悪魔使い
モンハンたのしかったです
2026年 6月26日 金曜日 09:48
古来より人間は悪魔と共に歴史を歩んできた。
その中で人は悪魔に時に犠牲を強いられ、時に助力を得る事によって生存してきた。
そんな長い共同の生活もある時、人間が手に入れた力で一変する。
悪魔使い。
「異界の中で魔力の消費無しに物体を高速で移動させられる筈がない、だがあの子供からは魔力を感じない」
再び顔面目掛けて飛んできた矢を両手で掴むと、会田はそれを古森の顔面へ投げ返す。
だが矢は彼に当たる寸前、空中で制止する。
それを見た会田は、顎まで滴った汗を右手で拭いながら確信した。
「先ほどから感じる矢から伝わる魔力は悪魔固有の物……なるほど、悪魔召喚ですか」
「流石にバレるっスか」
古森は自らの眼前で制止した矢を右手で掴むと、ペン回しをするようにそれを回転させる。
「その通り、自分が作った特製の矢に悪魔を憑依させてるっスよ」
「悪魔召喚は今や秘中の秘の筈、それをこんな子供が……」
「子供子供ってうっせーな、アタシ等より年上だからって見下してるんじゃねえ! 大人しく罪を認めやがれ!」
古森の事を冷静に分析している会田に、晶が釘バットを構えながら叫んだ。
「叫んで虚勢を張っても意味がありませんよ、確かにさきほどは不意を突かれ語気も荒くなりましたが以前としてこちらの方が有利なのは変わっていません」
「んだとぉ!?」
「証拠をお見せしましょう、アバドン!」
「GYHIII!」
晶に対しても悠然と構える会田は、前髪をかき上げながら自らの背後に居る悪魔の名を呼んだ。
アバドンは主の声に呼応して叫びを返し、続いて室内全体が揺れ動き始めた。
「おわわわ!」
「な、なんだ!?」
「地震ですキング先輩!」
「カテドラルの中で地震が起きるものか、アバドン自身が揺れ動いている! 何か来るぞ!」
突然大きく揺れ始めた室内に誠達は体勢は崩さないようにしながら、部屋を見回す。
すると、部屋の左右にあった壁が下へと下がっていき……その奥から頭部がバッタに置き換わった人間が現れた。
「なんだこいつら!?」
「ふふ、彼らは我等が運命会が悪魔と合体させた人間です。 アバドンはこれ自体が倉庫のような悪魔でね、直接戦闘には不向きなのですが……何かを収容する事に関しては正に世界一なのです」
「合体? 悪魔と人間をっスか!?」
「えぇ、彼らはその失敗作でしてね。 単純な命令しか聞けないのでこのアバドンの中に廃棄していたのです」
「ひ、ひどい……何でそんなことをするんですか!」
何故、という言葉に会田は一頻り笑うとこう答えた。
「彼らは皆、元債務者なのです。 金の無い人間は世の中には必要ありません、むしろ我々の役に立つことで彼等も生まれてきた意味があるというものです」
「……必ず改心させてやる!」
「この状況でそう意気込めるのは大したものですが、いつまでその強がりが続くでしょうね」
会田と誠達が話している最中も、左右からはゆっくりとバッタ人間達がぞろぞろと現れる。
「さぁ、彼らを殺しなさい失敗作ども!」
「ギ、ギギ……ギシャアアアア!」
会田の命令に、操り人形のようにぎこちない歩き方をしていたバッタ人間達は一斉に顔を誠達へ向ける。
そして、複数のバッタ人間達が叫び声を上げながら彼等へ飛び掛かった。
「クイーン、ルークとビショップの援護を! ルークは遠距離から砲撃してビショップに近寄らせるな!」
「あいよ!」
「りょ、了解です!」
飛び掛かってきたバッタ人間の腹部に拳を打ち付け殴り飛ばすと、誠は振り返らずに他の三人に指示を出す。
晶、花もその指示に頷きながら襲い掛かるバッタ人間を死なないように投げ飛ばしていく。
