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かに座とおとめ座

「ヴァルゴだったんですねー、まま、お茶でもどうぞ」


結局、学校の敷地の外に出ることはできなくて、保健室に戻ってきてしまった。

そして重要なのは、


「ほかの生徒を殺せば出られる」

「あーはい、まぁ、大体そんなとこっす。予鈴が鳴ったら開始なので、それまで本拠地……って言っても、トイレにいるのはつらいですよね、ここにいていいですよ」

「……」

「えーと、誰か死ねば、一度終鈴が鳴りますね、何人か一度に死んだ場合も一回なんで、最大12回」

「……12?11回じゃないのか?」

「四天王なのに5人いる、お決まりなんすよ」

「……そうか」


ゲームみたい、と言いかけてやめた。

ゲーム、なのかもしれない。

漫画とかでもよくある、大きな会社に拉致されて俺たちは賭けの対象になっているわけだ。


――チャイムが鳴る。


「あ、予鈴が鳴りましたねー、ここにいてもいいですケド、それじゃぁ願いはかなわないでしょ、つまり、学校から脱出できないっていう」

「大丈夫、殺してくるから」

「はーい、いってらっしゃーい」


保健室の外にはバラバラになった校舎の残骸があった。


「やぁやぁ、これなるは、蟹座が一人、大鳳翔。いざ尋常に勝負、と言いたいところだったんだけど、もう終わっちゃったんだよな」

「終鈴はなってない、お前は倒したつもりでも終ってないんだろ」

「……」

「……」

「あれれ?いま君俺に真っ二つにされたはずじゃないの?」

「されてないな」


大きな枝切ばさみを持った小柄な少年は、保健室から俺が出てくるのを待ち構えていたらしく、残念そうに立ち去ろうとしたのもつかの間。

生存している声を聴くなり、再び迫ってくる。


「なんだ、ただ切るだけか」

「切る、だけ、だぁ!?」


チョキンハサミの閉じる音がする旅に学校は初めからそこに切れ込みがあったかのように真っ二つに切り開かれていく。


「馬鹿の一つ覚えだな」

「……さっきから攻撃してこない、おまえ、よけてるだけだな、攻撃手段を持たない星座、か。殴り続ける!」


確かに、攻撃手段がない、そもそもこんなに戦力差があると思っていなかった。

こんな常識はずれなレベルの戦いだったとは、手ごろな瓦礫を投げてみる。

大鳳のところに届く前に、瓦礫は地面へと落ちてしまう。


「……」

「……」

「よっわ」

「なかなか、やるな」

「なかなかやるな、じゃねー。おまえどうやって俺に勝つつもりなんだ?」


今更だけれども、自分の力、加護と呼ばれたもののコントロールはどうすればいいのか。

俺の身体は傷ついていない、おとめ座の加護は怪我や事故を自分以外に受けてもらう、ということらしい。


「お前は、どこも痛くないのか?」

「は?」


お互いにどこも傷ついている様子はない、しいて言うならば、鋏を使うたびに少し疲労がたまっているということか。

何か重要なことを見逃している気がする。


「……やめだ」

「は?」

「俺は勝負から降りる、切っても切っても手ごたえがねぇ」

「おい、お前の夢っていうのはそんなに簡単に諦められるものなのかよ」

「ちが……え?」

「……?」


このままどっちつかずになるのが嫌だ、そう思って相手を引き留めようと伸ばした手が触れた瞬間、振り返ったのは頭だけだった。

マネキンの首を180度ひねったように頭だけがこっちを向いて、ごとりと落ちた。

それを皮切りに、大鳳の身体はサイコロステーキの様にバラバラに崩れ落ちた。



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