ルマの商い記 -20-
定食屋の中に入ると、夕食時とあって盛況のようだ。
4人がけのテーブル席が5席と小規模ながら座席は満席。
中で立って待っている人も数人はいる。
恐らく持ち帰りか何かだろうか、店内の厨房付近に居る。
ルマはその店の様子を手元の紙に細かく記録している。
一通りの記録を終えると、ルマは画板を鞄にしまった。
そして入り口付近に立って座席待ちをする。
各のテーブルには別々の料理が並んでいる。
ひとつには肉料理が、別のテーブルには魚料理。
どうやらこの店はメニューに縛りをもたない店のようだ。
これは夜市場では珍しい部類に入る。
夜市場の性質上、翌朝には営業を終えてしまうまでに店の商品を売りきらなければならない。
そのためには、メニューなどを絞って一本化してしまう方が効率が良い。
そういった背景からか、夜市場のほとんどの飲食店はテーブルに並べられる皿には同じものが並べられている。
そんな中でルマの入った店は昼間の市場のように特殊では無い飲食店の形態を取っている。
夜市場の独特のぎらぎらした空気感の中にあって、どこかのどかな空間がそこにはあった。
そして何より、この店が他の夜市場の店と違って店舗を構えている。
夜市場の性質上、その殆どの飲食店は露店や屋台を出してはその晩のうちにいなくなる。
それがこの店は店舗を構えている。
それはつまりこの店が闇営業を行っているわけではないということだ。
国営市場の近隣では店舗を構えての営業については市場内と比べて厳しい条件があるという。
その背景には国営市場という場所の近所で国営市場同様の営業活動をされることによって治安が保たれなくなることを懸念しての事だという。
その理由は至極正当であるため、誰も文句は言わない。
しかしながら、その近辺に住んでいる住人や地元の商人たちも生活をする必要がある。
そうした背景から生まれて来たのが、夜市場というわけだ。
だから夜市場は一夜として同じ構えの店はいないという。
必ずどこかの店が違っているらしい。
だが、長年こういった場所で続けている店もあるので、大抵の場所は先人が確保して住所が決まっている。
そこに割って入るには相当の努力か、あるいは非正規の手段を用いているのだという。
ここで言う好立地とは、国営市場の近くが一番で、それに続いて国営市場から離れた国営宿の近所、といった具合だ。
何にせよそういった好立地は早い者勝ちであるため、昼間は寂れているのに人だけがいるというやや不気味な光景になっていた。
それを国営市場側が登録制としたことで、そこの治安を保っているという。
さらには、登録料名目でしっかりと集金を行うことで税収面でも補助になっており、運営側としては一石二鳥という。




