1 文明の始まり
もう昔のことです。私が生まれた頃、国なんてモノは世界にありませんでした。人々はいつも笑っていたし、戦争なんてモノはなかったんです。
私たちはいつも大きな動物ーーー例えばなんでしょうか、鹿とか、熊とか、あと象とかもですね。彼らを狩ることで生きていました。
この生活は、とても満足のいくものでした。誰も、こんなに幸せな生活が終わってしまうなんて事は夢にも思っていませんでした。
しかし、それは来てしまったのです。
あれは霧の濃い冬のことでした。北からの侵略者はとても恐ろしいものでした。彼らは皆、馬に乗り、鋭利な鉄、”剣”、と呼ばれるものを使っていました。彼らがそれを振り回すと、切り刻まれた人々は、皆叫び声をあげたかと思うと、ほとんど時間を経ずに彼らは絶命し、地面に横たわっていました。その姿は無惨なものでした。私は未来永劫、この恐ろしい風景を忘れることはできないでしょう。私たちは、侵略者の前では、無力でした。
死神は去っていきました。が、恐ろしい風景はまだ続きました。生き残った人は五千に満たないようでした。それでも、私は、みんなが、お互いを助け合って、この破壊された村を
元に戻そうとするだろう、元のあの幸せな生活を取り戻すために、と、考えました。
そんな考えは甘いものでした。私の想像を遥かに超える、行動を人々は始めたのです。彼らは、自らのみが生き残るために、戦ったのです!他の村人たちを相手に。私は再び
あの侵略を憎みました。なぜかって、こんな戦いの種も蒔いたのは、彼らだからです。憎むのは必然であるはずです。ただ、一人の感情がどうこうできる問題ではありませんでした。
考えていただけでは何もできない。仕方なく、私も生き延びるために、戦いに参加しました。いや、参加せざるを得なかった、というべきでしょうか。昔は優しかった人々も、
今では殺人鬼のように狂った目つきで襲ってくるのです。まさしく恐怖でした。なので、私も、自分を守るために、参加せざるを得なかった、ということです。後から考えてみれば、
彼らではなく、私も、殺人鬼であったのでしょう。まあ、どうであれ、むごたらしいものでした。この内戦は、”最初の戦争”と言われていますね。
戦争が始まってから十日が経って、ついに勝者が決まりました。彼は”エンペラー”と呼ばれていました。最初の勝者と、私を含め、生き残った人々全てが悟りました。戦争を続けることは無意味である。そして、真の死神は、心の中に潜んでいるのだ、と。私たちはそれをなくすために、そして、悲惨な風景が再び再生されることのないよう、世界で一番平和な村を作ろう、と決心しました。家を造り、畑をつくり、稲や砂糖、お茶など、いろいろなものを作りました。村は元に戻り、またあのすばらしい生活ができる、と考えていました。
しかし、夢はすぐに、崩れ去っていくのでした。