表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひなた  作者: zaku
5/25

天狗山

 今日もまた同じ夢を見た。

 「日向くん、早く」

 「葵ちゃん、待って」

 日向が葵を追いかける。

 そして、いつものように葵が泣き出す。

 「ねぇ、どうして…」

 「葵ちゃん、何?」

 何度も同じ夢を見て、毎回同じ場面で目が覚める。

 ただ、今日は一つだけいつもと違うことがあった。

 天狗山―

 葵が言ったのかどうかはわからない。

 しかしなぜかこの言葉がハッキリと記憶に残っている。

 天狗山って何だ?

 この辺りにそんな山などないし、聞いたこともない。

 日向はベッドから起き上がると、煙草に火をつけた。

 天狗山…

 頭の中で繰り返す。

 だが、いくら考えてもわからない。

 まぁいい。

 気にしないでおこう。

 日向は煙草の火を消すと、シャワーを浴びた。

 日向はシャワーを浴びながら、再び天狗山という言葉を思い起こしていた。

 いくら違うことを考えようとしても、なぜか天狗山という言葉が頭から離れない。

 天狗山っていったい何だ…

 呪文のように何度も繰り返す。

 ダメだ。わからない。

 何なんだ、いったい…

 イライラを打ち消すように、強く目を閉じて頭からシャワーを浴びた。

 のんびりしている時間はない。

 仕事だ。

 日向は急いでシャワーを済ませると、部屋のテレビをつけた。

 いつもの情報番組にチャンネルを合わせると、見慣れたCMが流れていた。

 パソコンやスマホなど、誰でもインターネットを使うということが当たり前のようになっていることもあるのだろう。最近のCMは、最後に「検索」と案内されるものが多い。

 検索…?

 そうだ。ネットだ。

 日向は髪も乾かさずにパソコンの電源を入れた。

 パソコンが立ち上がる時間がいつもより長く感じる。

 まだか。

 首に掛けたバスタオルで濡れた髪を拭く。

 よし。立ち上がった。


 天狗山…検索。


 あった。

 小樽、長野…?

 いくつかヒットしたが、この町からは遠すぎてどれもピンとこない。

 他にあるのか?

 画面をスクロールする。

 しかし、出てくるのは遠くの観光地と思われるところばかりだ。

 葵の夢とは関係ないのか。

 日向はテレビの時計を見た。

 ヤバい、仕事に行く時間だ。

 スッキリしないまま日向はパソコンの電源を切った。

 急いで髪を乾かし、着替える。

 部屋の電気を消すときに、何気なくカレンダーに目をやった。

 4月17日―

 今日は葵が消えた日だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