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鑑定眼の社畜、今日もブラック魔王軍でなんとかがんばります!  作者: 鳶丸


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第015話 社畜、モアナとメルの可能性を示してしまう


 オレたちは魔王城の外にいた。

 城壁の外って意味ね。

 

 今回はどうしても外にでる必要がある。

 そう言って、ヴェラにお願いしたわけだ。

 

 で、城門の外にでたわけ。

 びゅうと風が吹いている。

 

 魔王城とか言うから、毒の沼にでも囲まれているのかと思ったらそうでもなかった。

 

 平原に畑がある。

 川がある。

 なんだったら民家もある。

 

 実に牧歌的な風景が広がっていたんだよね。

 まぁ考えてみれば、当たり前の話だわ。

 

 だって魔族にも生活があるんだから。

 

 ただ、ここだと外にでてきた意味がない。

 今から試そうとしていることは下手したら大惨事だからな。

 

 だもんで、ヴェラえもんに言ってみた。

 

「ヴェラ、なんかこう荒野みたいな場所ない? 岩しかないような場所」


「んーあるにはありますが、移動に少し時間がかかりますわよ?」


「日帰りできる?」


「そうですわね。わたくしたちなら一時間もあれば。あなたたちも行けますわよね?」


 ヴェラがモアナとメルの二人に聞く。

 二人は顔をお互いに背けてツーンとしている。

 まぁさっきのはメルが悪い。

 

「おう! オレなら問題ない。モアナはどうか知らないけどな」


「それはこっちの台詞ですね。その無駄肉が邪魔なのでは?」


「あ゛あ゛ん?」


 これはもうダメかもしれん。

 こいつら本当に仲悪いな。

 まぁ性格的に水と油なのは理解するけども。

 

「はいはい。次にケンカしたら、わたくしが制裁しますわよ」


 ヴェラがちょっと低い声で言う。

 怖いな。

 ゆるふわポンコツお嬢様の暗黒面だ。

 

『……ハルト、聞こえていますわよ?』


 ひぃいいい。

 オレに表現の自由はないのか!

 

「まぁいいでしょう。では、行きますわ。ハルト、こっちに」


 ん? と言われるままにヴェラの側に寄る。

 すると、足を払われてお姫様抱っこになった。

 

 ヴェラの背中に悪魔の翼が生える。

 そのままぶわぁっと飛び立つ。

 

「うそだろううううう。いやああああああ!」


 浮遊感を覚えたのは一瞬だけ。

 あとは超高速移動だ。

 景色が後ろにビュンビュン流れていく。

 

 トリだ、飛行機だ……はちょっと古いか。

 

 うーん。

 ヴェラさん、高位の魔人族って本当だったのね。

 

 で、なにがどうなったのかわからん内にオレは荒野にいた。

 そして――おろろろとしゃがんで吐く。

 

 たぶんね。

 飛行機のパイロットにかかる負担以上のものがあったと思うんだ。

 もう目はぐるぐる回るし、胃がぎゅうってなるし。

 

 帰りはもっと優しくしてほしい。

 

「もう。ハルトは身体が弱いですわね!」


 魔族と一緒にしないでほしい。

 ちなみに、ヴェラが魔法で体調を治してくれた。

 ついでに水もだしてくれたから、うがいもしてすっきりだ。

 

 そこへ遅れて到着してきたメルとモアナの姿が見えた。

 モアナはたぶん風の魔法を使って飛んでいるんだろう。


 で、メルはと言えば足の裏から火を噴射してる?

 科学の子かよ!

 

「はぁはぁ……やっと追いついたぜ」


 膝に手をついて肩を上下させているメルだ。

 

「ふぅふぅ……もうちょっと速度を合わせてくれないですか」


 モアナもぐったりしている。

 

「あれでも加減したのですわ」


 さらっとマウントをとるヴェラだ。

 ちょっと思うところがあったのかもしれない。

 女の戦いってのは怖いね。

 

 二人が回復するのを待つ。

 その間にオレはお昼ご飯だ。

 

 と言っても弁当なんて洒落たものはない。

 厨房からくすねてきた干し肉をガジガジとかじる。

 

 うん、マズい。

 というか、しょっぺえよ。

 かっちかちだし、ただただしょっぱい。

 

「ヴェラ、お水ちょうだい」


「もう。干し肉をそのままかじったらそうなるでしょうに」


 呆れたという表情になりつつ、水をだしてくれるヴェラは優しい。

 さすがやで!

 

「で、ハルト。こんなところにまできてどうしたいんですの?」


 ヴェラが話を振ってくれた。

 いいぞ、ナイスアシストだ。


「うむ。ちょっと話しただけだけど、モアナとメルが仲が悪いのはわかった。でもな、オレは二人に力を合わせてほしいんだよ」


 うんうん、と頷くヴェラ。

 モアナとメルはちっと舌打ちをしている。

 

「でね、ちょっと考えてみました。二人が力を合わせたらどうなるのか。一足す一は二になるのか、いや、三や四、場合によっては十にもなるんだよ。まぁ今のままならそうならないけどね」


 だから! とちょっと声を張る。

 モアナとメルがオレを見た。

 

「二人にはちょっとした魔法を使ってもらいたい」


 メル、と呼んで手招きする。

 ちょいとお耳を拝借してごにょごにょ。

 

「うーできると思うけど、それがなんだって言うんだ?」


「いいから、いいから。騙されたと思ってやってみ? な?」


 コクンと頷くメルだ。

 次にモアナを呼ぶ。

 

 またまたお耳を拝借してごにょごにょ。

 説明がメルに比べて難しいから、地面に指で絵を描いて説明する。

 

「なるほど。ハルトの言いたいことはわかりました」


「できそう?」


「任せてください。私は風魔法の申し子なのですよ!」


 いいだろう。

 

「じゃあ二人とも、さっきの言ったことを実演してほしい。けど、できるだけ遠い場所でやってね」


 ヴェラも呼ぶ。

 

「なんですの?」


「ちょっと規模が読めないからさ。危ないと思ったら、オレとあの二人を連れてすぐに退避してくれ」


 はぁと息を吐くヴェラだ。

 不審者を見るみたいな目つきになるなよ。

 照れるだろ。

 

「承知しました。いったいなにをやろうと言うのやら」


「まぁ見てろよ」


 メル、お願いと声をかける。

 

「よっしゃああ、任せとけ!」


 はりゃああと気合いとともに火の魔法が二百メートルくらい先で炸裂した。

 超高密度に圧縮された炎の魔法だ。

 周囲が歪んで、揺らぐ。

 

「どうだ! ハルト、これでいいか!」


「ばっちり! モアナ、頼む!」


「はい!」


 モアナへの指示はちょっと難しかった。

 なにせらせん状に回転する上昇気流を作ってほしいってことだから。

 それもメルの火の魔法に合わせて。

 

 ごう、と風が巻き起こる。

 メルとモアナの魔法が一瞬であわさって、それはそれは巨大な炎の竜巻と化した。

 

 火災旋風である。

 

「だあああ! これまずい! 逃げるぞ! 退避、退避、退避いいい!」


 周囲の空気が吸いこまれていく。

 それと同時に炎の竜巻の規模が大きくなっていく。

 ついでに赤い炎だったのが、青白い光を放っている。

 

 これ、あかんやつ!


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