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第4話 城砦築造部隊崩れ

キッツい女の次は、ゴッツい野郎だ!

 ウールクラールでは、設計士と建築士は完全に分業されている。それが、この問題の原因だ。

 それなら、設計と建築両方できる者を探せばいい。

 ローディンは、ウールクラール軍を尋ねた。

 ウールクラール軍は、周辺国との長い戦争になると、何もない所に城砦じょうさいを築造する。軍の中には、この城砦築造を専門とする部隊もあった。そこには、設計士と建築士の分けなどない。一刻も早く城砦を築造するため、部隊員全員が設計士であり建築士だった。その者に頼めば、先の問題は解決だ。

 だが、

「もう何年も周辺国との戦争はない。今は城砦築造部隊は、どの軍にも存在しない」

「では、その部隊員は全員、別の部署に?」

「中にはやめて行った者もいる。戦うことより、何かを建てることを選んだ者だ」

「その辞めて行った者はどこに?」

 そこで教えてもらった者は、シデオールの郊外にいた。

 シデオールの街中で商売に成功した者は、その金で家を買う。街中の建物を買う者もいれば、その多くは郊外に広い土地を買い、新しい家を建てた。だが、新しい家を建てようとしても、シデオールの設計士に頼めるのは、爵位があるような資産家ばかり。商売に成功したとはいえ、設計士に頼むのはあまりにも高額すぎた。そこで、城砦築造部隊をやめた者たちが、手ごろな価格でそういった需要に応えていたのだ。

 ローディンが向かったのは、そんな者の一人。

 森が近くに迫る小高い丘に、その男はいた。

 ローディンが馬で小高い丘に駆けあがった時、その男は一人で測量をしていた。

 長い棒を2本の杭の上に置き、その棒が水平になっているかどうか、糸の先におもりをつけた器具で確認している。

 ローディンは、馬から降りると、男に声をかけた。

「設計士のアルギユヌスか?」

 アルギユヌスと呼ばれた男は、立ち上がりローディンを振り返った。ローディンより頭一つ大きい巨漢だ。

「そうだが、あんたは?」

「わたしは、ローディン。マクガイアス家デューン男爵の執事をしている」

「デューン?初戦であのクリエルチームから1点を奪ったデューンか?」

「それは、何の話かな?」

「ボトスだよ。俺は、ボトスが好きでね。週に2回は見に行ってる。デューン男爵のチームは統制が取れていて、いつもスマートな試合をするんでね。ボコボコの試合好きには物足りないかもしれないが、俺はデューン男爵のファンなんだ」

 思わぬところで、デューンに男のファンがいることが発覚。

「そうか。では、デューン男爵に伝えておくよ。ところで、今日は折り入って頼みたいことがあってきた」

「何だ?」

「デューン男爵が住んでいる西の塔なんだが、その塔の図面を作ってもらいたいのだ」

「図面を?」

「実は、西の塔の改築を考えているんだが、その元となる図面がないのだ。今ある塔の図面がないことには、改築も何もできない」

「シデオールには、設計士なんてごまんといるぞ」

「今ある建物の図面を作るのは至難の業だ。ことごとく断られたよ。だが、もと城砦築造部隊だったあなたであれば、シデオール一の設計士が断った難しい仕事もできるはず」

「なぜ、そんなことが分かる?」

「城砦築造部隊は全員が設計士であり、建築士でもある。だからこそできる仕事だ。どうだ。あなたより高額な設計料を取っているシデオールの設計士たちの鼻を明かしてやりたいとは思わないか」

「・・・・・急に言われてもな。今の仕事がある」

「城砦築造部隊をやめた人間は随分いると聞く。今の仕事を任せられる人間が何人かいるんじゃないか?」

「・・・・・・うん、まあ、何人かは頼めなくはないが・・・・」

「考えてみてくれ。もし引き受けてもらえるのであれば、西の塔に部屋を用意しよう。1日2日で終わる仕事ではないからな」

「デューン男爵と一緒に住めるのか?」

 アルギユヌスの顔が輝く。

「もちろんだ。ボトスの試合も最前列で見れるように手配しよう」

 このローディンの一言で、アルギユヌスは陥落した。

「分かった。分かったが、すぐにという訳にはいかない。代わりを当たらなくちゃならないし、施主にもきちんと説明しなくちゃな。何日か時間をくれ」


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