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飽和した悪意と狂気。感慨vs重荷(1/1)

 『リィライト』と呼ばれた言葉により世界が変革された後、―――二人の魔法使いと魔術師は《外》から《中》を傍観していた。

「お前の駒―――女王(クィーン)じゃぁないのか?」

「どうして、そう思うんだ?」

「こっちの駒は二体、そっちの駒は一体。当然強さが求められるからなぁ。なおかつ、最強――はクィーンだぁ。チェスであっても、コレであってもなぁ」

「どうして、――――そう思ったのかは私の知る限りじゃないが、一つ教えて置いておく。誰が一体だけと言った。どこのどいつが駒は一体だけだと勘違いしている。それと、――――アイツは駒に置き換えるのなら、絶対に兵士(ポーン)だ」

「―――っ、『まさか(・・・)――――――』



 思考が遡行する。

 俺が中略した部分。その会話が蘇る。脳内を闊歩する。

 今となっては遠い過去の存在であるカセットテープレコーダーという録音再生機器があった。この再生はソレに似ている。

 無理やりガガガガガガガガガガと音を立てて意識の本流が舞う。

「なあ、魔法ってどんなことが出来るんだ?」

基本的に何でもできる。ベース自体が無いんだ。

 まず前提が違う。魔法使いは『魔法を使える』んだ。

 使えない魔法がある時点でソイツは魔法使いって括りにはいられないだろう。

 魔法使いに必要なのは独創性とやる気だ。

 逆に不要なものは何だと思う?

「…そうだな…、感情…とかか」

残念、不正解。不要な物は自分と常識だ。

 魔法ってのは人知を超えた先にある人間の次の在り方なんだよ。それなのに人間の常識が残っていては何の意味もない。ただの魔法使いの肩書を持つ人間だ。魔法の魔の字も使えやしない。逆に魔法に使われちまう。

「魔法に使われる?」

そう、魔法を行使する段階で逆に行使されるんだ。火を生みだす魔法を使うとしよう。その魔法を常識をもって放ってしまうとどうしても矛盾が生じる。人間単体では火を生みだすことは絶対にできない。これは良いな?でも魔法はソレを可能にする。この段階でもうアウト。常識を持つ人間からしてこれは人じゃないよな。中毒だ。だから魔法使いは一種の麻薬中毒者みたいなものなんだ。「で、人を喰らう魔法は――」

 それは文字通り、人を喰らうんだ。呪い返しって知ってるか?人を呪わば穴二つ。これは聞いたことあるだろう。そっちの世界でも私の住んでる世界でも、その言葉は格言として、存在している。それと同じだ。不完全な魔法は術者を殺す。つまり、喰らうんだ。そして術者を喰らった魔法は禁忌の魔法に成ってしまう。こういうプロセスなんだ。


 まぁ、まずは自分を捨てるところからだな。

「何も考えるなって遠まわしでいってるみたいだぜ…」

 なぁに、後先考えずに一直線に愚直に突っ走ったら余裕だって。

「そんなもんなのかー、まぁ魔法なんて死んでも御免だけど…」


 ―――前言撤回、現時点を持って徹頭徹尾、俺は魔法を使う。


 俺の《病気》の症状は《様々》だが、精神と肉体。この二つのどちらかに必ず依存している。――ま、これは生物としては当然。

 そして、《俺》が今の《俺》であるためには、一つの欠陥を受け入れなければならなかった。この《欠陥》には名前が無い。

 ――――『想像症』。

 俺はこう名付けた。この欠陥の症状は――空想、ファンタジーなどは精神に異常をきたす。だ。アニメでも、漫画でも、小説でも全て平等にその症状が訪れる。

 だから、先ほどのファンタジー…変身することを決めるた時、俺の精神は異常をきたし、ソレが飽和し、幾度とない死を迎えた。

 だが、それもおわりだ。

 同じ薬を何度も服用していく内に肉体はそれに適応し、だんだんと効果が薄れて行く。

 これと同じ。

 マラソンで3000m走ったとする。初めはとても辛い。だが、次回の走行ではその辛さも多少緩和される。

 これも同じ。

 ―――経験値が溜まるのだ。次に起きる事象が分かっていたら対応できる。

 精神異常も同じように緩和される。俺の場合はされた。

 一度より二度目、二度より三度め、四度より五度目。だんだんと――精神は欠陥を埋める事を適応される。

 だが、一つの欠点がある。

 スズメバチの毒に対する抗体が出来ると、再び毒を受けるときにショックを受けて死ぬ確率が存在する。――アナフィラキシーショックのように。

 それが、俺の肉体でも起こったのだろう。だから、数え切れないほど死んだ。



 脳内再生が終了した瞬間、俺は魔法を使っていた。

 俺の心の声は、『生まれ変わって』の第一声は、産声は、


 ―――――《生きたい》、だった。


 コピー機にはその名通りの動作をするために、コピーの対象の文体を自身に取り込むためのスキャンの機能がある。それで対象を把握し、次の動作をおこなえる。それがまさに俺の肉体に行われた。人間から違う生き物へ、進化を遂げるために。

