表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/108

帝国銀行

2026年 6月22日 月曜日 16:42


 東京駅。

 巨大な洋風の建物を抜け、あらゆる人達が今日も電車に乗り各地へ向かっていく。

 そんな駅に、彼等もまた電車に運ばれて到着する。

 改札から出ると、外は土砂降りの様相を呈していた。


「ふー、ったく相変わらず人が多いなここは……一仕事やる前から疲れちまうぜ」


「それでも東京の人は減ったって聞きますよ玖珂先輩、少子高齢化ですし」


「そういえば授業で受けた気がするな、確か今は4人に1人が75歳以上なんだっけ」


「確かに電車の中も年寄りばっかだったからな、将来が危うく感じるぜ」


「晶はそもそも学校の勉強をもっと頑張らないと将来の前に進級が……」


「うっせ!」


 誠の突っ込みに三人は笑いあう。


「ったく、知り合った時はアタシと同じアホだったのにこの2ヵ月ちょいで成績伸ばしやがって」


「わっ、閼伽井先輩勉強得意なんですか? 次のテストが近くなったら教えてもらってもいいですか?」


「あぁ、構わないよ」


「ならそん時はアタシも参加すっか、いい加減勉強しねぇとマジで進級があぶねえからな……」


 晶が頭を掻きながら、誠を見てしみじみと過去を思い出す。

 出会った当初、ビルの壁を蹴って風船を捕まえた青年は今、少しずつ成長を続けていた。

 そう思うと、晶の胸に嬉しさと悔しさの様な気持ちが滲みだすのであった。


「下らんことを話していないで気を引き締めろ、彼奴が来たぞ」


 3人の他愛ない会話に、アモンが呆れた表情で鞄から顔を出すと翼で前方を指し示す。

 アモンが示した方向へ3人が顔を向けると、古森が傘を差しながら近づいてきた。


「やぁ、皆お疲れ様っス。 今日はよろしくお願いするっス」


「こちらこそ、よろしくお願いします。 今日はこのまま帝国銀行に?」


「っスね、現地に行ったら後は君たちに任せるっス」


「はい、任されました! 異界に行っても古森さんは私達がきちんと守りますね!


