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3.洋介について

3.洋介について


 洋介は由希子さんが連れてきた犬だ。

 ある冬の曇った日、野良犬だった洋介は、僕の家の前で車に轢かれた。

 僕の家は大通りから一本裏に入った場所にある。だから交通量が少ない。そのせいで通過する車は結構なスピードをだすのだ。かえって大通りより危険だ。

 洋介を轢いた白いセダンはそのままスピードを緩めもせず走り去った。幸いナンバーをはっきり覚えていたので、僕は公衆電話から警察に通報した。その後その車がどうなったかは知らない。

 由希子さんは洋介の死体を抱きかかえてリビングに戻ってきた。

「可哀想に。痛かったね。でも大丈夫だからね。助けてあげるからね」

 そう言って血と腸が飛び出た洋介の腹をゆっくりゆっくりさすった。

 ゆっくりと。

 静かに。

 そっと。

 さすり続けた。

 一時間が経ち、二時間が経つと、次第に洋介の腹の傷は綺麗になっていった。

 飛び出た腸も、何とか元の位置に納まったようだった。

「ああよかった。もう大丈夫だからね」

 あんなみすぼらしい野良犬も放っておけないなんて由希子さんは本当に優しい人だ。僕はなんだかそのことに酷く感動していた。

 たまたまテレビで放映されていた映画の主演俳優にちなんで僕たちはその犬を洋介と名付けた。

 洋介はとても馬鹿犬で未だに半年に一度くらい僕に噛みついてくるが、命の恩人である由希子さんにはやはり恩義を感じているようで、とてもよく懐いている。


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