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Made for You  作者: 依代 蓮
Maid for You
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1/9

Maid for You①

 人は、誰かに許されることで変われるのか。


 それとも、


 誰かを許したことで変われるのか。


 あの頃の俺には、まだ分からなかった。

 体育祭が終わってから、クラスラインは開いていない。


 通知だけは増えていく。

「今日の打ち上げの場所ここな!https//....」

「時間遅れんなよー!」

「来るの何人だっけ?」

 画面を閉じる。


 俺は参加しない。いや、できない。


 スマホをポケットに突っ込み歩き出したはいいものの、家に帰る気分でもない。


「ユウくん!」

 名前を呼ばれた気がして振り返る。だが違った。知らない制服だ。


 …誰かに名前を呼ばれるだけで怖い。

 そんな自分が嫌になる。準備の時からそうだった。

 俺は人を呼べなかった。人望がなかった。


 だからリーダーとして、失敗した。

 それだけならよかったのに…


 信号の音で足を止める。ふと顔を上げて周囲を見た。


 You May


 メイド喫茶。普段なら絶対に入らない。


 だけど今日は、誰でもいいから、”俺を知らない人”と話したかった。


 カラン


 扉を開けると小さなベルが鳴った。


「おかえりなさいませ、ご主人様。」


 店内は思ってたよりも静かだった。


 薄桃の木目調のテーブル。

 柔らかな照明。

 どこか喫茶店に近い空気。


「初めて…ですよね?」


 声をかけられて顔を上げる。


 まっすぐ伸びた黒髪の少女だった。白いフリルの衣装なのに不思議と派手な印象はない。


「えっと…はい」


「いったん席行きましょっか。あっ、指名の娘とかいました?」


「いや、特にないです」


「じゃあ不束者ですがよろしくお願いします」


 彼女は少しだけ笑った。営業用だろう。

 でも、その笑顔はどこか自然だった。


「私、そらっていいます」


「…真野です。真野まの ゆう


「悠くん、ね。」


 名前を呼ばれた。責める響きのない、自分の名前。


「そこ座って」


 個室のブースに案内される。向かい合って座る。


 少しの沈黙ののち、先に口を開いたのは天だった。


「学校帰り?」


「はい。」


「じゃあ高校生か」


「はい」


「そうなんだ」


 そこで会話は切れた。普通なら気まずい沈黙だった。


 でも彼女は急かさなかった。


 話題を無理に探そうともしない。


 ただ、じっと見て、待ってくれた。


 沈黙ごと受け止められてるようで、その時間が少しだけ心地よかった。


「…何か、あったの?」


 その一言だった。


 たった一言なのに。


 胸の奥に蓋をしたものが、少しだけ揺らいだ。


「そんなに、分かりやすいですか」


 天は苦笑し首を横に振る。


「ううん。」


「ただ、そういう顔をしてる人を私は知ってるから」


「…そういう顔」


「うん。」


 少し間をおいて、天は続けた


「”一人で抱え込みすぎてる人”の顔」


 思わず目を伏せる。


 図星だ。


「話したくないなら話さなくて大丈夫。」


「ここって、そういう場所でもあるし」


 その言葉、裕は初めて「メイド喫茶」という場所を誤解していたことに気づく。


 かわいいメイドと話して楽しむ場所。


 そんなイメージしかなかった。


 けどこの店へは、話を聞いてもらうために来る人もいる。


 だからなのか。この店の空気は不思議なくらい落ち着いていた。


「…笑わないですか」


「笑わないよ」


 即答だった。


 その迷いのなさが背中を押してくれた。


「実は———」

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