「ビショップはクイーンの援護と打開策を考案を、俺は奴を捕まえる!」
「何か自分だけ仕事多くないっスか!? ともあれ了解っス!」
「なるほど、数的不利を打開する為に私を捕縛するつもりですか」
バッタ人間に襲われる誠達を見ながら、その指示を聞き会田は頷いた。
誠はそんな会田を見るや否や、間髪入れずに拳を握ったまま飛び掛かる。
「はぁぁっ!」
「ではこちらも相応の準備をいたしましょうか」
誠は握った拳を会田の顔面目掛けて振るうが、それらが直撃する寸前に足元から何かが無数に集まり衝撃を吸収すると誠を弾き飛ばした。
「なんだ!?」
地面に弾き飛ばされた誠は即座に体勢を立て直し、会田を見た。
そこには無数の紙幣が壁となり、会田を覆っていた。
「この世で最も偉大なものが何か知っていますか? デアデビルのリーダーさん」
「……何?」
「尊いもの、大事なものと言い換えてもいいでしょう、あなたにとっては何ですか?」
「人の命と幸福だ」
「ははは、なるほど。 いかにも正義の味方ごっこをする子供っぽい答えですね」
会田を覆っていた紙幣は徐々に形を変えていき、鎧の様なものを形成した。
頭部は王冠を模した形となり、会田はそれを触りながら誠の答えを嘲笑う。
「この世で最も偉大で尊い存在、それは金ですよ、金」
恍惚とした表情で、会田は言葉を紡いでいく。
「金さえあればどんな卑しい身分の人間も等しく上位の存在になれる、金さえあればあらゆるものが手に入る! 金、金、金が全てです!!」
「だからなんだっていうんだ、お前にとって金が至上の物であったとしてそれを他人から奪い取っていいと思っているのか!」
「資本主義はそれを許容しています、奪われるものは弱いからそうなるのです、しかし奪われた者もまた誰かから奪えばいい、それが現代社会なのです」
「だがそれは人を騙したり、ましてや誰かに迷惑を掛けて奪い取ることを許容するものではない!」
「潔癖症の子供はこれだから困ります、金持ちがやる事は何でも合法なのです、それが金の力!」
王冠を触っていた手を止めると会田は誠を見て、力強く一歩を踏み出した。
その勢いは凄まじく、足元の地面を踏み砕きながら会田は誠へ拳を繰り出す。
「ぐっ……!」
「金さえあればこの世のゴミの様な人間も我々の役に立てるように作り替えられる! どうです、失敗作と言えども魔人に近い力を持つ奴らは!」
会田の左拳を両手で受け止めながら、誠は後ろで戦う晶達を見た。
晶の蹴りや花の武器による殴打を受け、一度は後方に吹き飛ぶが自らの負傷も気にせずそれらは直ぐに起き上がると再び彼女達へ襲い掛かる。
「だぁぁ、くそ! しつっけえ!」
「どんどん数が増えてますぅぅぅ! ビショップ先輩、どうにかしてくださーい!」
「も、もうちょい待って欲しいっス!」
自らの背後で奮戦する晶達を見て、誠の頬に一筋の汗が流れた。
「あれでも彼らは元人間、今でも自我が無くなっただけでまだ生きています」
「外道め、どうやったら彼らを止められる!」
「私が指示を下せば止まりますよ、もっともその気はありません。 または彼らを殺すしか方法はありませんね」
「くっ……」
「さぁどうします? あなたにとっては他人の命と幸福が大事、しかし後ろで戦う仲間の命も大事……助ける為には彼らを殺すしかありません、あなたにそれが出来ますか!」
人の命を奪う、そう言われ誠は一瞬その光景を想像した。
その間隙を縫うように、会田は誠へ足払いをすると体勢を崩した彼の足を掴み、近くの壁に放り投げた。
「うわっ!」
強烈な勢いで壁に叩きつけられた誠は壁面をずり落ちながら地面に着地する。
