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自ら死を選んだ公爵令嬢と高潔な騎士のやり直し両片思い  作者: 葵和心


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嫉妬に狂う



挨拶を終えグラスを手に休憩、と思いきや、お母様がお父様を引っ張りどこかへ向かって行く。


慌てて私も後を追うと、カスティーラ帝国貴族の中で1番影響力のある侯爵家の当主様がいらっしゃった。


穏やかそうな老年の男性だが、ものすごく頭が切れる方らしい。


「初めまして。この度カスティーラ帝国となりました地を治めますアルタリスクと申します。今後とも宜しくお願い申し上げます。」


「ほう、殿下に協力を求めたマムラ王国の貴族か。お主のあの判断は正しかった。恥を捨てて敵に助けを求める、その潔さは真に国を思っておらんとできんことよ。」


「恐れ入ります。」



それからいわゆる上位貴族への挨拶へ行き、とりあえずやるべき事を終えたお父様とお母様は緊張から解放され、グラスのお酒を一気に飲み干していた。


私も水の入ったグラスを口につけて会場を見渡した先に目が釘付けになる。


全身黒の騎士様


前に見た騎士服とは違う黒い服に黒いマント

ところどころに差し色で赤色が入っている。

腰には剣、胸にはいくつも勲章が輝いている。


綺麗な碧眼に少しかかっていた前髪は全て後ろに流され、綺麗なお顔が全て曝け出されている。


「グレジア様…、」


思わず漏れた声は誰にも届かない。


眉を寄せた表情は怒っているようにも見える。

グレジア様の周りには御令嬢が何人かいらっしゃるようで、一定の距離を保つ御令嬢たちの中から1人の御令嬢がグレジア様に寄り添った。


ズキンと胸が痛くなったが、目は離せない。


ものすごく綺麗な御令嬢が親しげに話しかけている。

グレジア様が話す様子はないが、元々そういう方だ。


あの御令嬢のように華やかさがあれば私にも少しは惹かれてくれたのだろうかと、華やかさと程遠い銀髪を手に握る。



ゆったりとした音楽が流れ、夫婦や恋人らしきカップルが中央へ向かい始めた。


リラックスした雰囲気とお酒の力で踊る方たちはとても楽しそうだ。


「フィオナ、踊ってきても良いかい?」


目が少し輝いているお父様

ダメだと言う理由がないため、頷くと嬉しそうにお母様の手を取って行ってしまった。


寂しくなった私は壁際に立ち、じっとグレジア様を見つめていた。

グレジア様にダンスの相手はいないのか、御令嬢方が誘っているが、全て断っているように見える。


「…私も踊りたい、」


グレジア様と。



「では、私と踊りませんか?御令嬢」


「え、…?」


目の前には私に手を差し出している殿下の姿


ありえない事態に状況が飲み込めない。

固まる私とにこにこ笑っている殿下


そして周りからは突き刺す視線を感じる。


何故私?殿下には婚約者はいないのですか?

そんなことを考えるが、王族からのお誘いを断ることなどできるはずもないのが現実


「私でよければ喜んで。」





年に数回ある陛下主催のパーティー

このパーティーだけは第三騎士団団長として出席しなければならなかった。


窮屈な第三騎士団団長の正装に身をつつみ、髪も全てかきあげる。


「お、相変わらずムカつく顔だな。1回ぐらい交換してくれよ。」


「1回と言わず、ずっとでも構わないですが。」


「こいつ腹立つ!殿下と女を2分してるくせによ!」


「俺は迷惑でしかないですから。何故平民の俺に付き纏うのか謎です。」


「それは団長という地位と、「顔!顔だけだよ!」


第一、第二の騎士団団長たちとともに会場へと向かう。


俺は平民なんだ。貴族にこんな目つきの奴はいないだろ。という気持ちで迫ってくる令嬢たちを睨みつける。


一方で俺は平民だ。と自分自身にも深く刺さる。

彼女には釣り合わないという現実が。



パーティーも中盤となり、やる事もないが騎士団団長のため会場の警備も兼ねていることからパーティーは最後まで出席しなければならないのが苦痛でしかない。


「ウィルフレッド様、お久しぶりでございます。本日も大変麗しいお姿ですわ。ウィルフレッド様の正装に合わせてドレスを赤にしてみましたの。どうですか?」


「触らないでいただきたい。」


「そんなことおっしゃらないで。私とウィルフレッド様の仲じゃない。」


舌打ちしそうになるのを堪え、呑気に踊る貴族たちを眺める。


すると、あちら側がざわつき始めた。

トラブルではなさそうな雰囲気に何事かと見ていると、息が止まった。



妖精だ、あの時よりさらに輝いている。


綺麗な銀髪、真っ白な肌、淡い色のドレス

全身が光を浴びて、本当に妖精のようだ。


見惚れていると妖精の背に汚らわしい手が添えられた。

見ると、ジークではないか。


ジークが彼女と至近距離で寄り添い、手を握り、彼女に触れている。


「ウィルフレッド様?」


両手を握り締め、ジークを睨みつける。

今すぐ駆けつけて引き剥がしたい欲に駆られるが、彼女の何者でもない俺がそんな事をしたら彼女に迷惑である。



彼女に触るな。

顔を近づけるな。

耳元で話しかけるな。


…そんな可愛い顔を他の男に見せないでくれ。

何を言われた?何故そんな顔を赤くしている?

ジークはダメだ。

あいつにはずっと前から心に決めている女がいる。

だから他の男にしてくれ。


他の男…もダメだ。全員彼女に対して下心しかない。


彼女と彼女の大切なアルタリスクを守れる男じゃないと、許せない。

彼女にあんな悲痛な思いはもうして欲しくない。



だから、ジーク!お前にはキキがいるだろう!!

彼女に不用意に近づくな!今すぐその手を離せ!



眉を顰め、殿下を睨みつけてる第三騎士団団長の姿は令嬢たちを震え上がらせた。




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