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エクストラ・リンク  作者: チャリアン
二章 六月~それは結託の季節~
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十六話 蒼の剣士、紅の闘士

ガラン。


ファイターがグレイブを投げ捨てる。


これは――ヤバい。理屈ではなく本能が全力で警鐘を鳴らす。


ファイターが武器を捨てた理由は分からない。傍から見ればリーチ・火力ともに低下して、ファイター側に利は無いように見える。


それでも、だからこそ。何か底のしれない威圧感が、ファイターから迸っているように感じた。


 もう一段階、速さの上があるのだろうか。もしそうなのだとしたら、俺とイーグルはそれについて行けるのだろうか。


 素早く検算して、出した答えはNOだった。虎の子のホバー・エアリアルを以てしても防戦一方な現状を鑑みれば当然だろう。


 ファイターの双眼カメラ(デュアルアイ)越しに、センカの視線がイーグルを捉える。その逃れようがない圧力が、否応なく絶望の念を与えてくる。


 勝てない。そう悟る。無理だ。そう思う。


 それと同時に、だけどと願う。


 このイーグルなら、奇跡だって起こしてくれる。


 いや、違う。待っているだけじゃ奇跡なんて起きない。起こすんだ。


 大丈夫、出来るさ。この機体は英雄の機体。レジデントを救った、それだけの力を秘めている。


 そう考えると、自然と力が湧いてきた。立ち向かうための活力が身体に満ちる。


 大きく深呼吸をする。肺いっぱいに空気を取り込んで、思いっきり吐き出す。


 見据える先には、センカの駆るファイターの姿。


「行けッ!」


 自らを叱咤するような気合と共に、俺は死地に突っ込んで行った。


 ♢


 ガリリッ!


 ファイターの繰り出した正拳突きが頭部を掠める。


 チリリッ!


 イーグルの薙いだ模造刀が、ファイターの胸部装甲を削る。


 蒼と紅が交錯する。


 ビーッ! 危険感応システムからの警告。背面右後頭部に上段蹴りが襲う。


 反射的に模造刀を盾にし、受け流そうと試みる。


 激しい擦過音と火花を撒き散らしながら、剣の腹をファイターの右足が駆け抜けた。


 心地よい気分だった。俺は今、イーグルと一体になっている。それは別にリンクシステムがもたらす、肉体と機械の連動から来るものではない。


 各関節の限界駆動域、装甲の損耗度、フレームの被害(ダメージ)……。イーグルにまつわる情報(データ)が俺の中に流れ込んでくる。いちいち各種パラメーターを見なくても、まるで自分の事のように理解できる。


 そんな状態だからこそ分かった。だからこそ気付けた。


――ファイターの左足の様子がおかしい――


 その事に。


 先程から足技のほとんどは右足で行って、左足は常に軸としている。それも怪我でもしているかのように不自然と。


 そしてこちらの右腕も同様だ。ファイターの攻め手を一身に受け続けて、フレームにも電動機(モーター)にもガタがきている。


 お互い、もう長くは耐えられない。


 それはセンカも承知しているのだろう。一撃一撃に強引さが現れ始める。


 拳がうねり、流れを生み出し、剣がそれを切り裂いていく。


 楽しい。戦いの渦中にいるにもかかわらずそう感じる。いや、それ故に、か。


 激しく立ち位置を入れ替えながら、相手を屈服させんと刻む武闘円舞(バトルワルツ)。


 この白熱した感覚がいつまでも続けばいいのに。叶わないと分かっているのに、そう願ってしまう。


 ガリァッ。モーターが嫌な音を立て、右腕の動きが停止する。


 ここぞとばかりに正拳突きを打ち込んでくるファイター。


 ガクンッ。左足の膝関節が力を失くしたように折れる。


 体勢が崩れたことで正拳突きの矛先が狂い、イーグルの右腕を打ち砕く。


 イーグルは正拳突きの衝撃で、ファイターはバランスを失って。


 二機はその場に崩れ落ちた。


 そして、再び動き出すことはなかった。


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