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セリーナへの告白


「セリーナ大丈夫か? 痛いところは?」


 王宮で手当てを受けるセリーナ。足を捻っただけなのに王宮に連れてこられるとはなんとも心配しすぎなような気がしますわね。


 教室から馬車まではジェフェリー様に運んでもらいましたし、馬車を降りてもそれは変わらずでしたの。


 医務室に連絡が入っていたようで、王宮の医師様が待機していました。大した事ありませんし一人で歩けると言ってもジェフェリー様は離してくれませんでした。



「えぇ。ちゃんと手当てをしていただきましたし、数日安静にしていれば問題ないと言われましたもの」



 足首と手首には痛々しく包帯が巻かれています。固定すると言う意味も含めての処置ですが、少々大袈裟ですわ。



「利き手が使えないのは不便だな」


 ジェフェリー様が私の座っているソファの隣に腰掛けました。とても触り心地の良いソファです。



「ジェフェリー様、この部屋はどういったお部屋ですの? 初めて入りましたが素敵な部屋ですのね」



 壁紙はアイボリーにグリーンの装飾、小物はピンクとゴールドで纏めてありました。可愛くて落ち着く室内ですわね。家具を見ると職人の細かいこだわりまで感じるような素敵なデザインです。


 客室とはまた違う雰囲気で貴族の令嬢のお部屋と言うイメージかしら? 家具もまだ使われていないように綺麗です。もしかしてどなたかのお部屋とか?



「……セリーナの、部屋、なんだ……」


「わたくし、の????」


 どう言う事でしょうか? ここは王宮ですよね。




「……………………………………」



 あら? 久しぶりの無言タイムですわね。ここはジェフェリー様の言葉を待ちましょう。













「…………数年前に……用意して、言い出せないまま……今に至ります」



 膝に肘を置き下を向き顔を隠してぽつりぽつりと説明を始めました。




「王宮に……その、セリーナの部屋があると、何かと、その、便利だから……着替えが必要な場合とか……その、疲労の際に休める、個室があればいいと思って、これから、夜会とかもあるし夜が遅くなっても泊まれるように……」



 ポツリポツリと説明をするジェフェリー様。この部屋はジェフェリー様が用意をしてくださっていたのですね。全く知りませんでしたわ。



「ありがとうございます、とても嬉しいですわ」


 お部屋を用意してくださっていたのですね。そう思い感謝を告げました。伝えるのが下手というか……伝わりませんわよ! もうっ!



「後ろ……見て」



 後ろ? 振り向くとそこには純白のドレスの裾に向かって小さなピンクと紫の宝石がまるで花のように見えるデザインのものでした。可憐で華奢なデザインはおそらく皆さんの目に触れると注目を浴びる事になるでしょう。



「まぁ。とても素敵なドレスですわね」






「…………セリーナのデビュタントのドレスなんだ」


 もうすぐデビュタントで、ドレスの採寸はしましたけれどデザインその他は出来るまでのお楽しみよ。とお母様に言われていましたのに。まさか……?



「え! ジェフェリー様が用意してくださったのですか」



「…………婚約者、なんだから」




「言ってくだされば良かったのに……私知らなくてジェフェリー様に酷いことを、」



「いや、それは私が悪かったんだ。誤解させるような態度をとっていた。今更だけど……セリーナの事を思っているんだ」





 このドレスを見ているとジェフェリー様の言葉は嘘ではないと思いました。恐らくですがこのドレスを作るのには相当な時間が掛かったと思いますもの。



「はい、謝罪はしかと受けとりました。わたくしもジェフェリー様を理解していなかったのだと痛感いたしました。お互い様ですのね。わたくしはジェフェリー様のことを何も分かっていなかったのですわ。情けないです」




 ジェフェリー様はスーハースーハー…………と息を整えてからよし! と私の前に跪きました。そしてわたしの手を取り



「セリーナ・ランディ嬢、今まで君に失礼な態度をとっていた事を心から詫びます。君と出会って婚約をして間もなく十年が経とうとしています。今までもこれからも私の一番は君なんだ」




 真っ直ぐに私の目を見て告白してくださいました。その事が嬉しかったのです。私はジェフェリー様と目を合わせてお話をしたかったのです。



「わたくしもジェフェリー様が一番ですわ」



 にこりと笑って手を重ねました。ビクッとするジェフェリー様はまた呼吸を整えて、わたしの膝に一旦手を置いて、ポケットの中から何やら小箱を取り出し、用意してくださったドレスと同じ紫色の宝石のついたリングを、私の指にそっと嵌めてくださいました。



「綺麗ですね。ジェフェリー様の瞳の色ですね」


 改めて付けてくれたリングを間近で見る。


「セリーナの瞳の色も紫だから……」



 もう一箱ポケットから出してきた。



「セリーナ私の指にも嵌めてくれないか?」



 お揃いのリングでした。ジェフェリー様からリングを受け取り緊張しながらジェフェリー様の指に嵌めました。



 そして少し指が震えてしまいました。ジェフェリー様もこの緊張感の中で告白をしてくれたのだと思うと、胸が熱くなりました。



「婚約して十周年だから少し奮発したんだ。気に入ってくれると嬉しい」



 多分ですが少し奮発どころではないような……



「少しは格好付けたくて、今までごめん」



 照れながらもきちんとお話をしてくださるジェフェリー様を見ると胸のあたりがぽかぽかとしてきました。



「十分かっこいいです。知りませんでしたもの、ジェフェリー様がこんな事を考えていてくれたなんて……すごく、嬉しいです」



 感動して涙が込み上げてきました。私に興味がないと思っていたのに、この部屋にあるもの全てが私の好きなものばかりです。



 私が欲しかった言葉も貰えました。なんて素敵なんでしょう……



「ありがとうございます。ジェフェリー様」



 涙を浮かべながらなんとか笑顔を作って感謝を伝えると、目を逸らされましたわ。それが少し寂しくてジェフェリー様の手を取りました。ジェフェリー様の手は大きくて温かいです。





「不意打ちのセリーナの笑顔が可愛すぎて尊い……」














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