「それは頼もしいっス、よろしくっスよ~」


 和気藹々に二人と話す古森を見て、晶は気に食わなさそうな顔をした。


「…………ふふん」


 晶の視線に古森は直ぐに気づいたが、どこ吹く風と気にせず一瞥を彼女に返した。


「ちっ! おら、くだらねーこと話してないでさっさと行くぞ!」


「あ、晶?」


「玖珂先輩?」


「……自分たちも行くっスか」


 大きく舌打ちをしながら歩き出した晶を誠と花、そして少しバツの悪そうな顔をした古森が追いかける。

 彼等が晶に追いついた時には、帝国銀行の目の前まで来ていた。


「さ、着いたっスよ。 ここが目的地の──」


「帝国銀行……大きいな」


「色山さんのビルも大きかったですけど、こっちはそれを横に広くしたみたいな感じですねぇ」


「こいつぁ、すげえな……」


 初めて帝国銀行を見た3人はその大きさに圧倒された。

 外観は洋風のレンガ造りで古さを感じさせながらも、幾度かの改修により近代化と増築が繰り返され……最終的にその大きさは5000平方メートルを超えていた。

 目の前の建物の奥には、更に巨大な白いビルが建ち威圧感を放つ。


「今目の前にあるのは一般用の銀行窓口専用で、実際の帝国銀行の本店はこの後ろにある白いビルの方っス」


「ならそっちの方に回り込まないとダメじゃねえか?」


「そういきたい所なんスが防犯上の兼ね合いで奥の本店に行くためにはこの一般用建物を通る以外に道が無いんス」


「げっ、マジかよ……」


 晶はうんざりした顔をしながら、目の前の建物を眺める。

 二階建ての建物ではあるが、銀行の位置は東京のど真ん中であり他の銀行の本店も密集している土地柄である。

 その為、周囲3キロ以内を複数の警察署に囲まれており警察の巡回も頻繁に行われていた。


「おまけに警察の巡回もかなりの頻度であって、正直侵入はかなりムズイっスね」


「ならどうすんだよ」


「君達は現実から現実の裏側……異界とやらに行けると誠君から聞いてるっス、つまりこっち側から侵入して金庫の中に侵入した所でこっち側に戻ればいいっス」


「あぁ、そういやそっか、ならアモン、早速やってくれよ」


 否定の言葉を告げる古森に、晶は疑問をぶつけた。

 すると彼は直ぐに答えを返し、納得したように晶は手を打った。


「愚か者め、こんな場所で異界への穴を開ければ衆目を引くことは想像に容易いだろう」


「あ? シューモク?」


「要するに人の目を引いちゃうから、前みたいにどこか近くで穴を開けようって言ってるんだよアモンは」


「確かにいきなり銀行の目の前で私達が消えるのを周りの人たちが見てたら不味いですよね……」


「実際自分はそれを偶然見かけてるわけっスしね」


「じゃあ一体どっから侵入すんだよ」


 全員からの否定の言葉に、晶は不機嫌そうに表情をムスっとさせながら全員に問いかける。


「ふっふっふ、実はこんなこともあろうかと手に入れておいたっス」


「何ですか、その鍵?」


 晶の問い掛けに、古森は昔のアニメにあった科学者風に笑うとポケットから古びた鍵を取り出した。


「こいつは近くの廃屋の鍵っス、歩いて五分くらいの場所だからその廃屋の中から行くっス」


「わぁっ、古森さん準備良いんですね」


「これ位は当然っス、戦いは始まる前の準備の量で勝敗が決まるっスよ」


「……そういうもんなのか、誠?」


「さぁ……ともかく準備してくれていたんなら都合が良い、行こうか」


 晶の疑問に少し首を傾げながらも、誠は眼前にある巨大なビルを再び見上げ闘志を燃やした。


─────────────────────────────────────


「うわわわわっ!?」


 ドサッ、という重い音と共に古森が異界に顔面から着地した。

 前転を失敗したような形で、誠達の後から入ってきた古森は眼鏡を外し顔を摩る。


「大丈夫ですか、古森さん」


「いや、恥ずかしいところをお見せしたっス……勢いよくジャンプして君達が消えた空間に飛び込んだんスがまさか普通に地続きとは思わなかったっス」


「ははは、皆最初はそうやって身構えるものですよ」


「なら良かった……ってなんスかその格好は!?」


 誠は右手を差し出すと、古森は眼鏡を掛けなおし彼の手を取り立ち上がるが直ぐに誠の格好に気づき驚愕する。


「あ、いや待って欲しいっス、そういや確か前に話を聞いた時に魔人になるとか言ってたっスね……もしかしてその格好が?」


「えぇ、これがこっち側での俺の姿なんです、アモンと合体する事でこちら側で戦う力を得ることが出来るんです」


「は~……成程っス、確かに奥の二人も格好違うっスね。 ……ところでそこの二人はさっきから何で固まってるんスか?」


 立ち上がり、先ほど侵入した部屋と全く変わらない場所で晶と花の二人は窓から外を見ながら固まっている。

 そんな二人を見て、二人は不思議そうに互いの顔を見合わせると近くにある別の窓へ近寄って外を見た。


「おぉ──」


「これはまた──」


 二人は外の光景を見て、暫くの間無言になっていた。

 先ほどまで居た華々しく人と物が溢れる東京、その裏側はそれとは完全に真逆だった。