直ぐに立ち上がろうとする誠に対し、真上から無数の蹴りが見舞われた。
「ぐっ、なんだ……!?」
「ギ、ギ、ギィィィィ!」
バッタ人間達だった。
彼らは誠が壁面にぶつかったのを見た途端、彼に向って群がると攻撃を加える。
「囲まれたぞキング、一度距離を取れ」
「分かってる……ごめんなさい!」
誠はそう謝罪の言葉を叫ぶと、自らを中心に炎の柱を巻き上げバッタ人間達を怯ませ囲みから脱出する。
バッタ人間達は誠の炎に巻き込まれ、悲痛な叫びを上げた。
「おやおや、他人の幸福を貴ぶあなたがまさか彼らを傷つけるとは……先ほどの言葉は嘘でしたか」
「お前が攻撃させておいて何を!」
「おや、私のせいですか? 相手を傷つけるのが嫌ならそのまま蹴られ続けて死んでいればよかったではないですか」
脱出した誠を会田は再び嘲笑う。
「そうしないのは自分が大事だからでしょう? 私も同じことです、他人から奪うのは私の為……あなたが彼らを傷つけたのもあなたの為、主張の違いはあれど我々に差異など無いのですよ」
陰湿な笑みを浮かべながら、会田は近くに居たバッタ人間の首を右手で掴んだ。
「ア、ガ、ギギ……」
「こんな奴らに配慮する必要などありません。 彼等は家畜と同じ、金を奪ったら肉、肉を奪ったら骨! 体の一片まで我々の道具なのです!」
「ア、ア、ア……ヤ、メ……」
「や、やめろぉ!!」
「タズゲ……!」
ボキッ、という骨が折れる音が戦闘を繰り広げる室内に静かに響いた。
バッタ人間は口から泡を吹き、会田はそれを地面に無造作にゴミでも投げ捨てるかのように放り投げた。
「おっと、汚い血が手に付いてしまいました……全く下級国民にすらなれない下賤な存在はこれだから」
「き……貴様ぁぁぁぁ!」
「子供は本当に御しやすい、さぁ出番ですよ家畜ども!」
それを見た誠はわなわなと両手を震わせ、会田を睨みつけ走り出した。
その視線に一瞬怯むが、直ぐに会田は残りのバッタ人間へ指示を出す。
だがいつもなら会田の指示に絶対服従のバッタ人間達は、立ち尽くしたまま一歩も動かない。
「ぐえぇっ!」
彼等が動かず困惑する会田に誠が渾身の一撃を顔面へ突き立てた。
会田の顎を捉えていた拳が殴りぬけると、会田の全身ががくがくと震え始める。
「ば、馬鹿な……何故家畜共が動かない……?」
「へっへっへ、頭の良いあんたに一つ教えてやるっス」
会田の右から、古森の声が響いた。
視線をそちらへ向けると、晶達を襲っていたバッタ人間達も立ったままの状態になっている。
「バッタってのは触覚を使って電磁波で指令のやり取りをしてるっス、その電磁波をかき乱してやれば……あんたの言う事を聞く奴は誰も居なくなるっス」
「キヒヒヒ!」
小型のバッテリーを右手に持ち、古森はそれを見せた。
バッテリーの内部からは古森の悪魔、グレムリンが意地の悪そうな顔を会田へ向けた。
「まさか、そんな……はっ!」
「お前がやった事の報いを受ける時だ、会田財!」
「ま、待て……! 金が目的か!? 幾らだ、幾ら欲しい!? 1億か!? 2億か!? 金ならや──」
「うおおおおぉぉぉ!!」
会田の言葉を遮って、誠は渾身の左アッパーを放った。
それは綺麗に会田の顎を捉え、体が浮かび上がる。
誠はそのまま、体を弓なりに引くと続いて右ストレートを会田の顔面に打ち付けた。
「るぅぅぅぅぅぅ!」
勢いよく、会田は彼の背後にある壁へと吹き飛び叩きつけられる。
「……俺が欲しいものはそんなものじゃない、他人の命と幸福を守る事が大事なんだ!」
「この、私が……敗北するなど、とぉ……」
誠の言葉を聞きながら、会田は気絶した。
遅れてすまぬ、すまぬ…今回からまたいつも通りに戻ります