 ブラックアウトした視界に、文字が浮かぶ。けして光を持っているのではない、ただ――浮かんでいるんだ。見えるだけで、光を持たない。希望的観測を行って出てくる希望に成りえない、文字が浮かぶ。


 |SCANING NOW《診断中》――――WAS OVER(完了)


魔法を使える人種へと変貌するために。これは死であり、復活であり、再生だった。気分上々。


 |FORMAT SRART《初期化開始》――――WAS OVER(完了)


 変な気分だ。自分なのに、自分じゃ無くなる。自分色に塗りたくってきたキャンバスという人生観、使用してきた絵具という方法。これらが全て無かったことにされる。生まれてきた状態に強制に戻される。いや、初期化される。

 空っぽになる。――伽藍洞に。


 |COMMITTAL TO WRITING《書き込み中》――――FINISHED(完了)


 だが、記憶は無くならない。精神も…異変は無い。つまり、さっきのは、魔法を使うものとしてのイレギュラーをオートで部分的に初期化していたという事か。そして、失ったものを埋めるために新たな情報が書き込まれる。心の中の疎外感…的な物が埋まっていく。まるでテープレコーダーの録音機能だ。所詮はアナログ。ディジタルではない。まだガガガガガガガガガガと不快な音を掻き立てて書き込んでいるようだ。


 REBOOT(再起動)――――|OPTIMIZATION《最適化》。


 ガガガガガガガガ――――――ガチャッ。録音が止まった。

 血管を血液が淀みなく流れるように、体中を《ナニカ》が流れる。どろっとしてる何かが。

 気分が高揚する。体の中心から沸々と湧き上がる。


  ――――FINISHED(完了)


  ―――――POWER(起動)


 ……どうやら、俺の人生は―――――ここから始まるようだ。

 と言っても人間としての人生はちょいと前に終了しているけれど。

 強制終了だった。いや、Ctr+Alt+Deleteの方じゃないよ。

 パソコンの電源ボタンを長押しとか、コンセントを引っこ抜くとかそっち系。

 ホントに本当の強制終了って感じだろ。

 ではでは、新しい自分とご対面―――。




 視界が元に戻った時には、闇からすりガラス、そしてクリアな風景を認識する頃には、友と咲良は俺の周りにはいなかった。

 身体を起こし、立つと少しだけふらついた。ぐらっと。まるで、新しい体の扱いに慣れていないように。ぐらりとふらつく。

 視界はクリアなくせに耳鳴りがボーボーなる。誰だっ。汽笛を鳴らしているのは。そんな奴はいねぇ。←自分でセルフ突っ込み。

 だが、そんなことより先にすべきことはいくつもある。←セルフスルー。

 ――捜さなくては、視界が上空からの視界に移り変わる。これも《魔法》。『無意識下の魔法』……なのか。命名するなら『第三の目(サードアイ)』かな。

上空からの視界で、しかも過疎っているこの辺りにいる人間を捜すことはそう難しいものではない。

すぐに見つけた。のんびりとだらだら歩きながら二人で駄弁っている。

あいつら俺を殺したと思ってどっか行ってやがる。

 身体を慣らす意味でストレッチしながら(自分視点もしっかりと存在する)友と咲良を《目》で追う。俺の四か所に打ち込まれていた弾丸と弾痕はきれいさっぱり消えていた。当然――頭の貫通個所もきれいさっぱりに修復されている。

 

「これが…、魔法」

 ―――俺が願ったから。それじゃぁ、ま、殺さなきゃ…だな。

 殺されるまで、敵対するまでは仲のいい仲間だった筈なのにな…。

 てか、仲のいい仲間って意味分からんし。仲間だから当然仲良くて、仲がいいから仲間なんじゃ……。

 欠けの無い純粋な関係であったと言えるのに。

 でも、その関係は今や崩れ、死んだ末にまだ殺し合いをしているんだ。

 滑稽だ。

 この思いをあいつらに伝えることが出来たらどれほどいいか。

 ――なんてな。

 いざとなると、《感慨》にどっぷりと浸る、俺。

 どんな場面でも、絶体絶命でも、どれだけ優位に立っていても、かならずここぞという時に感慨に浸る。それが、《感慨なる》の名を冠する理由だ。

 一度目を閉じよう。考え過ぎは良くない。


 思考停止。


 素早く打ち切らないとズルズルと引きずっちまうからな。せっかくの魔法に矛盾か生じる余地が生まれたら大変だしな。


 試行開始。上手くない言葉遊びだ。


「――てか、俺達がもし殺し合うとしてもこれだけは言えるんだよな。相手を殺す時は必ず銃撃戦で止めを刺す」あ、これ伏線だからな!


