アルバイトを完遂せよ-13
ガロンの問いに、うなづくバルナス。
「レビテーションは浮遊の呪文です。上下方向にしか移動できないので、横移動はあらかじめ垂らしておいたロープを使います」
「浮かび上がる、ということかの?」
レイブンは、ガロンの問いかけで、なんとなく魔法のイメージがつかめたようだ。小さくうなづきながら、了承の意を示した。
「方法は分かった。降下はロープでもいいような気もするが、バルナスがそれでいいって言うのなら、呪文を使ってくれ」
「僕の疲労よりも、安全性をとります」
バルナスは微笑んだ。魔法を使えるのが楽しくて仕方がない様子だ。一行は立ち上がり、近くの木にロープを結びつけた。ロープを穴の底に垂らすと、彼らは穴のそばに近寄った。
「集まって下さい」
バルナスの近くに集まる。
「呪文の詠唱を開始します」
バルナスはニヤリと笑って、こう続けた。
「抵抗してもかまいませんが、自由落下になりますから、そのつもりで」
「んなこと、しねぇよ……」
苦笑を浮かべる3人。言葉にしたのはレイブンだけだったが、他の2人も同じ気持ちだった。
魔法をかけられそうになったとき、全力で抵抗すれば魔法の効果を打ち消すことができるのだ。当然のことながら、仲間がかけてくれる有効な呪文に抵抗することも、可能なのである。
「マナ・イーウンバルト・ムーレナス……」
バルナスの口から、朗々と呪文が溢れ出す。上位古代語だ。同時に複雑な身振りにより、空中に魔方陣を描き始めた。呪文をあえて共通語に直すとこういう意味の言葉になる。
『万物の根源たるマナよ。我が身は、我が意志のもとに落下せん……』
呪文はほぼ完成していた。あとは、バルナスが呪文名を唱えると、詠唱が完了する。
『フォーリング・コントロール』
4人の身体を淡い魔法の光が包み込んだ。成功だ。彼らはゆっくりと歩を進め、穴の淵を越えた。ふわふわと下降を開始する。
「落下速度は0ではありませんから、着地の瞬間に衝撃がきますよ」
バルナスの気の抜けた解説を耳にしながら、下降を続け、彼らは地面に降り立った。着地の瞬間に、ヒザを軽く曲げて衝撃を吸収する。
「さて、収集をしてしまいましょう」
「オレが後ろ、おっさんとジュールは前を守ってくれ」
レイブンが隊形の指示を出し、収集作業が開始された。薬草の専門家が居るので収集作業はあっというまに完了した。
「では、撤収といきましょう。集まって下さい」
バルナスの呼びかけに集まる3人。バルナスは呪文の詠唱を開始した。
『万物の根源たるマナよ。大地よりの見えざる手を断ち切り、我が身を空中に舞い上げん……』
バルナスは皆を見渡すと、呪文名を唱えた。
『レビテーション』




