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ヒスティマ Ⅲ  作者: 長谷川 レン
第五章 魔石争奪戦
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休みの一時



 先程、戦いを避けてから数十分後。ようやく湖のほとりへと着く事が出来た。


「よし。それじゃあ、ここを私達の根城にして罠を張り巡らそっか」


 そう言ってアキが懐から取り出したのは巻物式の罠具。これを地面に埋めれば上に通った人に罠の魔法を発動できるのだ。そしてその罠の魔法というのが……。


「え、えっと……。その巻物式の罠具って……地雷ですよね?」

「そうだよ?」


 アキがそれ以外に何があると言うような顔で返してきた。どうしてこの姉妹……というか従姉妹(いとこ)は簡単に爆弾を持ち出す。

 さっきハナが使った爆弾は魔法で作ったが、アキは爆弾を持っているとは……。


「リクちゃん。まるで私が普段から爆弾持ってるような事考えてない?」

「え!? か、考えていませんよ!?」


 まさか考えている事を見透かされるとは思わず、ボクはつい慌てて返してしまった。


「あのね。私は今日のためにこれを持ってきたの。いつも爆弾なんて持ってないね。むしろメモ帳とカメラは必ず持参するだけだもん」


 なぜかボクは説教を受けてしまった。でも、ボクが考えていた事はやっぱり失礼なことなんだろう。……たぶん。

 ヒスティマで爆弾なんて持ってても別段不思議じゃないと思うのだが。

 ボク等はアキから罠具を受け取ると、地面を掘り返したと気づかれないように罠具を設置する。それをアキがパネルを操作しながら見ていた。


「何をしているんですの?」

「パネルに書き込んでるの。私達が引っかかったら大変でしょ?」


 アキの持っていたこれは味方には反応しないとかではないのか。仕方ないと思いながらもボクは渡された枚数分埋めてから、アキの場所まで戻る。


「お疲れ様~。それじゃあ、湖の水でも飲んで休んでて。ソウナさん。探知結界を……」

「もうやったわ。湖が大きいから、さっきよりも魔力を使う物だったけど」

「ありがと、ソウナさん」

「じゃあハナ……」

「今度は〈捕縛蔓〉と〈自爆草〉を張ったのね!」

「あ、ありがと、ハナ」


 どうやら二人ともアキが言う前に自分から行動してやったようだ。

 しかもハナはまた爆発系の草らしい。待機したり罠を使うのは確かにハナの魔法は有利みたいだ。木を隠すなら森。草を隠すなら草むらということだろう。


 ボクは、魔石争奪戦が始まってから、何も飲んでいない事を思い出し、手で湖の水をすくって飲む。そして、今までの戦闘を振り返っていた。

 最初も、次の戦闘も、その次の戦闘も。ボクはあまり疲れていない。いつも学校以外で戦う時は息が上がり、とても疲れるのだが……。自分と同級生と戦ってもまったく強いと感じない。

 身体強化魔法さえ使えれば相手の攻撃を回避することは可能なのだ。スナイパーなど、こちらが姿を見つけれていない時は別だが。


「はぁ……」

「……水、おいしい?」


 ふと横を見ると、白夜の顔があった。相変わらずの無表情であるが、ボクはなんとなく白夜の表情が読めるようになってきた。とは言っても読めるのは時々だ。


「はい。おいしいです」

「……じゃあ飲む」


 ボクに毒味でもさせていたのか……。


 顔が引きつっていないか、少し心配になった。


「……そういえば、ここの湖ってどこから水が出てくるんでしょうか?」


 ボクは不思議に思った。なぜならここは完全に陸地であり、流れてくる川なども見当たらない。

 そうすると、答えは隣の白夜からではなく、レナが近づいてきて答えてくれた。


「簡単ですわ。実はこの湖、ある一か所に穴が開いているんですわ。その穴はとても長い距離で海につながっていますの」

「でも、海水だったらしょっぱくて飲めないですよね?」

「確かに、しょっぱい時もありますわ。でもその時は大抵雨がまったく降らない時だけですの」


 雨がまったく降らない時だけ? 雨と海水と、何の関係があるんだろう?


「この湖はほぼすべて、天然水だけですの。ほら、周りにはこんなにたくさんの木々がありますわ。雨が降って、木々が湧き水をたくさん出しますの。川を作るよりも先に、湖が出来てしまったんですわ」


 なるほど。すべてはこの湖の周りにある木々がこの湖を作ったのか……。天然水だと聞いて、この水のおいしさが納得できた。


「それにしても、誰も来ないと静かで心地いいですね」


 時折、爆発音などが聞こえてくるが、小さな音のためにこの近くで戦っているわけではないようだ。


「戦闘中でも、ここは和むよね~」

「そうね。今の所、誰も探知結界の中を入ってきていないからゆっくり休めるものね」


 マナの言葉に、ソウナが頷く。

 やはり戦闘中でも、人は休めるところがあった方がいいらしい。

 それにしても、本当に誰にも会わないものだ。探知結界だって狭くは無い。それなりに広さをとっているから人がこんなにも来ないとは思わなかった。


「まぁここは仕方ないと思いますわ」

「そうだね。だってここでは良く水の精霊と雷の精霊がケンカしてるって噂だからみんな近づかないんだもんね」


 水の精霊と雷の精霊?

 ボクはアキの言葉に少し疑問に思う。ここには水の精霊も、雷の精霊も出てこないと思うのだが……。

 ボク自身は初めて聞くその噂に、少し考えてから何か引っかかる物があった。


(そういえば、よくここにキリさんが来るんですよね? そしてそれをレナさんが……そっか。どういう経緯かは知らないけどレナさんとキリさんの事を水の精霊、雷の精霊って言ってるのかな?)


 そう思いつつ、ボクはレナへと視線を向けた。

 当のレナはボクの視線を感じて、少し苦笑いを浮かべていた。

 やはり、ボクの推測は正しかったようだ。

 そうして時間を潰していると、アキがパネルをみんなに見せるようにしてきた。


「今、パネルの点滅が更新されそうなの。更新された時に私達がここに居ると少しマズイ。わかる?」


 アキが目を向けると、みんな顔を頷いた。


「そこで、今から少しの間だけ外に出る。点滅が更新されたら引き戻しね。それじゃあ、行くよ」


 アキがそう言って行動し始める。地雷の後がわかるのか、的確に歩いて行き、一回も地雷に引っかからなかった。ボク達もアキが通ったその場所を一センチも踏み外さずに通って行った。

 そして、探知結界の外に出ると、タイミング良くパネルの点滅が更新された。近くに何チームかいるようだ。


「よし。もどろ」


 アキがすぐに向けていた足を百八十度回転させて帰り始めた。

 別にこんな事をしなくてもいいと思われるのだが……。

 とりあえず心の中でそうは思っていても口には出さず、元のアジトへと戻ってきた。

 そうすると、何人かが探知結界の中に入ってきたが、すぐに抜けた。

 やはりレナとキリの学校七不思議にでも加えらた物が生徒達にとってはとても危険だ。

 だからしばらく、魔石争奪戦だと言う事も忘れてボクは久しぶりにゆっくりと寝る事が出来た。ソウナに寝る時間が長く感じたようにしても、やっぱり体は正直だったのだ。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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