17章
翌朝、ギルドに顔を出すとこちらを見てさっと顔を背ける人たち。何かした・・・訳じゃないか肩書きか。
ほっといて依頼掲示板を眺める。討伐、採取、どれをしよう・・・てか初めてだな依頼見るの。
「おいどけよ、てめぇみたいなガキが冒険者きどりかよ」
「ぎゃはは。嬢ちゃんみたいなチビは薬草採取でもやってなよ」
とテンプレがらみ。・・・この人たち最近此処に来たのかな。「おい誰か止めろよ」「ヤだよお前行けよ、俺はまだ死にたくない」 いや殺さないから。ちょっとおはなしするだけだから。とどう料理してやろうかと男達を眺めてるととなりから
「おい、ボリスにギリー。ソイツに絡むな、むしろ早く謝ったほうがいいぞ」
「お、ダニエルの兄貴じゃないっすか。なんでこんなチビに謝らなきゃ?」
「はぁ、お前らも噂は聞いてるだろ。レッドグリズリーの群れを1人でしかも短時間で討伐した影の女王の噂は」
「あれだろ、黒髪黒服のガキでえげつない影魔法をつか・・・」
とギギギとこちらを見て固まる。私はにっこりと笑ってあげる。遠巻きに見てた冒険者は逃亡した!
「「も、申し訳ありませんでした!」」
いきなり綺麗な土下座で頭を床にぶつける勢いで謝ってきたので、「いいよー。でも、"次"は無いからね」と殺気をこめた笑顔(所謂笑ってない笑顔)で許してあげる。と「「ひぃ~」」と逃げていった。まぁ放っとこう。ところでこの人誰だ?
「あぁすまんな。俺はダニエルってんだ。一応Bランクだ」
「これはどうも、初心者冒険者のAランクのアリスです」
「お前さんが初心者かよ。二つ名までもらってる実力者なのに」
「けど達成依頼は1個のみ。受けた依頼も1個のみ。コレってベテランなんですかねぇ」
ちなみに駆け出しの初心者冒険者が良くやる薬草採取もやったことが無い。
「あー・・・確かに。実績が無いんじゃ初心者とも言えるなぁ」
と苦笑い。残ってた冒険者からも「確かに」とか「そういやそうだな」とか聞こえてくる。
「だからまぁ、なんかいい依頼か常設ないか見てたんですけど」
「あいつらが絡んできた、か」
「まぁあいつらに言われなくても薬草採取行こうかとは思ってましたがねぇ」
「お前さんの実力で薬草採取かよ」
「ぱっと見は駆け出しですよ?」
「違いない」
と二人で笑う。なかなか気のいいアンちゃんだ。
「てな訳で宿代稼ぎに行ってきますわ」
「おぅ、気をつけて・・・は嬢ちゃんに言うセリフじゃないな」
「あぃ。ダニエルさんも気をつけて」
と別れて常設の薬草採取のためにクトゥの森に向かう。ここの辺縁によく自生してるらしい。
王都から出てのんびり森に向かう。と、森が見えたところで走ってくる人影が。よく見るとあちこち怪我してて防具もかなり傷んでる
「どうかしたんですか?」
「あぁ、嬢ちゃんこの先の森にむかうのか?」
「ええ、薬草採取しようかと」
「・・・そうか、気をつけてな。俺は急いでギルドに向かわないと」
「何かあったんですか」
「辺縁部から少し入ったところで俺の仲間がやられた。何であんなところにウインドフラワーが居やがるんだ」
ウインドフラワー。確かBランク上位の魔物だ、が彼の言うように深部付近にいる魔物のはずだ。
「なる。なら私が救助してついでに近くの魔物の変移も確認しときましょう」
「な、嬢ちゃんみたいな駆け出しじゃ自殺行為だ!悪いことは言わんから逃げたほうがいい」
「一応Aランクなんで任せてくださいな。仲間は私が助けるんで、あなたはギルドに報告と森の調査要請を」
とギルドカードを見せて証明する。と、何か納得したのか「分かった、仲間を頼む」と任された。
走り去る彼の背中を一瞥し、森に向かって神眼を発動して状況の確認をする。
「入って1km無いところで2人の反応、か。まだ生きてるな」
と確認したところでそこに影転移。と装備も身体もボロボロな二人がかろうじてウインドフラワーと対峙していた。
「な、新手か!」と驚かれたが放置してウインドフラワーを影槍で串刺しにして瞬殺する。
「救助か、助かったぁ。あー死ぬかと思った」
ともう一人は大の字で仰向けに倒れる。おい出血量がやばいぞ。急ぎ回復魔法で2人の怪我を治す。
「すまんな、助けてもらった上に回復魔法までかけてもらって」
「かまいませんよ。ただ、怪我を治しただけなんで血と体力は回復してないので」
「分かった。怪我さえ治ればこっからなら街まで戻れる。改めて助けてくれて感謝する。俺はDランクのジードだ」
「私も同じDランクのミリー。もう一人ダナーってのがいて、彼は今ギルドに救援に走ってもらったの」
なるほど、森の外でであったのはダナーだったんだ。
「もしかしてダナーにあった?」
「ええ。辺縁から少し入ったところでウインドフラワーに襲われたって聞いて。一応彼にはそのままギルドに報告に走ってもらったの」
「そうか。しかし嬢ちゃんはどうしてこの森に?」
「辺縁で薬草採取をしようかと」
「え、もしかしてFとかEランク?」
「いやあの実力じゃありえんだろ」
と疑問符が飛んでるので「冒険者経験がとても浅いAランクです」と説明する。となにやら納得したらしい。アレ?
「容姿といい、影魔法といい。やっぱり噂の女王様か」
「だねぇ、納得」
「まぁそれより、今は引いて養生したほうがいいですよ」
と話していたら、急に魔物の気配が増えてきた。どうにもやばい連中も混じってるな。
「な、なんかたくさん出てきた!」
「くそっ。数が多すぎるし強すぎる!」
確かに数が多い。見える範囲で20は超えてる。気配察知には100はくだらない反応がある。しかもどれも最低Cランクだ。
「まずいんでいったん引きますよ」と強引に彼らを飲み込む形で影転移を発動させる。直感が、これだけじゃないと言う警鐘を鳴らしていたから。