戦いの疲れとともに
「ねーぇ、一体どうするのさ?」
カーテンを締め切った暗闇の中、黒髪の少女はソファにもたれ掛かりながら足をぶらつかせる。
「もちろん、今度こそ殺してみせるとも」
「そう言いながら、どーせまた失敗するんでしょ?それとも...その言葉が本当になるのかなぁ?」
あはははは!と愉快に笑う少女。
だが男の表情は、対称的だった。
「貴方に頼み事を。対象を捜索してくださいませんか?」
「えぇ〜。なんでエンヴィーに頼まないのさ?あの女の方が捜索は得意だと思うけど?」
頬を膨らませ、不満を零す。
「えぇ、そうですね。ですが彼女は、どうやら動きたくないようで」
「ちぇ、いじけなし」
「グラトニーは当分帰ってこないでしょう。ルクスリアも捜索に関しては可能ですが、貴方達よりは上手ではありませんし。スロウスは.....動きませんから」
「アワリティスは?」
「彼は、我らの中ではもう外れ者です。あまり信用はできません」
「そっかぁ〜。結局、あたしになるってわけか」
「行ってくれますか?スペルビア」
スペルビア、と呼ばれた少女は、不敵な笑みを浮かべる。
「ねぇ、最後はぐちゃぐちゃにしていい?いいよね?そうだよね??だって、最終的に見つけるのはこのあたしなんだからさ、君がいいよって言ってくれたら、あたしは思いっきり.....ぐちゃぐちゃにするよ」
「えぇ、構いません。対象の始末はあなたに任せましょう。相応の時が来たら、お知らせします」
「やったぁ!エンヴィーはやらかしたけど、あたしはそんなことしないもん!まっかせてよ」
愉悦のままに、少女は部屋を出ていく。
薄暗闇の中、男は空のグラスを手に取る。
「この世界は私達のものです。ただ、奪われたものを奪い返すのみ......」
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「目が覚めましたか?」
目を開いた時、魔女さんが俺を覗き込んでいた。
「......あぁ......」
まだ完全とは言いきれないが、多少体は動かせる。
戦闘はまだ無理だな。
「貴方で2人目です。まだ、魔術師さんと大剣の方が眠っています」
「そうか......アレアトは、起きてるんだな...?」
「えぇ。あの方は、4人の中で1番軽傷でしたから。今は、死竜の亡骸の所へ行っています」
「教えてくれて......ありがとな......」
両腕で支えながら、上半身を起こす。
だが、上手く起き上がることが出来ない。
「.....君はまだ、寝ておくべきだよ......」
ドアから、ネモが覗き込んでいた。
同じくらいに、目が覚めたのだろうか。
「いや......アレアトの所に行く。......肩を、貸してくれないか......」
「......」
少し拒むような表情をしていたが、それでも部屋へ入って来て俺の身体を持ち上げる。
「.......悪いな」
「皆さんが帰ってきた時に、昼食を用意しておきますね」
ネモに支えられながら、死竜と戦った場所へ向かう。
近くはないが、遠くもない。そんな場所だった。
「......お前......華奢なんだな......」
布越しでもわかる。初め見た時から、華奢だと思っていたが、こうして少し触れると、その細さが分かる。
まさか、そんな身体で等身近くの大剣を扱っていたとは......。
「......着いたよ...」
木々はなぎ倒され、地面は抉れ。
そこに生命の気配はなくなっていた。
「アレアト......何をしているんだ?」
「カタルシスとネモだったか。目が覚めたんだね」
アレアトは死竜の残骸を手にしている。
「それ......どうするんだ?」
「オレのマジックアイテム内で保管しようと思って。その方が安全だと思ってね」
「なら、手伝うよ。独りだと大変だろ?」
そう言い、死竜の残骸を拾っていく。
基本鱗が多いが、爪や角、牙が残っていることもあった。
「ネモ、簡易図書館を設置してくれないか?」
「わかった.....」
ネモはアレアトからマジックアイテムを受け取り、平らな地面へ設置する。
「ある程度残骸が拾えたら、マジックアイテムを踏んでくれ。そしたら、中へはいることができる」
「そんな風になってたのか......」
腕いっぱいになるまで残骸を拾う。
後はネモが拾いきればもう残骸はのこっていない。
(もうそろそろマジックアイテムの中に入ろうかな...)
マジックアイテムへ近づき、そっと足を持ち上げる。
間違って壊してしまうのは怖いからと、ゆっくり足を下ろす。その瞬間ー
「っ......?!」
一瞬にして目の前の景色が切り替わる。
高い天井に、ずらりと並んだ本棚。
天井のステンドグラスからこぼれ日が降り注ぐ。
「カタルシスは初めてだったね。ようこそ、
オレの図書館へ」