 DK→Aの大会に同じチームで出ようとしたよしみだ。慣れ合いじゃなく…な。

 俺は――魔法を行使した。具現化しろ。両手が空気ではなく、何か金属を握る。それらはグッと重く、一気に重量で肘が真っ直ぐ伸びる。うん。こうでなくては。うんこ、うでなくては。句点を入れてみた。別に他意ない。うん。

 感覚ではなく目で確認する。たしかに握っているのはDK→Aの初心者に初めに支給される最弱の武器――《スミス&ウエッソン》の《M60》があった。戦後の警察官に支給される一般的な拳銃ではなく、チーフモデルの警察署長に与えられる拳銃だ。若干の王道を外してくるところもこのゲームを好きである理由の一つだ。これを二丁持ち、二人を殺す。殺すだけじゃものたりない。惨殺、虐殺、銃殺、しなくてはならない。って、いつの間にか視点が一つに戻ってる。もう一度、上空からの視点に切り替えを…。

 ――見つけた。

 もう一度切り替え、周りの光景をスキャンしてリアルタイムでその光景を脳に情報として送り込んでいる。そんな所だろう。

 ふん、これだから魔法は《オモシロイ》。あひゃひゃひゃひゃっ。

 ささ、会式の辞は終了したよ。物語りで表わすとプロローグがやっと終わったってところかな。まったくもって一体こったいどうなっているんだ。

 《魔法》は文明の機器などと呼ばれる幼稚なものではなかった。

 俺は願った。二人の前に行きたいと。

 ―――《テレポート》したのだ。一瞬だけ、意識に空白ができる。それを認識する頃には目の前の景色は一変していた。

 数メートル先にはこちらを見る、二人。

 唖然と――

 友。

 呆然と――

 咲良。

 心境はそれぞれあるだろうが、くみ取ってやる暇は与えない。それにどうやらあちらも俺と同意見のようだ。流石だ。

 流石、ランキング上位者と言ったところか。

 俺の姿を視界で捉えるなり、速攻で殺しの構えをとる。一度殺した相手がドウシテ生き返っているのかなんてこれっぽッちも考えていない様子な二人と対峙する!

 拳士と銃士。

 近距離と遠距離。

 対してこちらは、

 魔法使い。

 全距離(オールレンジ)!!

「ハッ、――勝てる気しかしない」

 小声でうそぶいてみる。それほど気分は良い。自分を見失ってしまうほど。

 一足先に前に出たのは咲良だった。アップダウンの緩急で体を左右上下に揺らしつつ、こちらにかなりの速さで接近してくる。それに、その姿をしっかりと目視することが出来ない。まるで『何かの隙間をくぐっている』ようだった。

 が、遅いな。

 テレポート時に自動で創られた一対二個のガンホルダーに納められていた《M60》を素早く抜き、ダンッダンッ――と両拳銃で同時に撃つ。

 当たるはずがない。咲良はそう思っていたのだろう。その通りだった。咲良には一撃も当たらず、かすりもせず、後方へ飛んで行った。もう眼前に拳が見えた。

 だからどおおおおおおした!!

 眼前の拳は上空からの弾丸により手の甲から平にかけて銃痕が生まれた。つまり、銃弾が貫通した。

 ピシャッと血が傷口から漏れ、俺の頬へ付着した感触を味わいつつ顎を引いてひとまず拳を回避する。フォンッと撃たれてもなお勢いを崩さなかった拳は空を切り、一撃必殺を嫌でも認識させられる音を出す。風が頬を打つ。

『あえて、拳を待ったのだ』。

 隙が無いからな。拳士には。

 そして続けざまにもう一発。咲良は完全に忘れていた。貫通による二重の意味(肉体と精神)の衝撃と一撃必殺と思われる体重移動による渾身の一撃を避けられたことによる体のバランスの多少の崩壊で。

 俺が初めに撃ったもう一発の事を。

 そして、その一発もまだ生きていることを。

 全てはこのための定石。定石のための布石。

 次の瞬間、鮮血が咲良の眉間から迸った。――眼前で命の略奪行為に俺は興奮した。脳をやられた身体は重力に隷属を確約して地面へと落下する。

 だが、彼女の拳は留まりを見せなかった。

 脳に穴が開いてもなお、その拳を奮う―――信念。

 いや、それともただ操られているだけなのか。

 ""どちらでもいいことだ""

 両手に握る銃での早打ち。

 一瞬の中に拳が肉片と化し、地面に散乱する。

 キシシシシシシシッ!!

 


 ドシャッ―――と音を立てて地面に倒れた彼女は、片腕を失っていた。



ひっさしぶりのupデス。


 囮物語は西尾維新にヤラレタ―と思いましたね。


  まさかラスボスが……!!


という事で次回作の忍の話が楽しみで仕方がないですなー。


   ではでは、ナニかいい事あったらいいですっ。


   お相手は雨宮天でしたー。

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