アルバイトを完遂せよ-20
「こいつの口をふさぐのなら、すぐにでもやれるぜ」
物騒なセリフに、苦笑で答えるバルナス。
「無駄ですよ。慎重な彼のことです。この部屋から生きて出られなかった時の備えは、何重にもしていることでしょう」
肩をすくめ、こう続けた。
「特に素性を隠していたワケではありませんしね」
「認めるんだな?」
冒険者の店の親父の言葉にバルナスは小さくうなづいた。
「ええ。僕は魔術師です」
そこで眼を細めた。金色の瞳の眼光が強くなる。
「できれば、僕の素性は、表沙汰にはしないで欲しいのですが?」
「そんなことは、しない。こっちにとって不利益にしかならないからな」
冒険者の店の親父の言葉を受け、レイブンが剣の柄から手を離した。
「で」
バルナスが尋ねた。
「僕たちに何をさせるつもりですか?」
冒険者の店の親父はニヤリと笑って見せた。
「魔法被弾講習の、講師をお願いしたい」
「ほお」
魔術師のバルナスのみならず、パーティー全員が喰いついた。魔術師がいるパーティーにとって、魔法被弾講習の講師はおいしいバイトなのだ。危険度は低いワリに、報酬が高いのだから。
「相手の人数と職業は?」
レイブンが尋ねた。前衛職としては、これが分からないと陣形の組み立てようが無いのだ。普段は無口なレイブンだが、陣形の組み立てに関してだけは、主体的に会話をリードしていく。
「人数は3人。戦士1人、神官戦士1人、盗賊1人」
「レベルは?」
「そろそろ中級と呼んでも差し支えないぐらいの実力は持っている」
レイブンが眉を寄せた。
「戦士と神官戦士は、オレとガロンのおっさんが抑え、大きく回りこんでくるだろう盗賊は、ジュールが抑えるってか」
冒険者の店の親父が心配そうに聞いた。
「あんたらのパーティ構成ではちと厳しいか? 助っ人が必要なら、河の向こうから呼ぶこともできるが……」
「こっちの実入りが減るからな。助っ人は必要ない」
本来であれば、戦士としての腕前が高くないジュールの補佐に助っ人を頼むところなのだが、レイブンは助っ人を雇うことは考えていないらしい。
「それに、連携を取れてない味方なんて、居ない方がマシだからな」
「あんたがそれでいいなら、何も言わんが……」
「じゃあ、このハナシは、ここまでだ。ちょっと考えさせてくれ」
レイブンは眼を閉じ、攻防戦のシュミレートを行った。
「その人数相手だと、ちと厳しいな」
眼を開いたレイブンは、今回の講習で使用する武器についての条件を提示した。




