♪余章♪ 昔々あるところに。
昔むかし、ある小さな村に、とても仲の良い二人の少年がいましたとさ。
一人は病弱で色白な領主の息子、もう一方は健康で色黒な農家の息子。
二人は身分など関係なしに、いつもある場所で遊んでいました。
それは、竹林で囲まれた静かな場所にある、『賀茂茄子神社』――五穀豊穣と縁結びを司り、古くから村で祀られてきた神社でした。
少年たちはある日、その神社の境内で、親友の契りを交わしました。
「ずっと、親友でいよう。死ぬまで、いや、また生まれ変わってもだ」
そこへ、二人の友情に憧れたもう一人の浅黒い肌に紫色の瞳をした少年が現れました。
快くその少年を受け入れ、親友の契りは改めて三人で契り直すことになったのですが、その時二人は浅黒肌の少年に名前がないことを知ったのです。
そこで色白の少年は彼に名前をつけてあげようと言い出しました。
「キミの名前は『ソラ』だ!」
なぜ? と尋ねる色黒少年に、色白少年は答えます。
「キミの笑顔は、あの空みたいに輝いているからだ」と。
言われてすぐに彼が浮かべた笑顔は、まさしく青空のごとく、清々(すがすが)しいものでした。
けれど、幸せな時間はそう長くは続きませんでした。
もともと身体の弱かった色白少年が、流行り病にかかって亡くなってしまったのです。
そして悲しみに暮れる色黒少年は、ある日一人で訪れた賀茂茄子神社で、ソラの正体を知ってしまいます。
ソラは、賀茂茄子神社の神様が人間姿に変化した姿だったのです。
「どうして、神様ならば、彼を病から救ってくれなかったんだ」
泣き叫ぶ少年に、ソラは答えます。
「僕には力がなかったから……」
その紫色の瞳からも大粒の涙がこぼれました。
けれどソラは、少年と、ひとつだけ『約束』をしました。
「生まれ変わっても会えますように。僕がキミたち二人をみつけて、その縁を結ぶから」
縁結びを司る神様としてソラができるのは、それだけだったのです。
それから、百年、二百年、と永い永い時が過ぎてゆきました。
しかし、二人はなかなか生まれ変わってくれません。
それでも、ソラは来る日も来る日も二人を待ち続けました。
そうしてある時ようやく、二人の少年が生まれ変わりました。
色黒少年の方は偶然にも、賀茂茄子神社の神主の息子として、そしてもう一人は遠く離れた東の都に、やはり色白な男の子で生まれてきたのです。
もちろんその彼らにソラとの記憶はありません。
それでも、ソラは約束を守るため、二人の縁を結ぶため、東へ西へ駆け回ったのです。
しかし、ソラが留守にしているわずかな間に、愚かな人間たちによって、神社は燃やされてしまいました。
それをきっかけに、神主だった色黒少年は神主をやめ、東へと旅に出ます。
そしてとうとう、東の都で、色白少年との運命の再会を果たすと、昔の記憶を思い出したのです。
そこで二人の少年とソラは、みんなで仲良く、小さなお店を開くことにしました。
ソラが大好きなナスを育て、かつて少年だった男たちは、ナスを使ったおいしい料理をたくさんのお客さんに振舞ったのです。
ある日、色黒少年だった青年が言いました。
「ソラというのは画数が良くない。蒼い空と書いて『蒼空』に改名しろ」
色白少年だった青年は笑って、彼の提案に同意します。
「いいね、あの蒼い空みたいなキミの笑顔にピッタリじゃないか」
そうして、『ソラ』は『蒼空』になり、二人の青年に、やがて老人となって命尽きるまで、共に過ごしました。
そしてまた時は巡り――蒼空はまた、二人をみつけたのです。
二階にはソラだった時の思い出と、蒼空だった時の思い出を詰め込んだ書庫と庭。
その下の一階は、また多くの人が笑みをこぼす、カフェにしよう。
「俺様の名前は、蒼空。蒼い蒼空と書いて、蒼空っていうねん!」
蒼い空の下、二人の縁を結ぶため、蒼空は今日もたくさん頑張るのでした。
おしまい




