8章
「助けてくれてありがとう、俺はAランクのアルスだ」
「私はCランクのアリスです」
「Cランク!?その実力で?」
「その実力で、申請した当日にCランクに」
「なるほどな・・・」
2、3会話した後、商隊のメンバーがアリスを呼びに来た。
「リーダー、依頼主が助けてくれた嬢ちゃんと話がしたいって」
「らしいが、アリス来てくれないか?」
「かまいませんが、その前にそちらの負傷者の状況は?」
「? えっと重傷が4名、軽傷が6名だが」
「了解。片手じゃ厳しいか・・・」
「いったい何を・・・?」
そう問われるが説明もメンドいので影収納から森で捕った魔物肉のブロックを取り出す。
「「それを何に?」」
リーダーと呼びに来たメンバーが問う、が「治療に使う」とだけ答える
そのままブロック肉を左腕の切断された部分に押し当て、「復元」と唱える。
すると、ブロック肉があわ立つようにして伸び、瞬く間に左手の形をとる。
唖然とする2人をよそに、左手の動きを確認したあと、両手を商隊に向けて影で魔方陣を展開。
気配察知で人の把握、神眼でけが人の状態の確認をし、魔力を操作して右手でけが人の位置に、左手で怪我の治癒に振り分ける。
すべての工程を1秒ちょいで終え、小さく「再生」と唱える。
瞬間、魔方陣から青白い光が発生し、商隊を包み込む。
「な、何したんだ!?」
と詰め寄られたので、端的に「治療した」とだけ答える。
「治療した、って・・・」と釈然としないリーダーの問いに、湧き上がる商隊からの歓声がけが人が治療された事実を裏付ける。
「すまねぇ嬢ちゃん。助けてもらった上に治療までしてくれるなんて」
「いえ、さて依頼主の方がまってるのでしょう?」
「あぁ、こっちだ」
ついて商隊にいくと、「腕が動く」や「もうだめかと思ったのに」など歓声があちこちから上がっていた。
それらの間をとおり、一番大きい馬車のところに着くと「君が助けてくれたんだね」と一人の身なりのいいおじさんが声をかけてきた。
「初めまして、私はこの商隊を運営するクラーヴァ商会のオーナーで、アース・クラーヴァと申します」
「Cランクのアリスです」
「アリス様、このたびは商隊を助けていただきまことにありがとうございます。こちらは少ないですが謝礼の・・・」
「あ、謝礼はいいですよ」
「なぜですか?」
「困ってる人を助けるのは当たり前ですし、失礼な言い方ですが熊を狩ったらあなた達も助かったという思いなので」
「ですが、助けていただいたのに謝礼を渡さないのもまた失礼では」
「・・・謝礼はもういただいております」
「それはどういうことですか?」
「あなた達の中に誰一人死者がいなかった。皆生きているという事実が私にとっては一番の報酬なので、それ以上のものはいただけないです」
前世の持論「命は何を積んでも買うことは出来ず、また代わりも存在しない」
生きていればどんな形でもやり直せるが、死んでしまえばそこで終わり。だから私は自身も含めて味方の生存率を徹底的に重視してきた。
「ですが、けがをされた護衛の方々を治した件は・・・」
「それはサービスです。たとえ生きていても怪我をしていれば治療に時間がかかる。その療養時間は冒険者には致命的ですから」
「確かに、完治しても勘が戻らず引退する冒険者もいると聞きますから」
「なので、礼も謝礼も不要です。それでは」
そう言い、私は空間移動で王都付近まで転移する。そしてギルドに報告に戻ったのだがソコでも問題が・・・