俺の渾身の必殺技、受けてみろ……ザ・オーバーロード・テンペスト!!」


(“ト”!)


 武田が負けじと叫ぶ。


「優斗さんを死なせるものか。喰らえ――トライ・ブレイク・インパクトォォ!!」


(“ト”返し!?)


 薄く立ち込める霧の中で、演技の戦場は白熱する。もちろん全部演技だが、新人たちは本気で楽しんでいた。


 小恋路も笑いながら叫ぶ。


「“フロスト・レイン”!!」(……“ン”!!)


 武田が大げさに叫びながら反撃の構えを取ると、小恋路は慌てて手を振って、


「ひゃっ!? ちょ、ちょっと待って!! 翔太……ごめん……わたし、先に行くね……」


 と慌てた声を漏らした。

 武田は空気大剣を振り下ろす演技をし、小恋路はふわりと倒れ込むように演技した。


(かわいい……)


 その様子を見た優斗兄さんが怒りの声をあげる。


「おのれ――小恋路を……貴様、許さんぞー!!」


 本気の怒りを前に、武田は慌てながらも弁明の言葉を並べていく。


「え……ちょ……八神の兄さん、ごめんなさい、誤解だし、ちょっと話をきいて……まずは、本物の剣は収めてくれ……それやられると、俺、ホントに死ぬから」


 必死に制止しようとする武田を加勢したのは、倒れている小恋路だった。


 小恋路は、顔を上げると「兄さん……空気読んで……!」と苦笑混じりにたしなめた。


 いつの間にか中庭は別世界のようになっていた。

 緊張と恐怖に支配されていた空気は、いつしか未来へ挑む純粋な熱気に変わり、探索者ギルドの一角だけが新人たちの笑い声と必殺技の叫び声で満ちている。


 鬼塚は腕を組んで呆れたように眺めていたが、止めはせず、口元がわずかに緩んでいるのを僕は見逃さなかった。


 そのとき、場内に名前が響いた。「――八神 小恋路!」と呼ばれ、


 小恋路はビクッと肩を震わせる。彼女は僕に向かって小さく笑い、


「翔太のおかげで、ちょっとバカっぽくて、ちょっと笑えて、少しだけ怖くなくなったよ。ありがとね。先に行って待ってるね」


 と言い残し、探索者パーティに囲まれてゲートへ向かっていった。


 後ろに銀髪の男がひょっこり混ざっているのを見つけると、


 (優斗兄さん……さっき混ざってたよね……まあ、見なかったことにしよう)


 僕は心の中でそう呟いた。


 小恋路はゲートの前で深呼吸し、振り返って僕に小さく手を振った。

 僕もゆっくり手を振り返すと、彼女は黒い渦の中へ消えていった。


 それから一分もしないうちに、僕の名前が呼ばれた。「――朝倉 翔太!」と。


 仲間たちが僕の背中を押してくれる。

 武田は元気よく「行ってこい、翔太!!」と声を張り、

 上杉は落ち着いた口調で「慌てるなよ。お前なら大丈夫だ」と言い、

 マリアは少し照れながら「ご武運を……でありんす……!」と声をかけてくれた。


「ありがと、みんな。じゃあ、いってきます」


 僕は深呼吸をして、黒い渦へと一歩を踏み出した。


 応援よろしくお願いします!


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「この後一体どうなるのっ……!?」


 と思ったら


 下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


 面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


 ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


 何卒よろしくお願いいたします。

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