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追われかぼちゃと勘当姫  作者: 憤怒の灰かぶり
第三章
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マリィ=パンプキン6

カリマを残し、一行はイルミナ入口の大門へと向かう。天気は薄暗く、雨が降りそうにも見える曇り空。その中でも貿易の街というのも名ばかりではなく、朝から人々の交流が盛んの様に見受けられる。そんな人々は一行を目にすると、物珍しそうに視線を動かす。特に不穏ふおんな空気を感じ取って、リリィとホヅミには注視していた。

リリィとホヅミは封魔錠スペルオフを後ろでかけられた上で、更に万が一逃げられないようにと腕ごと胴体を縄で縛り上げられていた。その後カリマに兵士へ解毒薬が手渡される。リリィとホヅミがそれを飲まされてすぐに動ける様になると、二人の縄を兵士がしっかりと掴んで、その兵士や他の兵士らを肩章のちょび髭が往来おうらいを堂々と引率いんそつする。

彼ら兵の拠点きょてんであるルノーラ帝国というのはルノーラ大陸に存在している。それはハイシエンス大陸とは別の大陸であり、リリィが行こうとしていた大陸とは真逆の方角に面していた。そんな遠い所からこのイルミナまでやってきたのだ。それもカリマの通報から一日と経っていない。もしかするとイルミナ付近もしくはイルミナ元々滞在(たいざい)していたのかもしれない。


「ねぇ、もしかして歩いていくの?」


リリィが問う。肩章のちょび髭はそれを聞くや、嘲った様な薄ら笑いで返した。


「そんな訳がなかろう。今向かっているのは、我々が空間魔法を行えるだけの広い平地だ」


リリィは聞き慣れない言葉に眉を顰める。


「何なの、その空間魔法って」


塾での授業は全て修了している訳でなく、リリィの知らない魔法だった。そもそもリリィは独学な面が多く、ある面では人よりも博識であったり、ある面では知識をあまり持っていない。


「リリィと言ったな。聞いておるぞ。その(よわい)で村から追放されたのであったな。学業課程を修了しても居ないのだ。知らないのも無理はない。よかろう、歩きながら話してやる」


肩章のちょび髭が言うには、空間魔法とは以前から研究されていた魔法で、貿易に伴う人や荷物の大移動に利用される魔法らしい。術式は既に完成しているようで、予め目的地の照準となる術式をその地に記し残して置くことでいつでも移動可能というものだ。カリマから通報を受けてから一日と経たずにリリィを捕まえに来る事が出来たのも、その空間魔法のお陰であった。


「つまりどこでも○アみたいな?」

「は?」「へ?」


肩章のちょび髭の気の抜けた声とリリィの腑抜けた声が重なる。その二人の反応にホヅミは少々慌てた様子だ。


「ホヅミんの世界にもあるの?」

「え、えっ!? いや、あるっていうか、ないっていうか……創作物っていうか…あはは」


某アニメの○ラえもんに出てくるものがつい口に出てしまう。色々と世界の勝手が違うので、あまり深く言わない方が良いだろうとホヅミは笑って誤魔化した。

入口の大門は昨夜とは違い、完全に開き切っていて風通しの良い光景だ。付近に来ると、ホヅミの目には見覚えのある門番が映る。門番もホヅミに気づくと、その表情を険悪けんあくなものに変えてこちらを睨みつける。ホヅミは手の一振りでもしたいところであったが、その表情を見て何とも目の合わせづらい心境へとすぐに変化した。恐らくルノーラの兵らを通す際に事情を知ってしまったのだろう。早く通り過ぎてしまいたいと浮き足立つホヅミだが、先導の肩章のちょび髭は一定の早さで歩いているために門番の冷たい直視は避けられない。

ようやく門を出ると、昨夜はよく見ていなかった草原が広がっていた。門外には一風変わった兵装をしている者が二名構えている。赤いガウンの下には露出の多く薄い鉄鎧を着用していて身軽そうだ。


「では準備に取り掛かれ」

「「はっ!」」


肩章のちょび髭が指示を出す。一行は円陣を組むように一箇所へと集合し、門外に待ち伏せていた二人の兵士が何やらブツブツと唱え始める。


「隊長! 西方から何かが接近しています!」


一人の兵士が肩章のちょび髭に報せる。そしてその場にいるルノーラの兵が揃って西方の上方へと体勢を整えた。


「あれは……野生のドラゴンか?」


ホヅミやリリィもその方に顔を上げる。空を飛んでいるその姿にホヅミは一縷いちるの希望が見えた。


「おーい!! リリィぃー!」


厳威げんいな存在感とは裏腹に軽く幼い声を上げるその竜は忘れもしない、リリィの助けた五頭竜のゴズだ。


「貴様の知り合いか? ……ふっふっふっふっ……助けに来たという訳だな」


肩章のちょび髭はリリィを一瞥いちべつすると、余裕のある笑いを零す。兵士達が動揺を見せる中、堂々たる姿勢でゴズに向き合っていた。


「ゴズ! 私達を助けに来てくれたのね!」


期待を乗せた声でホヅミが言う。ゴズはその大きな翼をばたつかせて、ゆっくりとホヅミ達の前に降りる。草は激しくなびいて、その大きな足や爪、尻尾に押し潰される。


「何言ってるんだ? オレはリリィに見舞いの木の実を届けに来ただけだ」


するとゴズはふっくらとした自身のお腹を手で抑え、中身を押し出すようにして何かを吐き出していく。液にまみれてぬるぬるになった大量の木の実をホヅミ達の前でたくさんと積み上げる。


