アルバイトを完遂せよ-12
「その人選の根拠は?」
「おっさんの鎧なら、この周囲のモンスターを相手にしても、ノーダメージでいけるハズ。バトルアックス振り回してれば、そこは一種の結界だし。それに……」
レイブンはニヤリと笑って続けた。
「おっさん、ロープで上まで登れないだろ? 身体が重すぎて……」
「違いない」
ガロンの答えに、笑いが弾けた。
「人選は分かりました。次は方法です。どうやって降りて、どうやって登ります?」
笑いがおさまり、バルナスが問いかけを再開した。
「降りるのはロープを使う。ロープ降下だ。レンジャー技能が無くても、可能だからな」
レイブンはスラスラと答えていく。
「登るのは縄梯子だ」
「ほお」
「レンジャー技能を持つオレだけなら、ロープで登攀できるが、鎧を脱がないと登れないからな。重すぎて。だが、この下に降りるのに、鎧脱ぐのはまずいだろう。だから、それはナシ」
レイブンは息継ぎをした。普段これだけ長く喋ったことがないので、少々苦しそうだ。
「縄梯子登るのなら、レンジャー技能は不要だし、鎧つけたオレでも平気だ」
「完璧な答えですね」
バルナスが微笑んだ。
「では、このプランの問題点を聞かせて下さい」
最終質問である。
「登るのに時間がかかるところだな」
レイブンは苦笑していた。この問題点があるからこその、多人数推奨依頼なのだ。
「時間がかかると、どうして問題に?」
「上下に分断される時間が長くなれば長くなるほど、拠点を突破される危険性が増すからだよ」
レイブンは肩をすくめた。人間味にあふれたこんな仕草も様になってきているのは、成長の証だろう。
「目の前に無防備な獲物が居るのが分かってたら、モンスターだって多少の犠牲は覚悟して特攻してくるぞ。それに対処するための、多人数推奨ってワケだ」
ぱちぱちぱち。3人の拍手を受け、レイブンは照れた。
「これぐらい、オレだって分かるようになったから……」
「レイブンの言った通りの方法が、ここで取れる一般的な正解でしょうね」
バルナスの金色の眼が、キラリと輝いた。
「賢者殿の考えを聞こうかの?」
ガロンが先を促す。
「魔法を使います。フォーリング・コントロールと、レビテーションです」
「どんな魔法じゃ? 魔法名だけだと、見当もつかんぞ」
ガロンの苦笑交じりのつっこみにも、バルナスは動じた様子はなかった。このやり取りも、既に日常茶飯事となっているのだ。
「フォーリング・コントロールは、落下速度の制御呪文です。落下速度を限りなく低く抑え、穴の底に安全に着陸します」
「ゆっくり降りられると、いうことじゃな?」