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V

午前三時十四分。

これを読んでいる人がいたら、先に言っておきます。

私は正常です。

少なくとも、ヴィーナスの腹を開くまでは正常でした。

きっかけは戦争映画だった。

二本観た。

どちらも人間が壊れる映画だった。血が出る。肉が裂ける。死ぬ。

だから同じだと思っていた。

違った。

ぜんぜん違った。

一本は、内臓でヴィーナスを作っていた。

もう一本は、ヴィーナスの内臓を見せていた。

わかる?

わからなくてもいい。私も昨日まではわからなかった。

最初のものを、

Venus ex Visceribus

と呼ぶことにした。

内臓から生まれたヴィーナス。

VeV。

汚いものを集める。血。肉。泥。恐怖。 絶望。

それを積む。

積む。

まだ積む。

すると、どういうわけか最後に美しいものが立っている。

人間は捨てたものじゃない。愛はある。 善はある。信仰はある。

おかしい。

材料は全部、内臓だったはずなのに。

ヴィーナスができている。

これがVeV。


問題はもう一つだ。

Viscera Veneris

ヴィーナスの内臓。

VV。

こっちは逆。

最初からヴィーナスがいる。

祖国。正義。勇気。友情。犠牲。家族。 英雄。

美しい。

みんな美しいと言っている。

だから腹を開く。

すると入っている。

恐怖。偶然。肉。排泄物。命令。数字。 誰かが決めた作戦。帰りたいという気持ち。

ヴィーナスにも内臓があった。

当たり前だ。

当たり前なのに、

私たちは見ない。

だからVVは嫌われる。

「そんなもの見せる必要がありますか」

ある。

だって入ってるから。

VeVは、醜いものから美しいものを作る。

VVは、美しいものの中にある醜いものを取り出す。

矢印にすると簡単。

VeV:Viscera → Venus

VV:Venus → Viscera

ここまで書いたところで、私は少し怖くなった。

映画だけじゃない。

恋愛にもある。

家族にもある。

会社にもある。

宗教にもある。

国家にもある。

たぶん、思い出にもある。

思い出はだいたいVVに弱い。

綺麗にして保存したものほど、腹を開けたときに臭う。

逆に、最悪だった日のことを何年も覚えていて、ある朝突然、

あれは愛だったのかもしれない、

と思うことがある。

それはVeVだ。

つまり私たちは毎日、

内臓からヴィーナスを作ったり、

ヴィーナスから内臓を取り出したりしている。

気づいていないだけ。

だから、もしあなたが何かを書いていて、

残酷な場面を入れたくなったら、

一度だけ考えてほしい。

血の量じゃない。

首が何本飛ぶかでもない。

あなたはいま、

内臓でヴィーナスを作っているのか。

それとも、

ヴィーナスの腹を開いているのか。

VeVか。

VVか。

私はもう寝ます。

朝になったら、この文章は消すかもしれない。

最後にひとつだけ。

ヴィーナス像には腕がない。

誰が切った?

いや。

これは関係ない。

忘れてください。

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