「げっぷ……ほら、見舞いのシナだぞ?」


それを見る兵士達は不快な表情でそれを見届ける。肩章のちょび髭は無表情だ。そしてホヅミはというと、不快にがっかりといった態度を越えて、わなわなと拳を握り締めている。


「オレの大好きな木の実だぞ? 食え食え」


屈託のない無邪気むじゃきな調子でゴズは言う。しかしその言葉で更にホヅミの琴線きんせんでなく、全く別の逆鱗げきりんに触れてしまったようで、ゴズはその事に気がついていない。


「オレのせいでリリィが熱を出した。だからそのおびだ。受け取れ」

「受け取れるかぁ〜っ!!!!!」


ホヅミが叫ぶ。その声にゴズもぎょっと驚いて昨夜のように身を屈ませる。


「な、なんだよ。今度はオレ、何も悪くないだろ?」

「は!? あんたはどんだけ常識知らずなの!! 普通飲み込んだものを見舞い品として届けるか!!見なさいよ! あんたが飲み込んでたせいで少し消化されてドロっとしてるじゃないの! こんなものをリリィに食わせるつもりだったの!」

「ひぃっ!」


ホヅミの凄まじい剣幕に怯んだゴズは尻込みをする。


「ったく、有り得ないって」

「……あの……オレ、どうすればいい?」


ゴズは泣き目で兵士達に助けを求めるが、兵士達は苦笑いで顔を見合わせる。


「……あの……」

「何?」


恐る恐るとゴズは神経を逆撫さかなでしないような声色こわいろでホヅミに訊ねる。


「オレ、どうすれば」

「状況見て分かんないの!! リリィも私も手錠嵌められてるの! 捕まってるの! 私達を助けなさいよ!」

「はいいっっ!!!」


言われてゴズはびくんと体を硬直させる。少し間を置いて心の整理をつけてから改まって兵らに視線を移す。


「お前ら! よくもリリィと………リリィと……えと…」

「ホヅミよ!」

「ホヅミを捕まえてくれたな!! 解放しないと、痛い目合わせるぞ〜」


幼い声のゴズの迫力に欠けた脅し文句。ホヅミにやらされているような感覚で今一気持ちの篭らない威嚇で、兵士達に凄む。兵士達は槍を構えるが、意外にもそれを制したのは肩章のちょび髭であった。肩章のちょび髭がニヤリと笑むと、リリィが横から踏み込んで叫ぶ。


「待って!」

「リリィ! 良かった、元気になったんだね!」

「ゴズ、お願い。ここは見逃して」


またもやホヅミにとって意図外れな発言をするリリィ。


「リリィ? 何言ってるの? このままじゃ私達連行されちゃうんだよ?」

「ホヅミん! ボクのママが捕まってるの! もし何か騒動そうどうが起きたら、この人達に何かあれば、ママがどうなるか……」

「そういう事だ。ドラゴン殿、お引き取り願おう」


肩章のちょび髭は嫌らしい笑みを浮かべる。

浅はかに助かろうとした自分が恥ずかしい思いのホヅミ。ここで大人しく捕まらなければどうなるかなんて考えれば分かることだろうにと身勝手な自身を心で叱咤しったする。そして同時にルノーラという国に怒りを覚えた。


「でも……リリィはどうなる? リリィを殺すのか? もし殺すつもりなら……」

「心配いらんよ。帝国の繁栄はんえいのために協力してもらうだけだ」


一瞬見せた殺気にものともしないで肩章のちょび髭がなだめる様に話す。だがその気遣きづかいは反対にホヅミの疑念を煽っていた。

ゴズは再び空へと飛び上がる。その大きな巨体は直に空の点となって、彼方かなたへと姿を消した。


「隊長! 空間魔法の準備じゅんびが整いました! いつでも転送開始出来ます」

「そうか、ならばいざ帰らん! 我らのルノーラ帝国へ!」


肩章のちょび髭が号令ごうれいを出すと、一行を取り囲む六芒星の魔法陣が光り始める。魔法数式の羅列られつあみの様に空間を球体状に取り囲み、そして圧縮。あっという間にその場から一行は姿を消した。





転送先で一行は姿を現した。何もない空間から小さなホヅミ達を形成するように、そして次第に大きくなり等身大となる。

そこはルノーラ帝国の正面。ハイシエンス王都と同様、周囲は壁で囲まれている。更にはその強度を高めるために分厚いはがねが用いられていた。そう、ここは別名鋼の要塞都市ようさいとし。いかなる魔族も魔物も通さない、この世界での先進国である。


魔法講義ちゃん第13弾!!

今回の魔法は? じゃかじゃかじゃかじゃかじゃーん!で、じゃーん!


回復魔法の下位回復魔法(ヒール)です!!

この魔法、描写を見る限りとても便利でしょう?

ですがね、これはしっかりと魔法学の知識や回復魔法の仕組みについて理解していなければなかなか上手く出来ない、会得難易度で言えば上位を争う魔法なんですよ!!

もししっかりと回復魔法が出来なければね、傷が治癒するどころか広がっちゃったり、酷い癒着(ゆちゃく)を起こしてしまったりと、かなり精度が求められる魔法です!!

まあ治して欲しいのにややこしくなったら嫌ですよね。

しかも回復の度合いが魔力量にも関係してきますので、リリィの使っていた増幅魔法(バイリング)がなければ重い傷は治せません!

肩が肉食のカラスに"少し"(ついば)まれたくらいなら増幅魔法(バイリング)なしでも治ります。

また下位回復魔法(ヒール)は下位の魔法。これが中位、上位となってくると魔力の性質が変わって使用者にまで副作用をもたらすとかありますが……まあそれはまた別の回でご紹介致しましょう。

では、さらば!!

ぐぅっどらっくっ!!d('ω' )

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