作業
太郎はゴブリンやウルフといったモンスター達を次々に倒していく。遠くから剣を振るだけで敵が死ぬので、戦いになっていない。
倒されたモンスターは血肉になることもなく、絶命した瞬間に消えてなくなる。そして、数回に一回はドロップアイテムを残すのだ。
残るアイテムは『魔石』という使い道の分からない石に始まり、『ポーション』、つまり水薬、『メディカルパウダー』、『ゲル』、宝石類だ。
これらの売却利益が冒険者の収入になる。
まるでゲームのような話ではあるが、ここではそれが日常風景であり、ただの常識だ。
太郎はそれを疑問に思うこともなく、ドロップアイテムを回収して先へと進む。
洞窟のようなダンジョン序盤を終えると、次は石でできた通路になる。
ここからは中盤扱いで、出てくるモンスターが一気に変わる。主にスケルトン系のモンスターだ。それと、稀にゾンビが混じる。
スケルトンは、人間タイプだけではない。ウルフのスケルトンもいるため、非常に戦いにくい。
骨だけでどうやって動いているのか。その原理もわからず、倒すには骨を半分ぐらい破壊する必要がある。
そして序盤で通用した戦術、催涙スプレーと槍のコンボは通用しない。
スケルトンの骨を破壊するには鈍器が有効であり、槍はダメージを稼ぎにくいのだ。
そして目や鼻がないので、催涙スプレーも効果がない。
ゾンビは槍を突き刺せば抜けなくなることがあるし、催涙スプレーが効かないことはスケルトンと同じ。そしてスケルトン以上に強く、そして臭い。
安定した戦闘をするには相応の技量と忍耐力を要求されるため、中盤は一般の冒険者には人気の無いエリアになる。
太郎は武器を剣からナックルガード、見た目だけは殴打用の物に切り替えた。
その後、やることは序盤と同じだ。
敵を探し、遠くからまとめて殴り飛ばす。
それだけで敵はアイテムにされてしまう。
中にはアーチャータイプ、遠距離攻撃をしてくるスケルトンもいたが、矢を弓に番えるよりも早く殴ればそれで終わり。矢が飛んでこようが、与えられた防具がそれを自動で防ぐ。
戦いとは言えない、ただの蹂躙。それの繰り返し。
序盤の冒険者たちは、ミスをすれば命の危険あるけれど、太郎にはそれすらない。ミスをしようが安全なのだ。
これの一体、何が冒険なのか?
太郎は強い疑問を覚えてしまう。
太郎は作業でしかない行為に感覚がマヒしてしまうことを懸念しつつ、多くのアイテムを回収していく。
そしてバックパックが満杯になった時点で帰途に着くのだった。




