表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

蟹座の君ep1

転生もの、流血表現あり。若干の同性愛要素を含みます。

 また、勝てないゲームが始まる。

 

Act1 蟹座の君


 もはや腹に痛みはない。

 俺に残るのはゲーム序盤で敗北したことに対しての悔恨だけ、言い訳するなら今回はカードの引きが悪かった。つぎ、また頑張ればいい。

 俺の上半身と下半身は切り離され、木製の廊下は俺自身の血液と内臓と消化物まみれになっっている。こんな死に方は何度目か、いまさら思い出せないしゲームを続けて行くうえでは死んだ原因を探ることは大事かもしれないが、繰り返しのなかで摩耗していく記憶はあまり頼りにならない。

 わかっていることは、俺は、すべてを切り裂く蟹座の鋏に体を切られて死んだということ。

 「おはよう、新しい射手座くん。負けたからって、そんなに不機嫌そうな顔するなよ。」

 「っ……射手座ならまだまし、か。エニグマ、お前はいつも顔が近い。」

 目覚めはいつもとかわらない、うんざりするくらい無機質な香りにうっすら混じるムスクに同じくらい甘い声、学校の保健室、インテリめいていて病的に痩身な男。自分が死んだことを意識するのに十分すぎる状況。エニグマが俺を《射手座》と呼んだということは、今回のゲームで俺の星座は射手座に決まったらしい。

 脱色したエニグマの毛髪が頬にあたる。

 「今回はね、帰ってきたのは1人だけだったよ、残念名がら残りの10人はリタイアしてしまったようだ。うん、非常に残念だね。」

 「……なっ!」

 「あはは、うっそーん。帰ってきたのは7人、5人がリタイアだよ。忘れちゃった?君が参加する限り彼はリタイアできないし、彼が参加する限り君はリタイヤできないって。ちゃんと思い出せるでしょ?」

 リタイヤという言葉に一喜一憂する俺を見て楽しんでいると思うと今すぐにでもこいつをリタイヤさせてやりたい衝動に駆られる。どこまで嘘なのか、何がほんとなのか。徹夜明けの朝のように頭がぼんやりとして何もかもはっきりとは思い出せない。そういわれればそんな気がする、機械的に言われた言葉が頭に入って形になる。ゲームを続けることもリタイヤすることも、そんなに変わらないのかもしれない。記憶を得て自力で活動するか、何もかも決められた通りに動くか。 

 「ま、ま、5人リタイヤしたところで君には関係ないわけだし、とりあえず起きなよ射手座くん。チュートリアル、早く終わらせたいでしょ?」

 「起きるし、着替えるから話進めてくんない。つか、チュートリアルってなに?」

 「……。」

 「……。」

 保健室のベッドから起き、着替え終わるまでの束の間の沈黙。悩ましげな表情をしながらも俺から目を離さないこの男は、俺の着換えを眺めているというわけではないだろう。軽薄なこの男が黙り込んでしまうほど、そんなに俺は何もかも忘れてしまっているのだろうか。なんにせよ、急に黙るなんて忌々しいことこの上ない。

 「……おい、着替え終わった。」

 「……えっと、目の保養になったよ、ごちそうさまでした……。」

 「……。」

 「つれないなぁ、射手座くんももう少し位、協調性を持ちましょうね。」

 まるで何か楽しい返事を期待していたのに、期待外れと言わんばかりの不満そうな視線と自分自身の冷めた視線がぶつかり合う。

 思わず、ため息が出る。

 「早く終わらせたいから、続けて。」

 「じゃ、改めてチュートリアル始めるね、聞かれれば何回でも話すけど、何回も聞かなくていいようにちゃんと覚えてね」

 待ちきれずに、自分から口を開く。エニグマから業務的にゲームのルールが説明される。簡単に言えば、優勝すれば願いを一つ叶えてもらえるというありがちなルールで、もちろん裏はある。自分以外の参加者を殺して最後の一人になれば優勝、どこかでこの殺戮ゲームをみて笑ってるくそみたいな奴がいるんだと思う。殺されたときにコンティニューすれば次のゲームに参加者として復帰できる、リタイヤすれば次のゲームにモブキャラとして参加することができる。ただし、この少し不思議なゲームの中から抜け出すには優勝する必要がある。いってしまえば、終わりのないトンネルを歩き続けるような話で、うまみと言ったらほんとかウソかわからない優勝賞品だけ。つまるはなし、こんなバカみたいな話にでも乗らなければやってけない、そんなクソみたいな奴らの集まりなわけで、当然俺もその糞の一人でしかない。

 「……ここまで、チューをトリアル。とりあえず、最初の一週間は期間外だから、経験値積むのに戦っとけばいいんじゃないかな?あ、それと今回は夏休みスタートだから入学式はないよ。」

 「ん、わかった。あとは適当にやるわ……まずは、リターンマッチだろJK。」

 廊下は蒸し暑い。

 チャイムのならない昼真っ盛り。虫の声一つない静かな校舎は学校という用意された舞台として切り取られていることを感じさせる。

 全員を自分一人でトス必要はない。最後に勝てばいいわけだけれど、前回俺の腹を裂いた奴については俺が殺す。

 「……ぶっころ。」

 長い夏が始まる。

執筆途中ですが、誤字落字などでもコメントいただけると糧になります。

お読みくださりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