 東京駅から先、日本橋に掛けては広大な荒野と化していた。

 更には大量の蝗が跋扈し、かろうじて残っていた建物の残骸などを貪っていく。


「正に世紀末って感じっスね……いや、黙示録っスかね」


「な、なんなんだよここ!? 出る場所間違えたんじゃねえのか!?」


「それにこの間のバッタも沢山居ます……」


「ふむ、ここまで荒れ果てた異界を見るのは久しぶりだな……カテドラルの範囲が広いのか?」


 先ほどの現実で見た帝国銀行の建物とは別の意味で、彼らは圧倒されていた。

 そんな中でアモンだけが冷静に状況を見定めていく。


「ともあれ外に以前倒したバッタが居るという事は間違いなく、この場所にあのバッタを操っている存在が居るということだ」


「もしくは関連する何かっスね、しかしこの建物はぎりぎり東京駅の近くだから何とかなってるみたいっスが……東京がこんな何も無い荒野になってるのを見るなんて驚きっス」


「あぁ、かなり強力な悪魔が居るようだ、先ほどの帝国銀行があった場所を見てみろ」


 誠が遠くに見える帝国銀行があった場所を指差す。

 その場所からは茶色い雲のようなものが定期的に排出され、吐き出された雲は直ぐにそのままどこかへと意志があるように移動を開始する。


「あれは……茶色い雲ですか?」


「いや、違ぇな……ありゃ外に居るバッタだ」


「どうやら行ってみる必要がありそうだね」


「あのバッタと戦うの、面倒なんだよなぁ……」


 晶はそう言うと、愛用の武器である釘バットを手に持った。


「古森さん、俺達が先行するので後から付いてきてください」


「バッタを倒して安全確保して進む、これですね!」


「あそこまで進むのにどんだけ時間掛かるんだか……」


「う~ん……いや、戦わないで何とかなるかもしれないっスよ?」


「え?」


 群れを成すバッタとの戦いを覚悟していた三人は、古森の言葉を聞き一斉に顔を彼に向けた。


「ふっふっふ、こんなこともあろうかと第二弾っス!」


 そう言って、古森は背中に廃屋の片隅に置かれていたボロ布を4枚手に取り笑った。


「さ、これを皆で身に纏うっス。 そうすればきっと襲われない筈っスよ」


「テメェ……ふざけてんのか?」


「うーん、こんな灰色の布を体に纏った位じゃダメだと思いますが……」


「ふっふっふ、皆忘れてないっスか? 自分は昆虫学も得意なんスよ、バッタって言うのはこういう色は認識できないんス」


「へ~……流石大学生ですね、古森さん! なんでも知ってます!」


 花は古森の言葉に素直に頷くが、残りの二人は半信半疑のままそれを体全身を覆う様に身に着け外に出た。

 どうせすぐにバッタに襲われるだろうと思っていた二人だったが、虫は誠達に気付かず相変わらず周辺を飛び回っていた。


「わっ、本当に襲われませんね!」


「……マジでか」


「現実のバッタの常識がバッタ型の悪魔に通用するとは……」


「ふっふっふ、自分、天才っスから。 他にもバッタは電波とかにも弱いんスよ、まぁこっちだと機械は動かないらしいんで意味ないっスけど」


 勝ち誇ったような表情をしながら、古森は帝国銀行があった場所へと歩いていく。

 彼の後ろ姿を三人も追った。

 道中も大量のバッタが何かを警戒するように飛翔していたが、それらを悉くやり過ごすと四人は目的地へ到着する。

 正確には、目的地があった場所に。


「オイオイオイ」


「入った時も驚いたけど……こっちはこっちで凄いな……」


「で、でっかい穴ですねぇ……」


 帝国銀行があった場所には、巨大な穴が空いていた。

 目測でおよそ五キロ程、丁度敷地の広さと同じだけの深い竪穴である。

 その穴の奥はとても暗く、見通せない。


「落ちたら死んじゃいそうっスねぇ……っておや?」


 誠達はその穴の手前にある大きな白い板──まるで巨人の歯の様な場所に立ちながら穴の底を見ていた。

 そこへ、穴の奥から飛翔音が響いてきた。

 古森が眉を顰めた次の瞬間、彼の眼前を大量のバッタが飛び上がっていき、上空で止まるとそのままどこかへと飛んでいく。


「……やっぱりこの穴の底からバッタが出てきてるみたいっスね」


「ってこたぁ、この穴の中に入るしかねぇってことか?」


「そうなるね、少なくともこのバッタが世間の人達に迷惑を掛けているのは間違いない、調べてみよう」


「ま、そーなるわな……しゃーねぇ、やるか!」


「はい、頑張って調べましょう!」


「自分も陰ながらお手伝いするっス、ので降りる際は誰かに背負って欲しいっス」


 誠の言葉に全員が頷き、誠は古森を背中に背負うと一斉に深い穴の中へ向けて跳躍した。




光速で時間と逆方向に動けば事実上今日は木曜日なので初投稿です

【閼伽井 誠 人間性ステータス】

教養 ★★★学校でトップレベル

勇気 ★★★警察官並み←Rank Up!

慈愛 ★★電車で妊婦さんに席譲れる

魅力 ★★一般高校生並み

ユーモア ★★人を笑顔にできる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