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9.僕の家族を紹介します

9.僕の家族を紹介します


 早苗さんと由希子さんが世間話をしている間、僕は自室でぼんやりと雲を眺めていた。窓の外に浮かんでいるのは、夏らしい、もくもくと大きい雲だった。

 去年も一昨年も、小さな子供のころも、やっぱり僕はこの窓からこうして雲を眺めていたような気がする。

 仲の悪い両親と、出来の良い兄貴と、出来の悪い兄貴と僕の5人家族で僕は育った。

 父は些細なことで怒鳴る大柄で威圧的な人間だった。母は些細なことで金切り声をあげるヒステリックで支配的な人間だった。

 上の兄は優秀で、また年の離れた弟である僕に対していつも優しかった。

 下の兄は愚鈍な人間だったが、年の離れた弟である僕に対してはいつも優しかった。

 上の兄と下の兄は折り合いが悪いようだった。

 上の兄は大学を卒業して大手メーカーに就職し、この秋までに家をでる予定だった。下の兄は高校を中退して半引きこもり状態だった。

 下の兄は幾つもの精神病院を掛け持ちして色々な病名をつけてもらい、睡眠薬や精神安定剤を処方してもらい、それを自分で使ったり他人に売ったりしていた。

 下の兄には不思議な能力があった。

 念じるだけで他人を思い通りに動かせる能力だ。

 上の兄に突き飛ばされてビルの窓から落ち、頭を打って気を失い、通りがかりの女の子に頭をさすって解放してもらって以来、能力が発現したのだという。

 にわかには信じられなかったが、たまたま歩いていた子供とサラリーマンと老人にコンビニで万引きさせてアイスモナカ3つを手に入れる様子を見せられ、信じることにした。

 3つのモナカのうち一つは兄が食べ、もう一つは僕が食べ、最後の一つは道に捨てた。家へ戻る道すがら

「こんな能力があると、俺はいつかきっと、俺が憎んでいる者を殺してしまうだろう」

 と言った。「俺はそれが凄く嫌なんだ」とも。

 家族は誰も下の兄の能力を知らなかったから、ただの愚鈍な引きこもりかのように接していた。僕も同じように接していた。

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