いつでも無邪気な……
ボクが起きた時は日が高くなっている時間だった。正午ぐらいだろうか?
周りを見るために上半身を起こすと、掛けられていたのか、冬では暑そうなレディースのコートが落ちた。
「おはようございますわ。目覚めはどうですの?」
声がすると思ってそちらを見たら、レナが話しかけて来ていた。他の人はどこかへ行っているようだ。
「えっと、このコートは?」
「ソウナさんが何故か持ってましたの。どうやら寒がりらしくてこの時期にはまだ持ってるそうですわ」
なるほど。そういえばこんなコートを着ていたような気がする。だが今日は着ていなかった。カバンか何かに入れていたんだろう。魔石争奪戦に荷物を持ってきていない人は少ないのだ。
「それにしてもリクさん。疲れていたんですの? 今は十二時四十分ですわ」
レナが心配しながらそう言ってくる。
「ええ。ルナに徹夜で空白魔法を教えてもらっていましたので……」
朝に、少しの時間だけソウナの魔法を使って寝たが寝足りなかったようだ。やはり徹夜はするべき事じゃない。
「そうでしたの。あまり無茶はよくありませんわ」
「あはははは。ところで、みなさんは?」
「アキさん達でしたら罠の仕掛けを再三仕掛け直した後、少しの間だけ討って出ると言って出発しましたわ。そろそろ戻ってくるかと思いますわ」
つまり魔石を取りに出かけているという事か。いつまでもこうしていてもタイムアップを待つだけだと思ったのか。
それにしても、チームの中での前衛がボクと白夜しかいないのにどうして行ってしまったんだろう?
「起こしてくれれば、ボクも行ったのに……」
「リクさんはお疲れだと、ソウナさんが止めたんですわ。寝ているところを襲われても困りますし、わたくしが残る事にしたんですの。あと、ハナさんも残っておりますわ。ほら、あちらの方に」
そう言ってレナが指を指した場所に、湖の端でバシャバシャと水を跳ねて遊んでいた。まるで子供だ。母さんを思い出してしまったが、ハナにはどこか母さんと似ている部分があるのだろう。
ハナが残っている理由は、単に戦闘員じゃないからだろう。戦闘員でもないのに戦闘に出向かせるのはおかしいと思うし。ハナがこちらに残れば罠が無くなるという心配も無いからだろう。
「ハナさん。いつでも無邪気ですよね……」
「きっと悩みなんて無いんですわ。カナさんのように」
母さんにはむしろ、もっと悩みを持ってほしいとボクは思うのだが他の人はどう思うのだろうか?
「それにしても、魔石って今どこくらい集まっているんですか?」
「ここの罠にはまったチームの数なら、軽く数十チームはいきますわ」
その間。爆発音が滞っている間。ボクは爆睡していたのだろうか……。
そう思っていると、爆発音が連続して響く。
「……結構大きい音なのにボクは寝れていたんですか……」
「確かに、寝れていましたわ。わたくしも良く寝れていると思いますほどに」
「おぉ!? また引っかかったのね! 馬鹿ばっかりで楽なのね!」
そう言いながらハナが湖から出て足を拭き、靴下と靴を履いて急いで向かっていった。
「……大丈夫でしょうか?」
「ハナさん一人でも、それなりに強いですから。それに自分が仕掛けた罠だらけですわ。逃げ回るのは得意なの、知っていますわよね?」
そういえばそうだった。アキとハナはいつも授業を抜け出して先生に追いかけられていても簡単に逃げれるような人だった。生徒に追いかけられても大丈夫だろう。
そうして、しばらく経つと、ハナが戻ってきた。
「魔石ゲットなのね! ついでに使った分の〈自爆草〉も発動してきたのね!」
「御苦労さまですわ。ところで、アキさんから連絡は?」
「お昼だし、そろそろ帰るって言ってたのね!」
「わかりましたわ」
よかった。まだアキ達は倒れていないようだ。少し心配だったが、これで安心できた。
「それより、リクちゃん起きたのね! おはようなのね!」
「おはようございます。ハナさん」
「それじゃあ、アキちゃんが帰ってきたら即ご飯なのね!」
そう言いながらハナがごそごそと荷物をあさり始めた。すると出てくるのは食器や食材だった。そしてそれを並べ始めると……。
「さぁリクちゃん! 作ってなのね!」
完全にまかせっきりだった……。
「えっと、手伝うってことは……」
「私が手伝ったら全部炭になるのね!」
手伝わせてはいけないらしい。
助けを求めるようにレナに視線を送るが……。
「すみませんですわ。わたくし、産まれてこのかた包丁という物を持った事がありませんの」
どうやらレナもダメだったようだ。
どうして料理ができる人が向こう側に行っているのだろうか……。
「あ、でも火は使ってはダメみたいですわ」
「どうやって料理しろと……?」
まぁ火を使わなくてもできる料理はあるにはあるが……。
そういえば、食材はほとんどが魚類で、後はパンとかお米とか、乾パンだった。
どうしてそんな物を持っているのだろうか? 新鮮度は大丈夫か?
