再会
ぼくは歩いた。
どっちに行けばいいのかなんて全然わからなかったけど、
何となく導かれるように歩いていった。
ニャータのお陰でぼくは何とか食料を捕獲しながら何日も何日も…
ぼくはまだひとりじゃない。もう一度ニャータに会ってお礼を言うんだ。
そして、これから一緒に野良猫として生きていくんだ。
その気持ちだけで前に進んでいた。
食料は何とか捕獲出来たけれど毎日満足のいく食事にありつけるわけじゃない。
しかも、行く当てもあるようなないような状態でひたすら歩いているのだから、
ただ地面を見つめて歩く日々になっていった。
ある日、疲れてフラフラになりながら何とか休めそうな公園の隅に着いた時だった。
前を見ると、そこはユウタと一緒に何度も来た公園だった。
地べたを這うように歩いていたから気付かなかったけど、ついにぼくは自分の街に辿り着いたのだ。
ここまで来ればニャータにも会えるかもしれない。
ぼくは力を振り絞ってニャータがよくいた場所へと向かった。
寝床にしていると言っていた場所に行ってみるがいる気配はない。
そんな簡単にはいかないか…、ため息をついてその場を離れようとした時だ。
背中の方から「コトラ?コトラなのか?」と聞き覚えのある声が聞こえた。
振り返ると驚いた顔をした友がいた。
「ニャータ!そう、ぼくコトラだよ。戻ってきたよ。」
話したいことは沢山あるのに言葉が出なくて、その場でぼくは泣き崩れた。
その後、それまでの緊張感から解放され、
かなり疲労していたぼくは安心感から泥のように眠った。
目を覚ますとニャータが心配そうにぼくを見て、食べるものを分けてくれた。
それから時間をかけて今までの経緯を話した。
言葉を詰まらせながら話すぼくにうなずいてずっと聞いてくれた。
聞き終わってもぼくが落ち着くまでただ寄り添ってくれた。
「そうか。まさか、そんなことになってるとは思わなかったよ。
何日か前に君の家に大勢の人がやってきたのは知ってたけど、
急な引っ越しとかなのかと思ってた。
確かに何となくお前がずっとあの家に居られないんじゃないかって
予感みたいなものはうっすらあったんだ。
だけどこんな結果になるなんてな…。
大変だったなとか簡単に言えるような状況じゃなかったよな。
まあ、でもお前が無事で良かった。
オレのお陰だな。感謝しろよ」。
しばらくして口を開けると、そう言って笑った。
ぼくはニャータの気遣いに鼻の奥がツンっとなったけど、
「なんとか必死にここまできたけど、野良猫としてはまだ全然だって分かったよ。
これからもよろしくな。ニャータ。」
となるべく軽口になるように言った。
それを感じ取ってかニャータも
「おう、一緒に悠々自適な野良猫生活を楽しもうぜ。」
とまるで大したことではないかのように言ったので
ふたりで笑いあった。
ガサガサ…
近くの茂みから物音がしてぼくはビクッとなって身構えた。
すると茂みの中から、まだ小さい猫がひょこっと顔を出した。
「ニャータさん、ただいま。」そう言ってテクテクこちらへ近づいてくる。
「おう、マメ。なんかいい獲物は取れたか?」
「いえ、まだ全然だめです…」とマメと呼ばれた子猫はしゅんっとした。
ぼくをよそに会話が進んでいきそうで、ぼくが戸惑っていると
「ああ、コトラ。こいつはマメ。ちょっと前に
捨てられて弱ってるところをオレが助けたんだ。」
と紹介してくれた。
「こいつはコトラ。オレの親友でこれから一緒に野良猫生活を送る仲間だ。」
とぼくのこともマメに紹介した。
「コトラさん、よろしくお願いします!マメです。」
マメは人懐っこい笑顔で笑った。
「ぼ…、僕はコトラ。野良猫経験は少ないから、
一緒に頑張ろうぜ。」
とりあえず自分のが年上だし、なんとか威厳を見せたくて
自分では飛び切りの大人口調で話した。
「コトラ。なんだよ、その口調。らしくないぞ。
普通のままでいいんじゃないか。」とニャータが笑った。
僕は気恥ずかしなって顔を舐めた。
こうして僕たちは三匹で暮らすことになった。




