いただきます
すみません。
気が付けば間が開いてしまいました。
「さ、お昼にしよっか」
「……」
私たちは徒歩で旅の途中。前回のように一気に駆け抜けるなんて、味のないことはしない。
なんてったって、今は仲間がいるんだから!!
せっかくの冒険を一瞬で終わらせてしまうなんて、つまらない!
そして今は森の中。これからランチタイムにしようってとこなんだけど、何故かアルが微妙な顔をしている。
どうしたんだろう?
さっきの何か気になることあったかな?
うーん、と私は先ほどの出来事を思い返すことにした。
ギシャーーーーー!!
森の中で大蛇の魔獣に遭遇した私たち。全長は五メートル以上、胴体は私の腕だけじゃ回りきらないほど太いその魔獣は完全に私たちを獲物としてロックオンした様子で、こちらに向かってくる。
アルが大剣を抜き出し戦闘態勢に入ったのを見て、私も……と思ったところで思い出す。
そういえば、もうすぐお昼だと。
アルに私が相手をすることを伝え、後ろに下がってもらう。特に異論を唱えることはなかったが、心配そうな気配が窺える。私は安心させるように後ろに向かって手を振ると、すぐに魔獣が襲いかかってきた。魔獣は、何も手にしていない一見弱そうな獲物にいけると思ったのか真っ正面から口を大きく開け鋭い牙を見せながら突っ込んでくる。
「よっと」
それを軽く地面を蹴って避け、短剣を手にする。そのまま魔獣の頭と胴体の間位(蛇の胴体ってどこからだろう)を目掛け短剣を振る。一陣の鋭い風が起こり、綺麗に魔獣の頭と胴体を切断する。私はその流れで胴体の一部を更に切り落とし、その部分から魔法でサッと血を抜き取る。
今日のお昼ゲット!!
私は嬉しくなって左手に肉の塊を持って、笑顔でアルを振り返って、さっきの台詞。
「さ、お昼にしよっか」
って、ことなんだけど。どこか可笑しいところあったかな?
力について……は今更だし。魔獣に驚いた……ってことはないだろうし。
魔獣の肉……それだって冒険者とか旅をしていれば食べるって聞いたし。者によっては市場にだって売り物としてある。
私の不思議そうな様子にアルも気づいたのか、表情を少し和らげる。
「……見た目か弱い女の子が魔獣を瞬殺したり、手に肉の塊を持っている図がなんともいえなくて、な」
あー、確かに。瞬殺って部分は別になんとも思わないけど、女の子が笑顔(だってお昼ご飯)で魔獣の、しかも自分の顔よりも大きい肉の塊持ってる図って……うん、あまり考えないでおこう。
「俺は木の枝でも探してくればいいか?」
アルも深く考えるのは止めたようで、私に近づきながら聞いてくる。
どうやら昼食を作るのに、火を起こそうとしているようだけど。
「あ、大丈夫。ちょっとこれ持ってて」
「?」
私がアルに持っていた肉を渡す。アルは不思議そうにしながらも肉を受け取ってくれる。
私は魔獣の亡骸、正確に言えばその下の地面に手をかざす。一瞬地面が光り地面に巨大な穴が出来、魔獣の亡骸はその穴に落ちていく。そしてかざしていた手を短く振ると穴が消える。
これで良し。血の臭いとかで他の魔獣とかに来られた面倒だしね。
次は……あ、ちょうど良い物が!
私は近くの大木の根本まで行き、縦に出来た割れ目に手をかざすと割れ目が一瞬光る。光が消えると割れ目部分がカーテンのように広がり、そこから木の中、正確には木の中に作った異次元空間が見える。
木々で覆われたそこには、テーブルと椅子が二つ、その置くには見事なキッチンが置かれている。私はすぐに中に入り、キッチンへ直行する。
水場よし!コンロよし!調理器具よし!
