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This too shall pass  作者: 廿日命日
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2/2

大学一年生 夏

短いです。

  八月。鎌倉の夏は暑い。陽光がアスファルトに反射して、浜辺の砂がせせら笑うように、燃えるように熱い。そんな時期が、夏葉はあまり好きではなかった。正確に言うと嫌いになったのは三年前、高校二年生の夏の所為だ。

 遠くで江ノ電の緑色が見える。高校生まではあれに乗っていた。中等部から乗り続けた、海の見える電車。祖母から乗り続けたあの電車に、今妹は乗っているだろうか。なんて思いながら夏葉はJRに乗った。妹の依織は江ノ電歴三年になる。バスケットボールのおかげか、身長は夏葉を抜いた。最後の県大会は残念なものであったけれど、自分の様に怪我をすることなく終わったので取り敢えずは良かったのだ。すべてを呪いながら最後の夏を迎えるよりは、残念だったねと終わる方がマシだから。と、夏葉は左の膝をちらりと見る。

 高校二年生の夏。夏葉は左膝を壊した。走り過ぎで。他の部員のように部活動に打ち込んでいたわけではなかった。ただ、夏葉は走ることが好きで小さい頃から走り続けてきた。それなりに走る才能にも恵まれ、それなりに体格にも恵まれて、それなりに将来有望な選手ではあった。体育祭などでは毎回リレー選手であったし、校内では間違いなく一番速かった。好きなことが出来る時間が少ない夏葉にとって、走ることは救いであり癒しであることは間違いなかったのだ。

 高等部二年の夏、残酷にも神様はその権利すらも奪い取る。あまりにも呆気なくて、笑うしかなかった。どれだけ神様は私に酷いことをしてくれれば気が済むのかと諦めを含んだ笑みであった。

 それが、三年前の主な出来事のひとつ。もうひとつのことは、夜になると嫌でも思い出してしまう。テトラポットがあまりにも多すぎるこの土地で、きっと忘れることは難しいそれは、夏葉の心を今でも蝕んでいる。

 はっはっはと豪快に笑った口元。僅かに下がる目元。それにクシャッと寄った小さな笑い皺。忘れようとすればするほど、まるで画像編集ソフトで彩度を上げたみたいな嘘くさい薔薇の色みたいな鮮やかさで。


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