などと考えて手にとって見ると、新鮮以外の何物でもなかった。つまり、湖でとれたのだろうか?
「これなら、刺し身でも……。ですが、パンに刺し身は合いませんよね?」
「でしたら、お米を作ればいいのではないんですの?」
レナはご飯の作り方も知らないようだ。
「お米ってなんなのね?」
ハナに至っては米の事も知らないらしい。
重症だった。
「はぁ。どうして火を使ってはダメなんですか……?」
「煙が出ると原点されるみたいですわ。アキに聞きましたの」
なら煙が出なければいいのか。
「マナちゃんがいればいいんだけど……」
そうすれば火を使っても煙が出ない。なぜなら魔法だから。物が燃えたりしたわけじゃないからだ。
空白色の魔力を使いこなせれば火も使えるようになるというけど、ボクはまだその段階に居ないし……。
「それよりも、醤油ってあるんですか?」
「あるのね!」
ハナがすぐにポケットから醤油を取り出した。
「まな板は……」
「あるのね!」
ハナがすぐに同じポケットからまな板を取り出した。
「……もしかして包丁も……」
「あるのね!」
そう言って懐から包丁が出てきた。
「スリーアウト! 醤油も、まな板も! どうしてそんな所に包丁も入れてるんですか!?」
「弾丸に当たっても大丈夫なのね!」
「切れますって! 弾丸に当たらなくても激しい動きしてればいつか包丁の刃が当たって切れますって!」
「大丈夫なのね! 防弾チョッキ着てるのね!」
「どうしてそんな物持ってるんですか!? というかそれ着てるんだったらそんな所に包丁を入れる意味無いですよね!?」
「……あ。そういえばそうだったのね!」
「なんで気がつかないんですか……」
醤油も入れていた事もツッコミたかったが何とか我慢をした。
包丁だけでも十分疲れるほどだからだ。
「それじゃあ、アキさん達が帰ってくるまで下ごしらえでもしていますね」
「それでしたら、わたくしが水魔法でその二つを洗いますわ」
そう言ってレナがまな板と包丁を洗い、余計な水分を飛ばして乾かした。
「ありがとうございます。……でもいいんですか? これに魔法を使って」
「湖は綺麗にしておくべきですわ。水の精霊が悲しみますの」
レナが湖を見ながらそう言うので、ボクは水の精霊の声でも聞こえたのだろうと考えた。レナの言うことは理解できる。確かに、こんな綺麗な湖を汚すなんてできないだろう。
それなら、水をすくって別の場所で洗うぐらいの事はしたのだが……。
「それじゃあ、まずは魚でもさばきましょうか」
「手伝う事があれば……」「私もなのね!」
「うん。二人とも何もしなくていいですからね?」
とりあえず強く言っておいた。何か起こってからじゃ遅いと思ったからだった。
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