これで準備は出来た。
私はアルを呼ぼうと顔を上げる。
「アル、入ってき……どしたの?」
「……もういい」
何故か諦めモードのようなアルを不思議に思ったが、すぐに木の割れ目から入ってきたので、これ以上考えるのは止めた。アルが入ると割れ目が自然と閉ざされる。これで外から見らえることはない。
実は料理って好きなんだよねー。
前世では、あまり外に出ることは出来なかったから、基本室内で出来る楽しい、しかも大切な人たちに喜んで貰えるっていうことで、料理やお菓子作りはよくしていたことの一つ。家族とか親しい友人位しか食べてもらうことはなかったけど、なかなかの腕だと思っている。家庭料理とか簡単な物だけど。
魔法とかで簡単に出してしまうこともできるけど、料理は私の趣味だからね。それに狩りをして食べるって冒険者っぽい!
あ、今は本当に冒険者なんだけど。
私は米を研ぎ、鍋に入れる。ご飯を炊いている間に今度は味噌汁。
やっぱり、ご飯といえば味噌汁だよね。
二種類の野菜を使った味噌汁を作り、今度は肉の調理。
唐揚げが食べたいから、今回は唐揚げ。
一口大に切った肉を調味料につけ込み、油で揚げていく。サイドメニューはあっさりと生野菜を使ったサラダ。
野菜や調味料はどうしたのかって?アルの武器を買う時に食料も買っておきました!
だから、野菜も新鮮な物ばかり。いやーそれなりな値段だったけど、買って良かった。
雪山の多いこの大陸では野菜作りも大変なようで、結構良い値段だった。物によってはちょっとした剣一本と同じくらいする物も。
調味料も香辛料はあるだろうなと思っていたが、醤油や味噌に似た物があったのは嬉しい驚きだった。あと、米ね。これは本当にびっくりしたなぁ。
ちなみに米が一番高かった。
まぁ、この世界創ったのが私だからね。野菜事情も前世を参考に作ってるから、似たような物があるのは当然といえば、当然なんだろうけど。
そのおかげでご飯は食べられるし、唐揚げも作れるわけだしね。
「さぁ、出来た!」
私は出来上がった料理を皿に盛りつけ、アルは盛りつけられた皿を順番にテーブルに運んでいく。全て運び終えたところで、私もアルも椅子に座る。
「じゃあ、いただきます」
「?なんだ、それ」
私が両手を合わせ、食前の挨拶をしたのを見てアルは不思議そうに聞いてくる。
そっか、分からないよね。
私は説明する為、食べようとしていた手を止める。
「これは私が神になる前の時の風習っていうのかな?食前の挨拶で、食べ終わった時は同じように、ごちそうさまって言うの。意味は、いただきますが食べ物への感謝で、確かあなたの命を頂いて私の命に代えさせて頂きますとかだったかな。ごちそうさまは、ここまで食事を準備してくれた人に対する感謝の気持ちとかだったと思う」
「食べ物に感謝するのか?」
「食べ物だって元は生きている生き物でしょ。その命を貰って人は生きている。何かを貰った時、お礼を言うのと一緒。詳しいことは私もわかんないけど、少なくても私はそう思ってる。あ、だからってアルに強要するつもりはないから」
いただきますって前世でも、場所によっては違う言葉だったり何もしないところもあったから、絶対にやらなくちゃいけないってことはない。私の場合はもう習慣的なものになってるから、やらないと落ち着かないし。
私の言葉を聞いてアルは、さっきの私のように両手を合わせた。
「別にいいのに」
「俺が良いと思ったからな。強要しないんだろ。だったら俺がやることも止めないよな」
「そうだね……いただきます」
「いただきます」
私の後にアルも続いて言う。そしてようやく食事が始まった。
アルは初めて目にする料理に戸惑いながらも、私が食べているのを見て自分も口にした。唐揚げを一口食べると、旨いと言うと次にご飯や味噌汁も口にしていく。どれも口に合ったようで良かった。
ご飯は米の存在は知っていたが食べたことはなかったとのこと。味噌汁も似たようなものは口にしたことはあったが、味が濃くあまり好きではなかったとか。
炊いたご飯も含め完食すると、ごちそうさまと二人一緒に挨拶をする。
この感じ、久しぶりだな。
人間であった頃を思い出して、少し胸が苦しくなる。誰かと一緒に食事をすることも、久しぶりだという事に今更気づく。
やっぱり、仲間はいた方が良い。改めてそう思った。
料理の描写については、世界の食料事情分かりやすくなるかなと思い書いてみました。
今後はここまで詳しくは書かない……と思います。




