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ナイトツアー

「道に迷ってしまった……。」

私は今、真夜中のとある山中に独り佇んでいる。土地勘は無い。食べ物はおろか水も無い。あるのは一本の懐中電灯だけ。

私は何故そうなってしまったのか?事の発端は、とある高名なお寺が企画した

「総本山ナイトツアー」

に参加した事にある。

檀家減少に伴う収入不足を補うため、日頃見る事が出来ない夜の総本山を巡れるとの触れ込みに応募。

漆黒の闇にライトアップされた建造物や仏様の数々に魅了されると同時に、このツアーの目玉となっていたのが

「修行僧の生態」

しかし今は深夜0時。聞こえるのは寝息のみ。

「叩き起こしても問題ありませんよ。」

とコンダクターに唆されるも……。

「起きる時間は確か……。」

「えぇ。朝の3時半。これはいつもと変わりません。」

の言葉に躊躇する一行。ふと目をやると明かりが灯っている部屋が?

「あそこでしたら……。」

と言い掛けた所

「あの部屋では今、師が新人の修行僧に様々な事を教えている所でありますので。」

と制止。

「是非その様子を!」

の声に

「見学コース外となっていますので立ち入る事は許されません!」

と強い口調。後ろ髪を引かれながら建屋を後にしたのでありました。


その後一行は寺を出。とある場所へ移動。そこでコンダクターは

「最後に肝試しをしていただきます。」

と案内には書かれていない企画が。家族連れや友達同士等それぞれ仲間を組んで出発していく中、単独で応募した私に対しては

「御一人様で。」

との返答。先に出た一行が見えなくなった所で出発。暫くして……。

「ここは何処なんだ?」

(迷ってしまったらしい。)

深い山奥であるため地図アプリはおろか携帯電話も通じない。とりあえず元来た道を戻る私。こんな事になっても良い様ポイントポイントに小枝を置いておいたのが功を奏し、スタート地点に無事到着。したのは良かったのでありましたが……。

(コンダクターが居ない。)

更に悪い事に

(ここですら電波が通じない。)

ただここまでは寺から歩いて来た道である事は確か。今は体力を温存し、朝を待とう。そうすれば今は寝静まっている修行僧が動き出す。と覚悟を決め、

(あそこに洞穴がある。)

私はそこで一休みする事に。中に入り、壁にもたれかかった所

(なにやらあったかい……。)

しかも

(やわらかい……。)

この空間に身をうずめる事にした私。少し経って……急に何かが動き出した事に気付いた私。

(地震か!?)

と身体を起こした私の目に飛び込んで来たもの。それは……。

私の身の丈は優にあるであろうツキノワグマの姿であった。

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